夏休み

くにざゎゆぅ

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 無事に期末考査も及第点をとって、ぼくとハナは、心おきなく夏休みを満喫させていった。
 ハナと同じ時間を、ぼくは計画通り、ふたりで一緒に楽しんだ。

 夏休みに入ってすぐに、グループで海へ行った。
 一緒に撮った初めての写真は、今も机の上に飾っている。

 初めてのふたりきりのデートは、コメディ映画を観に行った。
 ひとつのポップコーンを一緒に食べながら、大きな声で笑った。

 太鼓の音が響き、夜空の星が見えなくなるくらい電球が輝く夏祭りにも行った。
 はぐれないように、ハナの小さくてあたたかい手を握った。

 キャンプはカレーじゃなくてバーベキューになったけれど、一緒に肉を焼くのは楽しかった。
 満天の星の下で触れたハナの唇は、とても柔らかかった。




 夏休みも半ばにさしかかる頃、ハナは、この世界から姿を消した。

 ぼくの見ていないところで、

 知らないあいだに、

 理由もわからないままに、

 殺されたんだ。



 警察は、手がかりをさがすためにハナの身元を洗いざらいさらったが、当然くもりひとつなかった。
 もちろんぼくの存在もわかっていて調べられたが、ぼくにはアリバイがあった。
 夏休みをハナと有意義に過ごすため、一緒にいる以外の時間をほとんど、コンビニのバイトに費やしていたから。

 犯人は捕まらなかった。
 警察のほうでは、最終的には数ヶ月かけて犯人の目星をつけたらしいけれど、証拠がそろわなかった。
 空気に溶けて消えてしまう皆の言葉だけだったら、口裏を合わせたあの連中が犯人だと、こんなにも特定できるのに。

 ぼくとハナ、ふたりで立てた夏休みの計画は、半分しか一緒にできなかった。
 ハナがいなくなってしまう夏休みなんて、計画になかった。
 悲しみの中でぼくは、すべてに手がつかなかった。

 夏休みが終わり、二学期に入った。
 クリスマスも正月も、ぼくとハナの誕生日も通り過ぎて、新しい学年になった。
 ひとりの人間が消えても、時間の流れは変わらないんだ。
 ハナを失ったぼくは、いま、独りで高校二年生の夏休みを迎えた。





 一学期の通知表を受け取った。
 たった今から夏休みだ。



 さあ。
 ぼくの立てた計画通り、これからヤツらへの復讐の夏休みだ。




 END
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