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突然の指名
生徒会長の言葉が辛い
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生徒会長の明瞭な返事を聞いて、わたしはようやく安堵する。
大きくため息をついたわたしは、生徒会長の目があるにもかかわらず、口もとに笑みが浮かんだ。
緊張が緩んだわたしへ、生徒会長が凝視したまま問いかけてくる。
「本当に、きみが木下桂さんで間違いないだろうな」
「はい?」
まるで疑っているかのような口調の生徒会長へ、わたしは眉をひそめた。
「そうですけれど……。でも、なんでそんなことを聞くんですか?」
ちょっと心に余裕がでてきたわたしは、黙って見つめてくる生徒会長の顔を見返した。
癖のない前髪の向こう側にある漆黒の瞳は、力強い光を宿している。
鼻筋が通っていて立体感のある顔立ち。かたく結ばれた口もとは、そのまま彼の意思の強さと責任感を表しているようだ。
騒いでいたクラスメイトの様子がわたしの脳裏によぎったとき。
その整った顔のままで、生徒会長はゆっくりと口を開いた。
「そうか。想像よりもかなりイメージが違っていたからだ」
想像と違うって?
わたしは急に、自分の容姿が気になった。
百五十五センチの身長は高くない。体重は一応バランスがとれている。
十人並の顔立ちだと思っているが、これといった特徴のない顔。
伸ばすと毛先だけふわふわクリクリとしてくる天然パーマの髪は、あまり好きではないために、肩口で切りそろえてある。
想像よりも地味だと思われたのだろうか。
それとも、野暮ったいと思われたのだろうか。
やはり、異性に少しでも良く見られたいと思う心理が働いたわたしは、可憐で女の子らしいしぐさにみえるようにと胸の前で両手を組み、小首をかしげながら生徒会長を見つめた。
そんなそわそわしだしたわたしをじっと見つめていた彼は、不意に馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「もっとできる奴が呼ばれたと思ったんだよ。――こんなぶりっこだったとは。きっとハズレだな」
そのあまりの言葉に、唖然と口をあけて絶句しているわたしを一瞥すると、生徒会長はふたたび前を向いて階段を降りはじめる。
生徒会長にとって、わたしは入学してきたばかりの一年生で、顔さえ覚えられていない大勢の中のひとりに違いない。
そんな初対面同然の人間に向かって、なんて失礼な!
さすがに抗議をしようと、わたしは身体中に怒りをみなぎらせながら階段を駆け降りる。
すると、踊り場まで降りた生徒会長はわたしのほうへ振り返ると、先ほどの蔑むような笑みを浮かべたまま、あっさりと口にした。
「そうだった。きみが呼ばれた理由は家でも御両親のことでもなく、きみ自身に関してだ」
その瞬間、わたしは傍から見てもわかるくらいに、顔から血の気が引いた。
大きくため息をついたわたしは、生徒会長の目があるにもかかわらず、口もとに笑みが浮かんだ。
緊張が緩んだわたしへ、生徒会長が凝視したまま問いかけてくる。
「本当に、きみが木下桂さんで間違いないだろうな」
「はい?」
まるで疑っているかのような口調の生徒会長へ、わたしは眉をひそめた。
「そうですけれど……。でも、なんでそんなことを聞くんですか?」
ちょっと心に余裕がでてきたわたしは、黙って見つめてくる生徒会長の顔を見返した。
癖のない前髪の向こう側にある漆黒の瞳は、力強い光を宿している。
鼻筋が通っていて立体感のある顔立ち。かたく結ばれた口もとは、そのまま彼の意思の強さと責任感を表しているようだ。
騒いでいたクラスメイトの様子がわたしの脳裏によぎったとき。
その整った顔のままで、生徒会長はゆっくりと口を開いた。
「そうか。想像よりもかなりイメージが違っていたからだ」
想像と違うって?
わたしは急に、自分の容姿が気になった。
百五十五センチの身長は高くない。体重は一応バランスがとれている。
十人並の顔立ちだと思っているが、これといった特徴のない顔。
伸ばすと毛先だけふわふわクリクリとしてくる天然パーマの髪は、あまり好きではないために、肩口で切りそろえてある。
想像よりも地味だと思われたのだろうか。
それとも、野暮ったいと思われたのだろうか。
やはり、異性に少しでも良く見られたいと思う心理が働いたわたしは、可憐で女の子らしいしぐさにみえるようにと胸の前で両手を組み、小首をかしげながら生徒会長を見つめた。
そんなそわそわしだしたわたしをじっと見つめていた彼は、不意に馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「もっとできる奴が呼ばれたと思ったんだよ。――こんなぶりっこだったとは。きっとハズレだな」
そのあまりの言葉に、唖然と口をあけて絶句しているわたしを一瞥すると、生徒会長はふたたび前を向いて階段を降りはじめる。
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すると、踊り場まで降りた生徒会長はわたしのほうへ振り返ると、先ほどの蔑むような笑みを浮かべたまま、あっさりと口にした。
「そうだった。きみが呼ばれた理由は家でも御両親のことでもなく、きみ自身に関してだ」
その瞬間、わたしは傍から見てもわかるくらいに、顔から血の気が引いた。
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