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第二章 魔獣退治編
4 魔女小屋の会
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「ケモ君。これはこっちで、これはあっちね」
リコの指示通りにケモ君は卵を軽々と運んで、色とりどりの卵はケースにどんどん収まっていく。
「ケモ君、偉いね。私が運ぶよりも、うんと早いよ」
リコはケモ君というナマケモノの部下ができて、デスクワークに集中する事ができた。卵の風味コメントはより丁寧に詳細を書けて、取引先の評判も上々だった。
それと同時に、リコの卵への知識も研ぎ澄まされて、プリンにどの卵が最適なのか、どんな風味のバリエーションが出せるのか、プリン道にも生かされていた。
「いよいよ、リコプリンちゃんが始まるのねっ!?」
ケイト所長は嬉しそうに、はしゃいでいる。
「はい。マニちゃんとミーシャちゃんに手伝ってもらって、町の広場にプリンの屋台を出すんです!」
「すっごぉい! 私、リコプリンちゃんのファン一号だから!!」
休職中の職場にレオに届けてもらったプリンは、所長の心を射止めていた。
「それで、プリンに最適な卵を何個か購入したくて」
「卵代は売上が出た後でいいわよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
リコのプリン道は販売に向けて、着々と進んでいた。
* * * *
魔女小屋で、ミーティングが開かれる。
リコ、マニ、ミーシャのプリン作り隊が集まった。
テーブルには大量のスケッチが広げられて、週末のプリン屋台の構想が練られていた。
「そんなわけで、プリンにはプリン・アラモードとか、ココアプリンとか、いろんなバリエーションがあるんだけど、今回は異世界プリンのデビューという事で、シンプルなプリン一種類に絞ろうと思うの!」
リコの宣言に、マニは首を傾げた。
「その方向性はいいけどさ、異世界プリンて、何なの?」
「あ、えっと、異世界に逝ってしまうほど、美味しいって意味だよ」
リコは焦って弁解した。
リコが異世界からやって来て、異世界にて作ったプリンだからこその命名だったが、みんなにとっては勿論、意味がわからない。
書記担当のミーシャも「うーん」と唸る。
「異世界リコプリンは? リコが作ってるのは商品名でアピールした方がいいと思う」
マニも頷く。
「リコを看板娘にした方がいいよね」
巧みなブランディングが練られていた。
屋台のテントはアレキの占い館を借りて、布や看板でリメイクし、可愛いスイーツ感を全開にする。
『~異世界へようこそ~ リコプリン』
絵具を使って描かれた看板に、マニは爆笑した。
「異世界へようこそ」が冠で「リコプリン」が店名となっている。
「なんかインチキくさいっていうか、意味わかんない!」
笑いながらも気に入ったようで、壁に貼ったり眺めたりしている。
リコはこの楽しい雰囲気が、もとの世界の文化祭の準備に似ていて、懐かしく感じていた。
異世界にやって来てから二ヶ月がたち、この世界での生活が忙しく、もとの世界を思い出すことはだんだんと減っている。
お母さん、お父さん、親友の結花。
みんな元気だろうか。
二ヶ月も莉子が行方不明になって、悲しんでいるだろうか。
リコはふと故郷を思い出して、久しぶりに寂しい気持ちになっていた。
そんなリコの物憂げな眼差しを、ミーシャはそっと伺っていた。
深夜までプリン会議は熱心に行われて、三人は魔女小屋で眠りについた。
ベッドにマニとミーシャが眠って、リコは床に転がっていた。
毎日が充実して楽しくて、一生懸命な反面、ふとした時にもとの世界を思い出すのと同時に、自分が乗っ取ってしまったこの体の持ち主の魂の行方を考えてしまう。
「ごめんね……」
家族へなのか、この美少女の魂へなのか、わからない詫びの言葉を口にして、リコは眠りに落ちていった。
リコの指示通りにケモ君は卵を軽々と運んで、色とりどりの卵はケースにどんどん収まっていく。
「ケモ君、偉いね。私が運ぶよりも、うんと早いよ」
リコはケモ君というナマケモノの部下ができて、デスクワークに集中する事ができた。卵の風味コメントはより丁寧に詳細を書けて、取引先の評判も上々だった。
それと同時に、リコの卵への知識も研ぎ澄まされて、プリンにどの卵が最適なのか、どんな風味のバリエーションが出せるのか、プリン道にも生かされていた。
「いよいよ、リコプリンちゃんが始まるのねっ!?」
ケイト所長は嬉しそうに、はしゃいでいる。
「はい。マニちゃんとミーシャちゃんに手伝ってもらって、町の広場にプリンの屋台を出すんです!」
「すっごぉい! 私、リコプリンちゃんのファン一号だから!!」
休職中の職場にレオに届けてもらったプリンは、所長の心を射止めていた。
「それで、プリンに最適な卵を何個か購入したくて」
「卵代は売上が出た後でいいわよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
リコのプリン道は販売に向けて、着々と進んでいた。
* * * *
魔女小屋で、ミーティングが開かれる。
リコ、マニ、ミーシャのプリン作り隊が集まった。
テーブルには大量のスケッチが広げられて、週末のプリン屋台の構想が練られていた。
「そんなわけで、プリンにはプリン・アラモードとか、ココアプリンとか、いろんなバリエーションがあるんだけど、今回は異世界プリンのデビューという事で、シンプルなプリン一種類に絞ろうと思うの!」
リコの宣言に、マニは首を傾げた。
「その方向性はいいけどさ、異世界プリンて、何なの?」
「あ、えっと、異世界に逝ってしまうほど、美味しいって意味だよ」
リコは焦って弁解した。
リコが異世界からやって来て、異世界にて作ったプリンだからこその命名だったが、みんなにとっては勿論、意味がわからない。
書記担当のミーシャも「うーん」と唸る。
「異世界リコプリンは? リコが作ってるのは商品名でアピールした方がいいと思う」
マニも頷く。
「リコを看板娘にした方がいいよね」
巧みなブランディングが練られていた。
屋台のテントはアレキの占い館を借りて、布や看板でリメイクし、可愛いスイーツ感を全開にする。
『~異世界へようこそ~ リコプリン』
絵具を使って描かれた看板に、マニは爆笑した。
「異世界へようこそ」が冠で「リコプリン」が店名となっている。
「なんかインチキくさいっていうか、意味わかんない!」
笑いながらも気に入ったようで、壁に貼ったり眺めたりしている。
リコはこの楽しい雰囲気が、もとの世界の文化祭の準備に似ていて、懐かしく感じていた。
異世界にやって来てから二ヶ月がたち、この世界での生活が忙しく、もとの世界を思い出すことはだんだんと減っている。
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リコはふと故郷を思い出して、久しぶりに寂しい気持ちになっていた。
そんなリコの物憂げな眼差しを、ミーシャはそっと伺っていた。
深夜までプリン会議は熱心に行われて、三人は魔女小屋で眠りについた。
ベッドにマニとミーシャが眠って、リコは床に転がっていた。
毎日が充実して楽しくて、一生懸命な反面、ふとした時にもとの世界を思い出すのと同時に、自分が乗っ取ってしまったこの体の持ち主の魂の行方を考えてしまう。
「ごめんね……」
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