15 / 159
【第一章】出会い編
第15話 足立生徒会長
しおりを挟む
とんでもない場面を目の前へ突きつけられ、一瞬で全身が冷えた私は、ガードレールへと駆け寄った。
遠回りとなる坂を走って奴を追うには、捕まえられないところまで離されている。
「くそっ!」
ガードレールに右手の拳を叩きつけた私は、徐々に小さくなる背を見つめて唇を噛んだ。
逃げられた悔しさもあった。
だが、それ以上に、いまの出来事に度肝を抜かれていた。
改めて、転落防止のために設置されていたガードレールに手を置き、その向こう側となる急な斜面下の小道を見おろす。
優に、2階の窓から飛び降りるくらいの高さはあるだろう。
これは果たして、――躊躇なく後ろ向きで飛べる高さなのだろうか?
学校内における奴の噂では、定期考査は学年順位一桁に入る頭脳の持ち主ではあるが、体力のない軟弱な変わり者ではなかったか?
話に聞くような怪しげな術を使われる前に2、3発で叩き伏せ、知っていることを白状させられると甘くみていたが……。
とんだ計算違いだった。
妹の手がかりに逃げられ、私は、勢いこんでいただけに拍子抜けしてしまった。
そして、ガードレールにがっくりと寄りかかる。
真美。
身代金誘拐にしては、脅迫の電話がかかってこない。
となると、真美本人が目的となるのだろうか。
昨日の朝、真美は母親とともに家を出た。
「真美は可愛いのだから、変質者に気をつけていってこい」と、家の前で手を振ったのが最後だった。
母親が一緒だから大丈夫だという言葉を鵜呑みにせず、自分も付き添って校門まで、いや、校内へ――教室まで送っていけばよかったのだ。
母親と別れてから妹の中学校までの、ほんの数分の道のりで。
いったい誰が、妹を連れ去ったのだろう。
「きゃあ! 見失っちゃう!」
ふいに近くから、この場にそぐわない声があがり、私は我に返った。
声のほうへ顔を向けると、ガードレールをまたいで乗り越えようとする、ひとりの少女の姿が視界に入る。
この辺りでは見かけないセーラー服だが、どこの制服だったかと記憶を掘り起こすほど、私は頭が働かなかった。
ぼんやりと眺めている私の前で、彼女はようやくガードレールを乗り越える。
そのまま今度は、急な斜面を転がるように滑りおりていった。
「あ~! 角、角曲がっちゃった!」
どうにか無事に下までたどり着いた彼女は、緊張感のない声で待ってぇ~と叫びながら、ぱたぱたと走りだす。
その姿が見えなくなるころ、ようやく私は、彼女は奴のあとを追いかけていったのだと気がついた。
遠回りとなる坂を走って奴を追うには、捕まえられないところまで離されている。
「くそっ!」
ガードレールに右手の拳を叩きつけた私は、徐々に小さくなる背を見つめて唇を噛んだ。
逃げられた悔しさもあった。
だが、それ以上に、いまの出来事に度肝を抜かれていた。
改めて、転落防止のために設置されていたガードレールに手を置き、その向こう側となる急な斜面下の小道を見おろす。
優に、2階の窓から飛び降りるくらいの高さはあるだろう。
これは果たして、――躊躇なく後ろ向きで飛べる高さなのだろうか?
学校内における奴の噂では、定期考査は学年順位一桁に入る頭脳の持ち主ではあるが、体力のない軟弱な変わり者ではなかったか?
話に聞くような怪しげな術を使われる前に2、3発で叩き伏せ、知っていることを白状させられると甘くみていたが……。
とんだ計算違いだった。
妹の手がかりに逃げられ、私は、勢いこんでいただけに拍子抜けしてしまった。
そして、ガードレールにがっくりと寄りかかる。
真美。
身代金誘拐にしては、脅迫の電話がかかってこない。
となると、真美本人が目的となるのだろうか。
昨日の朝、真美は母親とともに家を出た。
「真美は可愛いのだから、変質者に気をつけていってこい」と、家の前で手を振ったのが最後だった。
母親が一緒だから大丈夫だという言葉を鵜呑みにせず、自分も付き添って校門まで、いや、校内へ――教室まで送っていけばよかったのだ。
母親と別れてから妹の中学校までの、ほんの数分の道のりで。
いったい誰が、妹を連れ去ったのだろう。
「きゃあ! 見失っちゃう!」
ふいに近くから、この場にそぐわない声があがり、私は我に返った。
声のほうへ顔を向けると、ガードレールをまたいで乗り越えようとする、ひとりの少女の姿が視界に入る。
この辺りでは見かけないセーラー服だが、どこの制服だったかと記憶を掘り起こすほど、私は頭が働かなかった。
ぼんやりと眺めている私の前で、彼女はようやくガードレールを乗り越える。
そのまま今度は、急な斜面を転がるように滑りおりていった。
「あ~! 角、角曲がっちゃった!」
どうにか無事に下までたどり着いた彼女は、緊張感のない声で待ってぇ~と叫びながら、ぱたぱたと走りだす。
その姿が見えなくなるころ、ようやく私は、彼女は奴のあとを追いかけていったのだと気がついた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜
柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。
ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。
「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる