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第三章 幽閉塔の姫君編

22 甘い夢の中

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 好奇心から、わたあめシャンパンをちょっと啜ったリコは、世界がくるくると回って……つまり酔っ払って、ベッドに沈んだ。

 まるでわたあめの雲に乗って浮かんでいるように、リコは夢の世界を漂っていた。
 甘い香りの中、遠くで花火が鳴って、お囃子と太鼓の音がする。

(ああ、これはお祭りだ。家族と結花と一緒にわたあめを食べるのが楽しかったなぁ)

 懐かしさと恋しさで、胸がきゅーんと鳴った。
 賑やかなお祭りが遠い場所にあって、リコだけがひとりぼっちで雲に浮いているような寂しい気持ちになるが、ふと、頬に優しい手の温度を感じた。
 誰かが自分の頬を優しく撫でている。髪も、肩も。

 蕩けるように優しい手に、リコは眠りから浮上して薄らと目を開けた。

 小さな明かりが灯ったベッドの上で、リコの頬を撫でているのはレオだった。慈しむように、優しくリコを見下ろしていた。

「レオ……君?」
「起こしてごめん。どうしても、会いたくて」

 囁く声も微笑む顔も幻のようで、リコはしばらく呆然とした。

「嘘……本物?」
「本物だよ」

 小声の答えと一緒に、おでこに、頬に、耳にキスを貰って、リコの意識ははっきりと覚醒していた。顔を離したレオは笑顔になった。

「リコさん。ただいま」

 リコは震えるほど歓喜が湧いて、涙がドッと溢れていた。

「レオ君……! レオ君!!」

 手をのばしてレオの首と頭を抱え込み、二人はベッドの上で互いに強く抱擁した。

「会いたかった! ずっと、会いたかったよ!」

 号泣するリコの頭を撫でながら、レオはリコの香りと存在を確かめるように首元に顔を埋めている。

「僕もです。ずっとリコさんを想っていました。待たせてごめんなさい」

 久しぶりに聞いた、丁寧で優しい口調が、リコの心にジーンと響いていた。

「レオ君。好き」

 リコは改めて告白するように、レオの瞳をまっすぐに見た。

「僕も。好きです」

 二人は見つめ合って、ゆっくりと丁寧なキスをした。
 再会のキスは、夢のわたあめの味がした。


 * * * *


 朝になって。

 まるで雛鳥のように、リコは温かい温度の中で目覚めた。
 レオの胸に抱きしめられたまま眠っていたのだと思い出して、そっと顔を見上げると、レオはぐっすりと熟睡している。余程疲れているのだろう。レオがこんなにあどけない顔をして眠っているのを初めて見た気がした。
 リコは嬉しくなってしばらく寝顔を眺めていたが、レオは日差しで朝に気づいて、ゆっくり目を開けた。

「ん……リコさん」
「おはよう、レオ君」
「良かった……夢じゃなかった」

 レオはリコを改めて抱きしめて、リコは明るい朝の抱擁に照れて、真っ赤になっていた。

「王宮に行く前に、リコさんを送っていきます」
「また、王宮に行くの?」

 不安そうなリコの寝癖を撫でながら、レオは微笑む。

「大丈夫。今日は必ず帰ってきます。それと……リコさんから、ケイト所長にひとつ、お願いをしてもらえませんか?」
「ケイト所長に、お願い?」
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