ヲワイ

くにざゎゆぅ

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ルート

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 曽我が逃げだしたあと、栞と力也、忠太と英二が中庭を抜ける。すると思いがけず、神園と鈴音のふたりと鉢合わせた。
 ここで出会ったのは偶然だ。学生棟から外を経由して、はからずも外を見回っていた栞たちと出会っただけだ。
 だが、力也はそうと取らなかったらしい。満足そうに口を開く。

「なんだ、鈴音。結局戻ってきたのか」

 その言葉に、鈴音は不満そうな目つきで力也を睨む。
 すぐに神園が、気がついたようにつぶやいた。

「――あら、曽我先生はどこかしら……」
「曽我は、しっぽ巻いて逃げだしたんだ」
「え? でも……。あ、佐々木くん、先生に対して、その言葉は」
「都合が悪くなると、ひとりだけ、さっさとズラかる。男の風上にもおけない卑怯者だ。曽我って野郎は」

 その言葉には同意なのか、唇を尖らせながらも、琴音はうなずく素振りをみせる。そして小さな声で吐き捨てた。

「あの先生は、自分の立場が悪くなるとすぐに逃げだすの。じつに人間らしい人間よ」

 曽我に対する不信感は、神園も先ほど鈴音から聞いていたため、困った表情を浮かべた。
 不穏な空気を察して、栞が声をあげた。
 パンと手を打ち鳴らしながら、皆の注意を引く。

「ねえ、考えたんだけど。闇雲に探すんじゃなくて、探す手掛かりを考えない?」
「手掛かり?」

 あからさまに不満そうな声で、力也は栞へ顔を向けた。
 視線が合っただけでビクッと身を縮こませながらも、栞は、言い回しを考えながら言葉を続ける。

「えっと、ほら。ゲーム――遊びなんでしょ? ルールも一応存在するし……」
「片っ端から見ていきゃいいだろう?」
「でも、相手がこの遊びを仕掛けてくるってことは、なにか思惑がある気がするもの。それに、ほら、相手の放送の声で、そのたびに歩き回るのって振り回されている感じで、なんだか悔しいじゃない? ここは策を練るほどじゃなくても、目星をつけて動くほうが」
「言われてみれば、いいように遊ばれてる気がするな」

 力也が考えるように腕を組んだ。
 あちらこちら引っ張り回されるよりはいいとばかりに、忠太も真剣に声をあげる。

「七奈美か、成りすましが逃げそうな脱出ルートとか。あ、以前隠れてやりすごしていた場所とか。ですかね? 力也さん」
「――一年前、七奈美を実際に追いかけたルートをたどれば? そのときの遊びを推してきているんだし」

 ぼそっと口をだした鈴音の言葉に、力也がパッと顔を輝かせて指をさした。

「それだ」

 だが、鈴音が自ら提案したにも関わらず、忠太と英二は、乗り気とはいえない表情を浮かべた。栞が気づき、不審そうな顔で神園を見る。神園も、同じように首をかしげた。
 仕方がなさそうに、鈴音が口を開く。

「だって、普通に考えて、一年前の事件に関係ありそうな同じ道を通るのって、なんだか嫌じゃない? それに、放課後に何回かやったから、どの道をいつ通ったかなんて、覚えていないもん」
「そうなのね……」

 神園は納得するように、小さくうなずいた。
 だが、その横で、栞はキッときつい目で鈴音を見た。心の中がもやもやとする。その理由は、鈴音への嫌悪感だ。

 一年前、あのように七奈美を追い詰めて。何日も苦しめて。
 そして、優しく清らかな彼女を、死に至らしめたのだ。
 その片棒を、鈴音は担いでいるというのに。その言い草はないだろうと、怒りが沸々と湧いてくる。その衝動を抑えるために、栞は、ギュッと唇を噛んだ。

「おい。それじゃあ、全然手掛かりにならねぇじゃねぇか」

 苛立ったような声を、力也があげた。
 すると、慌てた忠太が口をはさむ。

「たぶん、最後にやった日じゃないですか? 力也さん。その、あの一件があった日。あの日も、放課後に教室の前の廊下で、七奈美を待ち伏せしましたよね」
「あ? ああ、そう――かな」

 力也のはっきりしない返事に、栞がじれったそうに、口を開いた。

「あの日も――七奈美が飛び降りた日も、あなたたちは追いかけたの?」

 栞の咎めるような目に、力也は一瞬言葉に詰まる。
 だが、すぐに開き直ったのか、怒鳴るように栞へ言った。

「ああ、そうだ。追い詰めた! 俺が屋上まで、追い詰めま、し、た! だが、俺は七奈美を突き落としたりしてねぇぞ! 七奈美が止める間もなく、勝手に柵を乗り越えて飛び降りたんだ! 俺のせいじゃない!」

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