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いきなり試験に突入です?!
わたしは意思が、弱い
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じりじりと時間だけが過ぎていく。
先生は、チクチクとした言葉を投げかけてきて、ジリジリとわたしの精神を削いでいく。
どのくらい経ったのか、もうわたしの感覚が麻痺してわからなくなったとき、急に宮城先生は、いままでにきいたことのないような優しい声をだした。
「あなたが嫌いで、こうやっていじめているんじゃないの。メンバーに選ばれることがどういうことかって、教えてあげているのよ」
その声に、まったく動けなかったわたしは、ぎこちなく顔をあげて先生を見上げた。
「木下さん。もし、あなたがメンバー試験を辞退するなら、いますぐ解放してあげるわよ」
急に腰を落とし、わたしの視線の高さまで自ら目を合わせてくると、先生はわたしの耳もとでささやく。
「恥ずかしくない点数だったけれど一歩及ばずって内容で、上には報告してあげるわ」
無意識に、わたしは先生の目を見つめていた。
宮城先生のその瞳には、先ほどまでの馬鹿にしきった光が消えている。
「辞退の仕方は簡単よ。プリントに書いたあなたの名前の下に、辞退しますってひとことを書くだけ。急に漢字が思いだせないのなら、ひらがなでもいいわ。ほら、簡単でしょう?」
心の底から、わたしのためを思って言っているような口調で続ける。
「楽になるわよ。辞退しますって書いちゃいなさい。本当はメンバーになりたくないって聞いているわよ。ここでリタイアしても誰も怒らない。逆に引き延ばされるほうが、周りに迷惑をかけるわ。それに、もしメンバーになったら、何度でもこんな目に遭うわよ? あなたも、わざわざ辛い目に遭うこともないでしょう?」
そうだ。
もともとメンバーになりたいわけじゃない。
わたしがここで辞退すれば、すぐに代わりの候補生の試験が、別のところではじまるだけだ。
だらだらと引き延ばしているほうが、皆に迷惑をかけているんだ。
わたしは、目の前の答案用紙へ視線を戻し、名前の下の余白を見つめた。
――でも。
本当にそれでいいのだろうか。
立会人だからかもしれないけれど、わたしの試験に対して、いまの凪先輩は親身になってくれている。
力を見直す分岐点だとも言っていた。
本当に、全力で向かわずに楽なほうへ逃げていいのだろうか?
先生は、チクチクとした言葉を投げかけてきて、ジリジリとわたしの精神を削いでいく。
どのくらい経ったのか、もうわたしの感覚が麻痺してわからなくなったとき、急に宮城先生は、いままでにきいたことのないような優しい声をだした。
「あなたが嫌いで、こうやっていじめているんじゃないの。メンバーに選ばれることがどういうことかって、教えてあげているのよ」
その声に、まったく動けなかったわたしは、ぎこちなく顔をあげて先生を見上げた。
「木下さん。もし、あなたがメンバー試験を辞退するなら、いますぐ解放してあげるわよ」
急に腰を落とし、わたしの視線の高さまで自ら目を合わせてくると、先生はわたしの耳もとでささやく。
「恥ずかしくない点数だったけれど一歩及ばずって内容で、上には報告してあげるわ」
無意識に、わたしは先生の目を見つめていた。
宮城先生のその瞳には、先ほどまでの馬鹿にしきった光が消えている。
「辞退の仕方は簡単よ。プリントに書いたあなたの名前の下に、辞退しますってひとことを書くだけ。急に漢字が思いだせないのなら、ひらがなでもいいわ。ほら、簡単でしょう?」
心の底から、わたしのためを思って言っているような口調で続ける。
「楽になるわよ。辞退しますって書いちゃいなさい。本当はメンバーになりたくないって聞いているわよ。ここでリタイアしても誰も怒らない。逆に引き延ばされるほうが、周りに迷惑をかけるわ。それに、もしメンバーになったら、何度でもこんな目に遭うわよ? あなたも、わざわざ辛い目に遭うこともないでしょう?」
そうだ。
もともとメンバーになりたいわけじゃない。
わたしがここで辞退すれば、すぐに代わりの候補生の試験が、別のところではじまるだけだ。
だらだらと引き延ばしているほうが、皆に迷惑をかけているんだ。
わたしは、目の前の答案用紙へ視線を戻し、名前の下の余白を見つめた。
――でも。
本当にそれでいいのだろうか。
立会人だからかもしれないけれど、わたしの試験に対して、いまの凪先輩は親身になってくれている。
力を見直す分岐点だとも言っていた。
本当に、全力で向かわずに楽なほうへ逃げていいのだろうか?
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