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【第四章】対エージェント編『・・・!』
第99話 ほーりゅう
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「すてきな景色だね!」
わたしは感嘆の声をあげた。
案内されたところは、とても素晴らしい景観が拝める大きな窓がある、まだ新しい匂いがしているくらいのホテルの最上階の客室だ。
ソファや飾り棚など、高価そうな調度品の置かれた大きな部屋は、この洋室のほかにベッドのある寝室を備えていて、窓は海に面したオーシャンビュー。
そして、ホテルの裏は、ちょっとしたハイキングができそうな小高い森のような山。
名前こそ知れてはいないが、話では見ごたえのある滝もあるそうで、ロープウェーも行き来しているらしい。
「景色、綺麗なのは綺麗なんだけれど、ねぇ」
瑠璃は苦笑しながら、腰まである長いストレートロングの黒髪を風になびかせて、同じように窓から海を眺める。
もうすぐ夕焼けが終わる。
あたり一帯が境界線を失い、同じ濃度になる逢う魔が時。
普段は青いであろう海の色が違う。
明日も、天気予報は晴れだって言っていた。
爽やかな朝の海を見るのが楽しみだ。
「お父さんったら、繁華な街から離れた、こんな辺鄙な場所にホテルを建てちゃって。どうするのかしら」
「でも、こうして皆が集まる機会ができて良かったじゃない」
小柄な身体に似合う可愛らしい声で、椅子へ優雅に腰をおろした亮子は嬉しそうに言う。
「ほーりゅう、転校しちゃったから寂しかったのよ。でも相変わらず天然なところ、変わっていないわ。安心しちゃった」
「え。わたし、やっぱり天然かなぁ」
まあ、たしかにいまの学校でも、京一郎に天然と言われているしなぁ。
「でも、前より活動的っていうか、元気そうに見えるよ」
テーブルの上のウェルカムデザートの葡萄をつまみながら、理沙は笑った。
「そう? 変わったかな、わたし」
窓辺から部屋のなかへ振り返り、転校前の学校で親友だった三人を見つめるわたし。
まだ学校が変わって四ヶ月ほどしか経っていないから、この友人たちと一緒にいても、全然違和感がない。
それより、話したいことが山ほどある。
「なに? 思い当たることがあるの? さては彼氏でもできたか」
興味津々の理沙は、すばやくわたしの手を引いて、夕焼け色に染まる窓際に置かれたテーブルの椅子へ座らせる。
「やだなぁ、転校していって、そんな早くに彼氏なんてできないよ」
わたしは三人の視線に焦り、そう口にしながらも、脳裏によぎるのは、一目惚れをした彼のことだ。
そう。
新しい学校でできたクラスメイト。
夢乃はともかく、同じクラスでも特殊な立場のジプシーや京一郎のことは、たとえ接点のないこの友人たちでも、話さないほうがいい。
なぜか本能的に、そう思ったので。
だからわたしは、一目惚れをした彼のことを頭のなかに描きつつ、彼女たちの興味のありそうな恋愛話に話を持っていくことにした。
わたし自身、彼の話題をだすこと自体は楽しいものね。
「でも、彼氏はできていないけれど、向こうで格好良い人は見つけているんだぁ」
なんて言って。
わたしは、前と変わらない三人との関係に嬉しく思いながら、とどまることのない話をはじめた。
まだ周囲の観光地が整っていないので、年末近いこのホテルにも、もう少し部屋が空いているらしい。
それで、ホテルオーナーの娘である瑠璃が、空いている部屋に学友を招き、クリスマス&年末のパーティをしようを計画した。
わたしは、四ヵ月ぶりに会う親友たちと過ごせることが楽しみだし、建ったばかりの豪華なホテルのなかでは散策するところがたくさんあるしで、瑠璃の招待状を持ってうきうきしてやってきた。
ホテルの設備を大体説明したあと、瑠璃が告げる。
「食事は、一階に喫茶を兼ねた洋風レストランと、二階に和食と中華のお店があって、名の通った腕利きのシェフの作る食事が、このホテルの目玉になるのよ」
瑠璃の言葉で、食べるのが大好きなわたしは、また嬉しくなっちゃう。
この滞在期間に、たっぷり堪能しちゃおう!
わたしは感嘆の声をあげた。
案内されたところは、とても素晴らしい景観が拝める大きな窓がある、まだ新しい匂いがしているくらいのホテルの最上階の客室だ。
ソファや飾り棚など、高価そうな調度品の置かれた大きな部屋は、この洋室のほかにベッドのある寝室を備えていて、窓は海に面したオーシャンビュー。
そして、ホテルの裏は、ちょっとしたハイキングができそうな小高い森のような山。
名前こそ知れてはいないが、話では見ごたえのある滝もあるそうで、ロープウェーも行き来しているらしい。
「景色、綺麗なのは綺麗なんだけれど、ねぇ」
瑠璃は苦笑しながら、腰まである長いストレートロングの黒髪を風になびかせて、同じように窓から海を眺める。
もうすぐ夕焼けが終わる。
あたり一帯が境界線を失い、同じ濃度になる逢う魔が時。
普段は青いであろう海の色が違う。
明日も、天気予報は晴れだって言っていた。
爽やかな朝の海を見るのが楽しみだ。
「お父さんったら、繁華な街から離れた、こんな辺鄙な場所にホテルを建てちゃって。どうするのかしら」
「でも、こうして皆が集まる機会ができて良かったじゃない」
小柄な身体に似合う可愛らしい声で、椅子へ優雅に腰をおろした亮子は嬉しそうに言う。
「ほーりゅう、転校しちゃったから寂しかったのよ。でも相変わらず天然なところ、変わっていないわ。安心しちゃった」
「え。わたし、やっぱり天然かなぁ」
まあ、たしかにいまの学校でも、京一郎に天然と言われているしなぁ。
「でも、前より活動的っていうか、元気そうに見えるよ」
テーブルの上のウェルカムデザートの葡萄をつまみながら、理沙は笑った。
「そう? 変わったかな、わたし」
窓辺から部屋のなかへ振り返り、転校前の学校で親友だった三人を見つめるわたし。
まだ学校が変わって四ヶ月ほどしか経っていないから、この友人たちと一緒にいても、全然違和感がない。
それより、話したいことが山ほどある。
「なに? 思い当たることがあるの? さては彼氏でもできたか」
興味津々の理沙は、すばやくわたしの手を引いて、夕焼け色に染まる窓際に置かれたテーブルの椅子へ座らせる。
「やだなぁ、転校していって、そんな早くに彼氏なんてできないよ」
わたしは三人の視線に焦り、そう口にしながらも、脳裏によぎるのは、一目惚れをした彼のことだ。
そう。
新しい学校でできたクラスメイト。
夢乃はともかく、同じクラスでも特殊な立場のジプシーや京一郎のことは、たとえ接点のないこの友人たちでも、話さないほうがいい。
なぜか本能的に、そう思ったので。
だからわたしは、一目惚れをした彼のことを頭のなかに描きつつ、彼女たちの興味のありそうな恋愛話に話を持っていくことにした。
わたし自身、彼の話題をだすこと自体は楽しいものね。
「でも、彼氏はできていないけれど、向こうで格好良い人は見つけているんだぁ」
なんて言って。
わたしは、前と変わらない三人との関係に嬉しく思いながら、とどまることのない話をはじめた。
まだ周囲の観光地が整っていないので、年末近いこのホテルにも、もう少し部屋が空いているらしい。
それで、ホテルオーナーの娘である瑠璃が、空いている部屋に学友を招き、クリスマス&年末のパーティをしようを計画した。
わたしは、四ヵ月ぶりに会う親友たちと過ごせることが楽しみだし、建ったばかりの豪華なホテルのなかでは散策するところがたくさんあるしで、瑠璃の招待状を持ってうきうきしてやってきた。
ホテルの設備を大体説明したあと、瑠璃が告げる。
「食事は、一階に喫茶を兼ねた洋風レストランと、二階に和食と中華のお店があって、名の通った腕利きのシェフの作る食事が、このホテルの目玉になるのよ」
瑠璃の言葉で、食べるのが大好きなわたしは、また嬉しくなっちゃう。
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