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第一章 平凡な世界の中で
第三話 推測
しおりを挟む翌朝、俺は岡崎に言われた通り、早く学校に行った。
昨日より早く裏門に着いたのだが、そこから見える自分の教室を見ると、そこには既に窓を開けてこちらを見ている人がいた。俺はあまり目がよくないのだが、基本的にメガネは家と授業中以外はかけないようにしていたので、顔はよく見えなかった。おそらく、岡崎だろう。
(あいつは何時に来てるんだ!)
そう思いながら俺は、教室へ向かった。
教室のドアを開けると、やはりそこには、岡崎がいた。
「おはよー。」
いつもの感じだった。
「お前、早すぎやろ。」
俺らが言うと、岡崎は少し笑って
「はは、でも俺に質問があるんだろ?」
と言って誤魔化した。
「当たり前や。あんな説明で納得するわけないやろ。」
俺は、少し怒った感じで言った。
岡崎は「まぁまぁ」と言いながら質問の内容を聞いて来た。
「んで、質問はなんだ?あんまり答える気はないが。」
「じゃあ、まず昨日も言ったけど、お前は何者なんや?」
岡崎は黙ったままだった。
「なら、質問を変える。お前は、昨日他のほとんどのやつがおもしろくもない答えだったと言った。つまりそれは、他にもお前がおもしろいと思う答えを言ったやつがいるということだ、それは誰なんだ?」
岡崎は暗い雰囲気になっていた。
「確かにいるが、言わ「委員長」な。」
俺は、岡崎が言い終える前にかぶせながら言った。岡崎は驚いていた。
「俺さ、昨日垣根さんにお前のことについていろいろ聞いてみてん。」
そう、それは昨日岡崎が教室を出た後のこと。
「なぁ、垣根さん、垣根さんって確か岡崎と中学一緒やったやんな~」
俺は質問した。
垣根さんは急に聞かれて驚いていたが答えてくれた。
「うん。と言うか、幼稚園から一緒。」
「へぇ~。じゃあさ、仲いいん?」
「そやね。朝もよくしゃべってるし。」
「何で二人ともこの学校来たん?」
俺がこう聞いたのには理由がある。
この学校の名前は桐花台東高校で学力はいいとこ上の下くらいだ。賢い訳ではないが悪くはないし進学率もそこそこ、普通よりは上なんだが少し頑張ればみんなとどく範囲である。俺も友達に誘われたのがきっかけで成績は余裕だったし家からけっこう近い問うことで受けたので受験でそんなに頑張った思い出はない。にもかかわらず岡崎と垣根さんの成績はずば抜けてトップで、入試の結果でももっと上の高校に行けたはずなのだ。
「二人とも家が学校に近かったから。」
まさか自分と同じ理由とは思わなかったので驚いた。しかし、彼女の顔を見ていると、何か別の理由がありそうで、疑問に思ったがここは「へぇ~」と言って。いよいよ、本題に入ることにした。
「あいつってさぁ、性格と言うか雰囲気って言ったら良いのかわからんけど、たまに別人みたいにならへん?」
垣根さんは考えているような感じで黙っていた。
「ごめん。俺の勘違いかもしれへんから気にせんといて。」
俺がそう言うと、あわてて
「あ、いや、そう言うことじゃないんだけど。こんなこと聞かれたの初めてだから。うん。たまに、変わることはあるかな。」
「へ~」
「でも、よく気付いたね。他の人は全然気にしてないのに。」
垣根さんは不思議そうに言った。
「そうかなぁ?けっこう分かりやすいと思うけど。」
「いやいや、すごいよ。幼なじみでも気付いてる人、あたしくらいだもん。」
俺はまた、「へ~」と言いながら次の質問に行った。
「じゃあさ、何か不思議なこと聞かれてたことない?」
「あたしはないかな。でも、びっくりするよね、急に平和ってどういうことかって聞かれたら。あ、他の人には質問してるみたいだよ。あんまり気に入る答えはなかったらしいけど。」
俺は少しこの答えに疑問を持ちながら「ふ~ん」と言った。
気付けば他の人ももうかなり登校してきていた。
「でも、初めてやね。鳥橋くんとこんなにしゃべるの。」
垣根さんは言った。
「そう言えばそうやな。ありがとう。いろいろ教えてくれて。」
俺はお礼を言うと同時にチャイムがなり、岡崎が帰って来た。
ある程度、昨日の垣根さんとのやり取りを言った後、俺は自分の推測を話した。
「ここからは俺の推測やけどあそこで、俺がお前の性格について聞いたとき、垣根さんは昨日お前が見せた反応と同じような反応をしていた。それに、俺は不思議な質問と言っただけで、質問の内容までは伝えてないのに内容を知ってた。お前は質問するときと答えを聞くときわざわざ二人になるのに。まぁ、他の人から教えてもらったって言うのもあるかもしれへんけど、お前の答えに対しての反応まで知ってるのは変やろ。」
ここまで言い終えると、それまで黙って聞いていた岡崎が口を開いた。
「それで、委員長が俺がおもしろいと思う答えを言った人だと?」
岡崎は少し笑いながら言った。
「いや、違うと思う」
俺がそう言うと、岡崎は冷静に「どうして?」と尋ねた。
「俺さ、人間観察が好きやねん。んで、2ヶ月みんなを見てて大体性格とかわかったし、まぁこれも俺の推測でしかないけど、たぶん、垣根さんは嘘が下手なタイプやと思う。だから、お前に質問されてないっていうのは本当のことやと感じた。つまり、あの子は逆にお前と同じ質問する側じゃないかなと思う。だいたい、幼なじみやのに質問されたことないって言うの不思議やしね。それに、いくらクラスで人気のあるお前でも、女子にあんな質問したら引かれるしな。だから、男子にはお前が、女子には垣根さんが質問してたってところやろ。」
「じゃあ、それが正解だったとして、誰が俺のおもしろいと思う答えを言ったと思うんだ?」
岡崎が聞いてきた。
「まぁ、そうやな~。うちのクラスでおもしろい答えを言いそうな子は…なっちゃんかな。」
俺が名前を出したなっちゃんとは多岐奈津子のことで、俺がクラスでよく話す数少ない女子の1人だ。何故よく話すかというとたまたま入学して来たときの席が隣で二人とも同じ音楽歌手が好きだったということと人間観察や雑学、同じ職業に興味があり意気投合したのがきっかけである。成績は優秀で頭の回転もはやい。あと、垣根さんと仲が良く、陸上部のマネージャーだ。
「なっちゃんって多岐さんのこと?」
岡崎は驚きながら言った。
俺は頷くと、「なぜそう思う?」と、岡崎が尋ねた。
「まぁ、勘やな。」
俺がそう言うと、岡崎は不思議そうに「は?勘だと?」と言った。
「そう、勘。いちよう理由を付けるとしたら、良くしゃべってても発想のおもしろいこと言うし、それに俺がクラスで一番心理戦系統で敵にまわしたくないやつ。」
「なぜ?」
「前にポーカーとか人狼ゲームとか一緒にやったことあんねんけど、かなり強かったから。」
「ふ~ん」
「ま、うちのクラスやったらおもしろい答え言うのはなっちゃんくらいやろ。多分、男子はおらんと思うし。他のクラスとか他学年のことはしらんけどなんとなくまだまだ学校にはお前の仲間がおるりそう。誰かはわからんけどな。あとは、お前が普段平和じゃないことに関わってるてことぐらいかな。俺が予想できたのは。これでもお前が隠してる半分くらいやろ?」
俺がそう言い終えると、岡崎は嬉しそうに笑っていた。
「ふふ、ははは。」
「あれ、全然違うかった?」
「違う、そうじゃないんだ。半分どころじゃない、8割位あってるよ。俺は、君を甘く見ていたようだ。まさか、あれだけの情報でここまで当てるとは。」
その後、岡崎は少し考えて。
「うん。わかった。話すよ俺のことについて。」
「え、いいん?」
俺は驚いてそう言うと、
「ああ、あそこまでわかっているならしょうがない。けどその前に……」
と言うと、岡崎はドアの方を見て、
「もう入っていいぞ。」
と言った。
すると、ドアが開いた。
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