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第二章 魔獣退治編
37 水色のアイドル
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ノエル王子に謁見する約束の日の朝。
レオがリビングに向かうと、きゃっきゃと華やかに騒ぐ声が聞こえる。リコ、マニ、ミーシャの声だ。
「じゃーん!」
リビングの扉を開けると、三人娘はポーズを取って、レオに見せつけた。
「え!? どうしたんです!?」
三人はお揃いのワンピースを着ていた。水色のストライプの爽やかな模様に、白い襟が可愛らしい。小さなボタンはキャンディのようにカラフルで、白いレースのエプロンがワンピースに映えている。
アレキがまるで七五三の準備をするように、ウキウキとミーシャの靴のサイズを確かめていた。
「いや~、オーダーメイドが間に合って良かった~! うちの可愛い娘たちの、リコプリンの制服だよ! どうだい、レオ!」
「ど、どうもこうも……破茶滅茶に……可愛いです」
圧倒的な華やかさに、レオは仰け反っていた。
リコは笑顔でスカートを摘んで、あの愛らしい挨拶をしている。
「やっぱり三人でリコプリンだから、三人で王子様にご挨拶するの!」
マニは普段は着ない服に照れながらも、浮かれている。
「緊張しちゃうな~、王子様に一目惚れされたらどうしよう!」
「マニちゃん玉の輿!」
ミーシャも楽しそうに飛び跳ねる。
「ぷ……あははっ」
レオはあまりにハッピーな絵に笑ってしまった。ひとりで悩んでいたのがバカバカしくなるほど、リコプリンにはパワーがあった。
レオは昨夜のおまじないが効いていて、凛とした瞳に戻っている。
「僕も支度してきます。お嬢様たちをしっかりエスコートしないと」
* * * *
オスカールの馬車に乗って、三人娘とレオは王宮に向かった。
オスカールも頭に羽を立てて、お洒落をしている。
馬車の中でレオはリコに見惚れっぱなしで、リコもまた、レオをうっとりと見つめたまま、手を握り合っていた。
いつもと何かが違う雰囲気に、マニとミーシャは目を丸くして顔を見合わせていた。
王宮は門から中庭から廊下まですべてが豪華で、三人は口を開けたまま、天井を見回した。
「すっごい……これが王宮……王様の住処」
変な表現をして、フラフラと廊下を進む。
ノエル王子と謁見する広間に着くと、これまた豪華絢爛な部屋だった。
「ふわ~、金ピカ城よりでかいや」
マニが小声で呟く。
三人娘とレオが着いてすぐに、ノエル王子がお付きの者と一緒に現れた。
ノエル王子は華やかな三人娘に「おお!」と瞳を輝かせて、三人娘もまた、金髪碧眼の豪華な装いのノエル王子に、わあ、と顔を赤らめていた。
「初めまして、王子様」
三人娘がハモって同時にチョコン、と挨拶をしたので、ノエル王子のテンションはマックスになっていた。
「これはなんと……リコプリンは三人組なのか!」
リコはきちんと手を前に組んで、緊張しながらも笑顔で受け応えした。
「はい! 私たち三人でプリンを作っています! 私、リコが発案と調合を担当して」
「私が卵液の攪拌を!」
「そんで、あたしが火力の調節をします!」
ノエル王子は「おぉ~」と感嘆の声を上げた。
「それぞれが分担しているのか、面白い!」
案内されたテーブルでお茶とケーキを楽しみながら、王子とリコプリンの三人はぺちゃくちゃと、スイーツ話に盛り上がった。
レオは少し離れたところでそれを傍観しながら、余裕を持って佇んでいた。三人娘は予想以上に円滑なコミュニケーションをしていて、レオは感心した。
(あの三人のバランスは絶妙だな。天然で明るいリコさんと、大胆でユーモアのあるマニさん、それに冷静でしっかり者のミーシャ)
互いに補いあって、会話の主導権を握っていた。ノエル王子はただただ、三人娘の勢いに引き込まれているようだ。
レオが会話をじっと観察していると、やっぱりノエル王子は歳が近いこともあって、リコを見つめる時間が長い。いや、見惚れているし、沢山話かけている。
(ああ~……)
レオは自分の想定通りの展開になっていくのを覚悟した。
謁見の終わりの時間が近づいて、王子はとうとう、リコを見つめて立ち上がっていた。頬が紅潮している。
「リコ殿。余はまたリコ殿にお会いしたい。いや。何なら、これからは王宮専属の料理人として、余のためにプリンを作ってもらえないか」
王子の権力を利用した提案に、レオは息が詰まった。「王宮専属プリン」という方向は想定していなかった。
リコは驚いて目を見開いていたが、微笑んで立ち上がった。
「そんな光栄なお誘いをいただいて、とても嬉しいです! だけど、私たちは町から出発したので、これからも町でプリンを作り続けようと思います」
そしてレオの方を向いて、手招きをした。
レオは驚いて駆け寄ると、リコはレオの腕を取った。
「それに、レオ君がいるから、いつでもどこでも、プリンを王子様に配達してくれます。ね! レオ君!」
リコが無邪気にレオを見上げて、レオは慌てて頷いた。
「も、勿論です! ノエル王子」
ノエル王子はポカーンと、二人を凝視している。
リコのレオを見つめる顔や腕に絡ませる手は、明らかに恋人同士の空気があった。レオもまた、王子が見たことの無い、照れた顔をしていた。
「ふふ、ふ……」
ノエル王子は笑い出した。
「何だ、レオ! お前は余に隠しごとばかりだな! まさかお前が恋をして、そんな顔をするとは……! わははは!」
ノエル王子に連られてマニも噴き出して、全員が笑っていた。レオだけが真っ赤になって俯いた。
「あ、はは……」
ここまで来て初めて、シエナの言っていた事がわかった。
『大切な事を忘れている』とは、リコの気持ちだった。
どの道を選んで、どう答えるのか。
レオはリコの意思をまったく考慮に入れていなかったのだと気づいた。自分の中で勝手に、リコはか弱く守ってあげるどころか、判断までしてあげないと、などと考えていたようだ。独りよがりな過保護ぶりに呆れてしまう。
自分の腕を掴んで微笑むリコを見下ろした。
こんなにもしっかりと、自分の意思を持った素敵な女性なんだと、レオは改めてリコを好きになっていた。
レオがリビングに向かうと、きゃっきゃと華やかに騒ぐ声が聞こえる。リコ、マニ、ミーシャの声だ。
「じゃーん!」
リビングの扉を開けると、三人娘はポーズを取って、レオに見せつけた。
「え!? どうしたんです!?」
三人はお揃いのワンピースを着ていた。水色のストライプの爽やかな模様に、白い襟が可愛らしい。小さなボタンはキャンディのようにカラフルで、白いレースのエプロンがワンピースに映えている。
アレキがまるで七五三の準備をするように、ウキウキとミーシャの靴のサイズを確かめていた。
「いや~、オーダーメイドが間に合って良かった~! うちの可愛い娘たちの、リコプリンの制服だよ! どうだい、レオ!」
「ど、どうもこうも……破茶滅茶に……可愛いです」
圧倒的な華やかさに、レオは仰け反っていた。
リコは笑顔でスカートを摘んで、あの愛らしい挨拶をしている。
「やっぱり三人でリコプリンだから、三人で王子様にご挨拶するの!」
マニは普段は着ない服に照れながらも、浮かれている。
「緊張しちゃうな~、王子様に一目惚れされたらどうしよう!」
「マニちゃん玉の輿!」
ミーシャも楽しそうに飛び跳ねる。
「ぷ……あははっ」
レオはあまりにハッピーな絵に笑ってしまった。ひとりで悩んでいたのがバカバカしくなるほど、リコプリンにはパワーがあった。
レオは昨夜のおまじないが効いていて、凛とした瞳に戻っている。
「僕も支度してきます。お嬢様たちをしっかりエスコートしないと」
* * * *
オスカールの馬車に乗って、三人娘とレオは王宮に向かった。
オスカールも頭に羽を立てて、お洒落をしている。
馬車の中でレオはリコに見惚れっぱなしで、リコもまた、レオをうっとりと見つめたまま、手を握り合っていた。
いつもと何かが違う雰囲気に、マニとミーシャは目を丸くして顔を見合わせていた。
王宮は門から中庭から廊下まですべてが豪華で、三人は口を開けたまま、天井を見回した。
「すっごい……これが王宮……王様の住処」
変な表現をして、フラフラと廊下を進む。
ノエル王子と謁見する広間に着くと、これまた豪華絢爛な部屋だった。
「ふわ~、金ピカ城よりでかいや」
マニが小声で呟く。
三人娘とレオが着いてすぐに、ノエル王子がお付きの者と一緒に現れた。
ノエル王子は華やかな三人娘に「おお!」と瞳を輝かせて、三人娘もまた、金髪碧眼の豪華な装いのノエル王子に、わあ、と顔を赤らめていた。
「初めまして、王子様」
三人娘がハモって同時にチョコン、と挨拶をしたので、ノエル王子のテンションはマックスになっていた。
「これはなんと……リコプリンは三人組なのか!」
リコはきちんと手を前に組んで、緊張しながらも笑顔で受け応えした。
「はい! 私たち三人でプリンを作っています! 私、リコが発案と調合を担当して」
「私が卵液の攪拌を!」
「そんで、あたしが火力の調節をします!」
ノエル王子は「おぉ~」と感嘆の声を上げた。
「それぞれが分担しているのか、面白い!」
案内されたテーブルでお茶とケーキを楽しみながら、王子とリコプリンの三人はぺちゃくちゃと、スイーツ話に盛り上がった。
レオは少し離れたところでそれを傍観しながら、余裕を持って佇んでいた。三人娘は予想以上に円滑なコミュニケーションをしていて、レオは感心した。
(あの三人のバランスは絶妙だな。天然で明るいリコさんと、大胆でユーモアのあるマニさん、それに冷静でしっかり者のミーシャ)
互いに補いあって、会話の主導権を握っていた。ノエル王子はただただ、三人娘の勢いに引き込まれているようだ。
レオが会話をじっと観察していると、やっぱりノエル王子は歳が近いこともあって、リコを見つめる時間が長い。いや、見惚れているし、沢山話かけている。
(ああ~……)
レオは自分の想定通りの展開になっていくのを覚悟した。
謁見の終わりの時間が近づいて、王子はとうとう、リコを見つめて立ち上がっていた。頬が紅潮している。
「リコ殿。余はまたリコ殿にお会いしたい。いや。何なら、これからは王宮専属の料理人として、余のためにプリンを作ってもらえないか」
王子の権力を利用した提案に、レオは息が詰まった。「王宮専属プリン」という方向は想定していなかった。
リコは驚いて目を見開いていたが、微笑んで立ち上がった。
「そんな光栄なお誘いをいただいて、とても嬉しいです! だけど、私たちは町から出発したので、これからも町でプリンを作り続けようと思います」
そしてレオの方を向いて、手招きをした。
レオは驚いて駆け寄ると、リコはレオの腕を取った。
「それに、レオ君がいるから、いつでもどこでも、プリンを王子様に配達してくれます。ね! レオ君!」
リコが無邪気にレオを見上げて、レオは慌てて頷いた。
「も、勿論です! ノエル王子」
ノエル王子はポカーンと、二人を凝視している。
リコのレオを見つめる顔や腕に絡ませる手は、明らかに恋人同士の空気があった。レオもまた、王子が見たことの無い、照れた顔をしていた。
「ふふ、ふ……」
ノエル王子は笑い出した。
「何だ、レオ! お前は余に隠しごとばかりだな! まさかお前が恋をして、そんな顔をするとは……! わははは!」
ノエル王子に連られてマニも噴き出して、全員が笑っていた。レオだけが真っ赤になって俯いた。
「あ、はは……」
ここまで来て初めて、シエナの言っていた事がわかった。
『大切な事を忘れている』とは、リコの気持ちだった。
どの道を選んで、どう答えるのか。
レオはリコの意思をまったく考慮に入れていなかったのだと気づいた。自分の中で勝手に、リコはか弱く守ってあげるどころか、判断までしてあげないと、などと考えていたようだ。独りよがりな過保護ぶりに呆れてしまう。
自分の腕を掴んで微笑むリコを見下ろした。
こんなにもしっかりと、自分の意思を持った素敵な女性なんだと、レオは改めてリコを好きになっていた。
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