105 / 110
第三章 幽閉塔の姫君編
22 甘い夢の中
しおりを挟む
好奇心から、わたあめシャンパンをちょっと啜ったリコは、世界がくるくると回って……つまり酔っ払って、ベッドに沈んだ。
まるでわたあめの雲に乗って浮かんでいるように、リコは夢の世界を漂っていた。
甘い香りの中、遠くで花火が鳴って、お囃子と太鼓の音がする。
(ああ、これはお祭りだ。家族と結花と一緒にわたあめを食べるのが楽しかったなぁ)
懐かしさと恋しさで、胸がきゅーんと鳴った。
賑やかなお祭りが遠い場所にあって、リコだけがひとりぼっちで雲に浮いているような寂しい気持ちになるが、ふと、頬に優しい手の温度を感じた。
誰かが自分の頬を優しく撫でている。髪も、肩も。
蕩けるように優しい手に、リコは眠りから浮上して薄らと目を開けた。
小さな明かりが灯ったベッドの上で、リコの頬を撫でているのはレオだった。慈しむように、優しくリコを見下ろしていた。
「レオ……君?」
「起こしてごめん。どうしても、会いたくて」
囁く声も微笑む顔も幻のようで、リコはしばらく呆然とした。
「嘘……本物?」
「本物だよ」
小声の答えと一緒に、おでこに、頬に、耳にキスを貰って、リコの意識ははっきりと覚醒していた。顔を離したレオは笑顔になった。
「リコさん。ただいま」
リコは震えるほど歓喜が湧いて、涙がドッと溢れていた。
「レオ君……! レオ君!!」
手をのばしてレオの首と頭を抱え込み、二人はベッドの上で互いに強く抱擁した。
「会いたかった! ずっと、会いたかったよ!」
号泣するリコの頭を撫でながら、レオはリコの香りと存在を確かめるように首元に顔を埋めている。
「僕もです。ずっとリコさんを想っていました。待たせてごめんなさい」
久しぶりに聞いた、丁寧で優しい口調が、リコの心にジーンと響いていた。
「レオ君。好き」
リコは改めて告白するように、レオの瞳をまっすぐに見た。
「僕も。好きです」
二人は見つめ合って、ゆっくりと丁寧なキスをした。
再会のキスは、夢のわたあめの味がした。
* * * *
朝になって。
まるで雛鳥のように、リコは温かい温度の中で目覚めた。
レオの胸に抱きしめられたまま眠っていたのだと思い出して、そっと顔を見上げると、レオはぐっすりと熟睡している。余程疲れているのだろう。レオがこんなにあどけない顔をして眠っているのを初めて見た気がした。
リコは嬉しくなってしばらく寝顔を眺めていたが、レオは日差しで朝に気づいて、ゆっくり目を開けた。
「ん……リコさん」
「おはよう、レオ君」
「良かった……夢じゃなかった」
レオはリコを改めて抱きしめて、リコは明るい朝の抱擁に照れて、真っ赤になっていた。
「王宮に行く前に、リコさんを送っていきます」
「また、王宮に行くの?」
不安そうなリコの寝癖を撫でながら、レオは微笑む。
「大丈夫。今日は必ず帰ってきます。それと……リコさんから、ケイト所長にひとつ、お願いをしてもらえませんか?」
「ケイト所長に、お願い?」
まるでわたあめの雲に乗って浮かんでいるように、リコは夢の世界を漂っていた。
甘い香りの中、遠くで花火が鳴って、お囃子と太鼓の音がする。
(ああ、これはお祭りだ。家族と結花と一緒にわたあめを食べるのが楽しかったなぁ)
懐かしさと恋しさで、胸がきゅーんと鳴った。
賑やかなお祭りが遠い場所にあって、リコだけがひとりぼっちで雲に浮いているような寂しい気持ちになるが、ふと、頬に優しい手の温度を感じた。
誰かが自分の頬を優しく撫でている。髪も、肩も。
蕩けるように優しい手に、リコは眠りから浮上して薄らと目を開けた。
小さな明かりが灯ったベッドの上で、リコの頬を撫でているのはレオだった。慈しむように、優しくリコを見下ろしていた。
「レオ……君?」
「起こしてごめん。どうしても、会いたくて」
囁く声も微笑む顔も幻のようで、リコはしばらく呆然とした。
「嘘……本物?」
「本物だよ」
小声の答えと一緒に、おでこに、頬に、耳にキスを貰って、リコの意識ははっきりと覚醒していた。顔を離したレオは笑顔になった。
「リコさん。ただいま」
リコは震えるほど歓喜が湧いて、涙がドッと溢れていた。
「レオ君……! レオ君!!」
手をのばしてレオの首と頭を抱え込み、二人はベッドの上で互いに強く抱擁した。
「会いたかった! ずっと、会いたかったよ!」
号泣するリコの頭を撫でながら、レオはリコの香りと存在を確かめるように首元に顔を埋めている。
「僕もです。ずっとリコさんを想っていました。待たせてごめんなさい」
久しぶりに聞いた、丁寧で優しい口調が、リコの心にジーンと響いていた。
「レオ君。好き」
リコは改めて告白するように、レオの瞳をまっすぐに見た。
「僕も。好きです」
二人は見つめ合って、ゆっくりと丁寧なキスをした。
再会のキスは、夢のわたあめの味がした。
* * * *
朝になって。
まるで雛鳥のように、リコは温かい温度の中で目覚めた。
レオの胸に抱きしめられたまま眠っていたのだと思い出して、そっと顔を見上げると、レオはぐっすりと熟睡している。余程疲れているのだろう。レオがこんなにあどけない顔をして眠っているのを初めて見た気がした。
リコは嬉しくなってしばらく寝顔を眺めていたが、レオは日差しで朝に気づいて、ゆっくり目を開けた。
「ん……リコさん」
「おはよう、レオ君」
「良かった……夢じゃなかった」
レオはリコを改めて抱きしめて、リコは明るい朝の抱擁に照れて、真っ赤になっていた。
「王宮に行く前に、リコさんを送っていきます」
「また、王宮に行くの?」
不安そうなリコの寝癖を撫でながら、レオは微笑む。
「大丈夫。今日は必ず帰ってきます。それと……リコさんから、ケイト所長にひとつ、お願いをしてもらえませんか?」
「ケイト所長に、お願い?」
10
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?
鳴田るな
恋愛
男爵令嬢シャリーアンナは、格下であるため、婚約者の侯爵令息に長い間虐げられていた。
耐え続けていたが、ついには殺されかけ、黙ってやり過ごすだけな態度を改めることにする。
婚約者は逆ギレし、シャリーアンナに婚約破棄を言い放つ。
するとなぜか、隣国の皇子様に言い寄られるようになって!?
地味で平凡な令嬢(※ただし秘密持ち)が、婚約破棄されたら隣国からやってきた皇子殿下に猛烈アタックされてしまうようになる話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる