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第一章 リコプリン編
21 金ピカ城にて
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「どひゃ~!」
マニは金色ピカピカ城の中庭で、豪華なプールやテラスに度肝を抜かれた。
金の椅子に金のテーブル、金の浮き輪。
ド派手な様に、ゲラゲラ笑っている。
「悪趣味~!」
葡萄酒色に染まったレオとリコは、マニと一緒にアレキの金ピカ城に招待されていた。
外観も派手だが、中も想像以上に派手だった。
マーライオンならぬ、マーエレファントの像から大量の水が注がれて、リコは茫然と滝行のように頭から浴びている。紫色に染まった全身は、ようやく肌色に戻ってきていた。
隣でバケツの水を被って葡萄酒を落としているレオは、心配そうにリコを伺っている。
「リコさん、酔っ払ってしまったかな……」
葡萄酒が落ちたリコの顔は真っ赤になっていて、フラフラと頭が揺れていた。
マニもリコを覗き込んだ。
「リコってば、さっきは何で逃げなかったの? あんな大男と激突したら、大怪我してたよ!?」
「おばさんが……つかまえてぇ、って……」
「こんな細い手で、止められるわけないじゃん」
リコの無謀な行動に、マニは呆れ返っている。
そしてレオを振り返った。
「それにしても、凄いタイミングで跳ね飛ばしたね。人間があんなに空を飛ぶの、初めて見たよ!」
ワクワクするマニに対して、ずぶ濡れのレオは苦々しい。
「もう少しスマートに捕まえられれば良かったのですが。ああするしか間に合いませんでした」
お手柄の黒猫は、プールサイドで気持ちよさそうにゴロゴロと寝転がっている。
「今日は祭りだ、かんぱ~い! みんな飲め飲め」
ワインを片手に、アレキが賑やかに現れた。
市場で新しく買った仮面を被って、ご機嫌の様子だ。
レオは「うっ」と顔を顰めた。
「何が祭りですか……ワインはしばらく見たくないです」
アレキはお構いなしに、タオルと服をレオに押し付けた。
「そちらのお嬢さんは、お風呂に入っておいで。今、ミーシャが用意してくれたから」
アレキの後ろから、メイドさんの格好をした華奢な女の子が付いてきていた。以前、テントにアレキを迎えに来た少女だ。
マニは興奮して手を上げた。
「私も一緒に、お風呂入る~! だってリコ、酔っ払ってるから溺れちゃうし、あたしが見張るよ!」
リコとマニはミーシャに案内してもらって、金ピカ城の風呂場に向かった。
「どっひゃ~!」
マニは再び、度肝を抜かれた。
豪華絢爛な浴場は温泉施設のように広く、金色の銅像や鏡で飾られていた。大量の湯気は吹き抜けの天井を昇って、青空に抜けていく。
二人は体を洗って湯に浸かると、気持ち良さからしばらく沈黙になった。
そのうちにマニはぼそりと、悪口をこぼした。
「あの占い師、とんでもない成金だね。大金持ちのくせに占いの屋台なんかやって、変人だよ。道楽ってやつ?」
リコはこの世界に来てから初めて浸かった湯に、体がとろけるようだった。
「はぁ……かっこいい」
湯の感想とは思えない譫言がリコから聞こえて、マニは目を丸くした。
「え!? あの占い師が!?」
リコは首を振って、マニはニヤニヤと笑う。
「あのレオって少年だ! 助けてもらったのは二度目だもんね」
気持ちが口に出てしまっている事に気付いて、リコは真っ赤になっていた。
「ち、ちがうよ、そんけいのきもちで……」
マニの笑い声が響く浴室の脱衣室に、ミーシャはタオルや着替えを持って入って来た。
同時にリコとマニが素っ裸で浴室から出て来たので、ミーシャは慌ててタオルを渡した。
「こ、これ、どうぞ」
「ミーシャちゃん、ありがとう」
リコがタオルを受け取ったその時、ミーシャはリコの手を見て、突然、体を固くした。
「ひっ……」
みるみるうちに真っ青になって、ミーシャは震え出した。持っていた籠が床に落ちて、ブラシや香油が盛大な音をたてて、散らばった。
マニは金色ピカピカ城の中庭で、豪華なプールやテラスに度肝を抜かれた。
金の椅子に金のテーブル、金の浮き輪。
ド派手な様に、ゲラゲラ笑っている。
「悪趣味~!」
葡萄酒色に染まったレオとリコは、マニと一緒にアレキの金ピカ城に招待されていた。
外観も派手だが、中も想像以上に派手だった。
マーライオンならぬ、マーエレファントの像から大量の水が注がれて、リコは茫然と滝行のように頭から浴びている。紫色に染まった全身は、ようやく肌色に戻ってきていた。
隣でバケツの水を被って葡萄酒を落としているレオは、心配そうにリコを伺っている。
「リコさん、酔っ払ってしまったかな……」
葡萄酒が落ちたリコの顔は真っ赤になっていて、フラフラと頭が揺れていた。
マニもリコを覗き込んだ。
「リコってば、さっきは何で逃げなかったの? あんな大男と激突したら、大怪我してたよ!?」
「おばさんが……つかまえてぇ、って……」
「こんな細い手で、止められるわけないじゃん」
リコの無謀な行動に、マニは呆れ返っている。
そしてレオを振り返った。
「それにしても、凄いタイミングで跳ね飛ばしたね。人間があんなに空を飛ぶの、初めて見たよ!」
ワクワクするマニに対して、ずぶ濡れのレオは苦々しい。
「もう少しスマートに捕まえられれば良かったのですが。ああするしか間に合いませんでした」
お手柄の黒猫は、プールサイドで気持ちよさそうにゴロゴロと寝転がっている。
「今日は祭りだ、かんぱ~い! みんな飲め飲め」
ワインを片手に、アレキが賑やかに現れた。
市場で新しく買った仮面を被って、ご機嫌の様子だ。
レオは「うっ」と顔を顰めた。
「何が祭りですか……ワインはしばらく見たくないです」
アレキはお構いなしに、タオルと服をレオに押し付けた。
「そちらのお嬢さんは、お風呂に入っておいで。今、ミーシャが用意してくれたから」
アレキの後ろから、メイドさんの格好をした華奢な女の子が付いてきていた。以前、テントにアレキを迎えに来た少女だ。
マニは興奮して手を上げた。
「私も一緒に、お風呂入る~! だってリコ、酔っ払ってるから溺れちゃうし、あたしが見張るよ!」
リコとマニはミーシャに案内してもらって、金ピカ城の風呂場に向かった。
「どっひゃ~!」
マニは再び、度肝を抜かれた。
豪華絢爛な浴場は温泉施設のように広く、金色の銅像や鏡で飾られていた。大量の湯気は吹き抜けの天井を昇って、青空に抜けていく。
二人は体を洗って湯に浸かると、気持ち良さからしばらく沈黙になった。
そのうちにマニはぼそりと、悪口をこぼした。
「あの占い師、とんでもない成金だね。大金持ちのくせに占いの屋台なんかやって、変人だよ。道楽ってやつ?」
リコはこの世界に来てから初めて浸かった湯に、体がとろけるようだった。
「はぁ……かっこいい」
湯の感想とは思えない譫言がリコから聞こえて、マニは目を丸くした。
「え!? あの占い師が!?」
リコは首を振って、マニはニヤニヤと笑う。
「あのレオって少年だ! 助けてもらったのは二度目だもんね」
気持ちが口に出てしまっている事に気付いて、リコは真っ赤になっていた。
「ち、ちがうよ、そんけいのきもちで……」
マニの笑い声が響く浴室の脱衣室に、ミーシャはタオルや着替えを持って入って来た。
同時にリコとマニが素っ裸で浴室から出て来たので、ミーシャは慌ててタオルを渡した。
「こ、これ、どうぞ」
「ミーシャちゃん、ありがとう」
リコがタオルを受け取ったその時、ミーシャはリコの手を見て、突然、体を固くした。
「ひっ……」
みるみるうちに真っ青になって、ミーシャは震え出した。持っていた籠が床に落ちて、ブラシや香油が盛大な音をたてて、散らばった。
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