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第1章

第20話

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ノアが目を瞑ったのを確認するとカールは両手を大きく広げてドラゴンの姿に変身した。俺たち獣人はそれぞれ産まれてきたときの動物の姿に変身することができる。特に俺は野獣と闘う場合には獣の方が力も出るし動きやすかったりもする。ただ狼の姿をノアに見せるのはまだ無理かな?
あとはまだ小さな子どもは怖かったり、驚いたりすると本来の動物の姿に戻ってしまう場合もあるが…この間のムーンがそうだったな。

「ノア目を開けていいよ」
すると手を離して目を開けた。
「うわぁ~」

「ノア、俺の背中に乗ってごらん」
優しい口調でカールが話しかけたがノアは首を横に振った。抱きしめている身体が少し震えてるのがわかった。

「ノア怖いの?怖そうな顔してるけど、さっき会ったカールだよ。俺が抱っこしてるから心配しなくてもいいから。お空からの景色はきっと眺めがいいぞ」
するとノアはカールをチラッと横目で見ながら
「カイくん、僕少し怖い」
と言い出した。俺はノアを抱っこする腕に力を込めて大丈夫。大丈夫と暗示をかけるように伝えた。

「カイくん、僕落ちない?」

「絶対に落とさないから大丈夫」
きっと人間界から来るときに落ちたことを記憶はなくても聞いてしまったから怖くなったんだろう。
でもカールはバルトよりも上手く風に乗ることができるし、無茶苦茶な飛行は絶対にしない。それに姉上より力も強い俺はどんなことがあってもノアを離すことはない。少し震える身体を尻尾で撫でてやる。首に尻尾が当たってしまったんだろう。くすくすと笑い出した。

「カイくん尻尾くすぐったいよ」

「ノアはここがくすぐったいのか?」
尻尾で首を撫でると声をあげて笑い出した。
「イタズラする尻尾ですね」
そう言いながらノアは俺の尻尾を両手で掴んで尻尾の動きを止めた。両手で握りしめられてしまって理性が飛びそうなのをグッと堪えて

「じゃあそろそろお空に散歩に出かけよう」
と歩きだした。ずっと俺たちのことを見ていたカールは尻尾を掴まれているのを心配そうに見ていたので頷いて口パクで大丈夫と答えた。

「ノアのことは俺の手と尻尾で抱っこするからノアは俺のここを握ってて」そう言って尻尾から手を離して代わりに俺の服を握らせた。

カールの背中に乗ると、ゆっくりと上昇していく、最初は俺の服を両手で握りしめ胸に顔を埋め少し震えていたが、どんどん昇っていくと景色が小さくなってきた。

「ノア、ちょっと顔を上げてごらん。綺麗な景色が見えるよ。怖かったら降りるからね」
そう耳元で言ってやると顔を上げて下を見た。

「すご~い。すご~い。お家がみんな小さいよ」
目をキラキラさせて見ていた。

「ノア、怖くないかい?」カールが言うと

「カイくんが僕を守ってくれてるから大丈夫。でも、もっと高い所は怖いかも」
と言ってくれた。

「わかったよ。もう少しぐるっと回ったら帰ろうね」
それからノアが行く学校を見たりして空の散歩を楽しんだ。

「カイくん、カールさんって凄いね。お空からだと色んなお家やお店もあるね」

「そうだな。今度は色んなお店を見に街に行こうな」 
ノアは俺の腕でウトウトとしてきた。久しぶりの外で少し疲れたのかもしれない。ノア寝てもいいよと言ってやると、そのまま小さな寝息を立てて寝てしまった。


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