129 / 138
闘えわたし! 平和のために!
信じがたい黒幕
しおりを挟む
わたしは、息を整えながら立ちどまる。
あとを追ってたどり着いたところは、迷路やレストランから少し離れた広い公園だった。
一面芝生となった場所には背の低い樹が植えられており、あいだを平らな敷石が敷き詰められた道が縦横に走っている。
公園の中心には、ギリシャ神話にでてくるような女神さまの姿が浮き彫りにされた巨大な石のレリーフがあり、その前で立ちどまった犯人は、ゆっくりと振り返った。
その顔を確認して、わたしは息をのむ。
そして、やっぱりと感じた。
体育の時間に、近くのマンションの屋上に見た人影、間違いない。
透き通った瞳と滑らかな頬をみせて目の前に立つ人物は、いつも朝の電車で同じ車両に乗り合わせる、あの彼だった。
「――なん……で」
「まさかと思っていたけれど、本当にきみだったんだ。ぼくのほうこそ、きみだと知ったときには驚いたよ。あのとき、組織の人間を見たときに気がついたんだ」
あのとき? 組織の人間?
――それって、透流さんと朝の電車に乗ったときのことだろうか。
今日のお昼に電車の中で会ったときと同じ、耳に心地良い素敵な声のままで、彼は言葉を続ける。
「ぼくのほうにも、ぼくが通う高校から、きみと同じように組織のメンバーにならないかという勧誘があった。そのときに試験のことも聞いた。でも、ぼくは断ったんだ」
「それって……! あなたも特別な力を持っているってこと? それに、どうして……?」
驚いたわたしに向かって、彼は、公園を通り抜けるふわりとした風に髪を揺らせながら口にした。
「だってぼくは、組織なんて堅苦しいものに縛られたくなかったからさ。だから断った。きみもメンバーになるかどうかの選択の自由があるっていわれたんじゃない? ぼくの特別な力は、ぼくのために、ぼくが好きなように、ぼくが面白いと思ったことに使うんだ。それって、なにもおかしいことはないだろう?」
そして、彼はわたしへ口角をあげてみせた。
黒髪の真面目そうなイメージを持つ彼が、とたんに小悪魔的な印象へと変化した。
あとを追ってたどり着いたところは、迷路やレストランから少し離れた広い公園だった。
一面芝生となった場所には背の低い樹が植えられており、あいだを平らな敷石が敷き詰められた道が縦横に走っている。
公園の中心には、ギリシャ神話にでてくるような女神さまの姿が浮き彫りにされた巨大な石のレリーフがあり、その前で立ちどまった犯人は、ゆっくりと振り返った。
その顔を確認して、わたしは息をのむ。
そして、やっぱりと感じた。
体育の時間に、近くのマンションの屋上に見た人影、間違いない。
透き通った瞳と滑らかな頬をみせて目の前に立つ人物は、いつも朝の電車で同じ車両に乗り合わせる、あの彼だった。
「――なん……で」
「まさかと思っていたけれど、本当にきみだったんだ。ぼくのほうこそ、きみだと知ったときには驚いたよ。あのとき、組織の人間を見たときに気がついたんだ」
あのとき? 組織の人間?
――それって、透流さんと朝の電車に乗ったときのことだろうか。
今日のお昼に電車の中で会ったときと同じ、耳に心地良い素敵な声のままで、彼は言葉を続ける。
「ぼくのほうにも、ぼくが通う高校から、きみと同じように組織のメンバーにならないかという勧誘があった。そのときに試験のことも聞いた。でも、ぼくは断ったんだ」
「それって……! あなたも特別な力を持っているってこと? それに、どうして……?」
驚いたわたしに向かって、彼は、公園を通り抜けるふわりとした風に髪を揺らせながら口にした。
「だってぼくは、組織なんて堅苦しいものに縛られたくなかったからさ。だから断った。きみもメンバーになるかどうかの選択の自由があるっていわれたんじゃない? ぼくの特別な力は、ぼくのために、ぼくが好きなように、ぼくが面白いと思ったことに使うんだ。それって、なにもおかしいことはないだろう?」
そして、彼はわたしへ口角をあげてみせた。
黒髪の真面目そうなイメージを持つ彼が、とたんに小悪魔的な印象へと変化した。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる