上 下
338 / 390
3章 希う大学生編

めげそうな心

しおりを挟む

 ふと悪意が湧いた僕は、朔に意地悪な事を聞く。

「朔、イキたい?」

 これは、自分がイかせてもらえない腹いせだ。このまま扱き続ければ、朔はイッてしまうだろう。イキたくないはずもない。

「ね、朔、一緒にイこ? 八千代ぉ、僕も八千代の手でイかせて?」

 僕は、八千代の手を握って、強引に扱かせる。

「チッくそっ··、お前ドコでンな煽り方覚えてくんだよ」

 文句を垂れながらも、八千代は僕の手を無視してシゴいてくれる。イきそうでイけないもどかしさに、腰がカクカクと小さく振れてきた。
 朔は、もうイきそうだ。朔のを扱く僕の手に添えられた手には、ほんの少しも押し返す力が入っていない。

 僕はお尻を弄ってもらわないと、おちんちんだけじゃなかなかイけないんだけどな。と思っていたら、僕の振れる腰でそれを察した八千代が、アナルの周りを指で撫でた。
 その程度の刺激でイッてしまいそうなほど、僕の身体はおかしくなっている。

 そして、出る···そう思った瞬間、八千代が手を止め、朔は僕の手首を握って止めた。

「へぁ!? ··はぁっ、ふ··んーーーっ····なんれぇ?」

 僕はポロポロと涙を落として問うた。

「フゥーッ··フゥーッ··ダメだ、つってんだろ····」

 歯を食いしばり、荒ぶる息を懸命に抑える朔。僕を睨む目が、獲物を前にした狩人ハンターのそれにしか見えない。
 言葉とは裏腹に、ピクリとでも動けば食い殺される。そう肌が感じて、腰の辺りからゾクゾクしてしまった。

「っぶねぇ··。俺まで流されそうンなったわ」

 ここで寸止めだなんて、あまりにも辛すぎる。僕は、涙に浮かぶ瞳で朔を睨み返し、尖った唇を強引に重ねた。
 少し歯が当たって痛かった。けれど、僕は無我夢中で朔を押し倒し、困惑する朔に舌を差し込む。
 この後どうすればいいのかなんて分からないけれど、朔がそれを拾って絡めてくれるからいいんだ。

「待··結──んっ」

 朔へ馬乗りになって夢中で舌を絡める僕の、突き上げられたお尻を八千代がキスで愛でている。タマとアナルの間の、触られるとゾワゾワして感じちゃう、ちょっとふっくらした所。そこへ、執拗く吸うようなキスをしてまた寸止めをする。
 僕のイライラは収まるどころか激しさを増し、朔に八つ当たりをしてしまう。泣きじゃくりながらのキスなんて、迷惑でしかないよね。

 心の中では『ごめんね』と思うのだが、身体の疼きをどうにもできず悶々とした苛立ちが湧き続ける。そんな僕を見かねた朔は、大きな舌打ちを聞かせて強引に起き上がった。
 押し退けられた八千代は、興奮した朔を見て『面白ぇ』とでも言うように鼻で笑う。チラッと見えたんだけど、凄くワクワクした顔をしていた。何に胸を躍らせているのかは分からないけれど、八千代のそういう表情かおは凄くえっちだ。

 対照的に、朔は少し怖い。
 僕の下手くそなキスでは、朔を誘う事なんてできっこなかったんだ。それどころか、機嫌を損ねてしまった。八つ当たりなのがバレて、腹を立てているのかもしれない。
 そう思ったのだけれど、どうやらそうではないらしい。

「いい加減にしろ。我慢の限界だ」

 そう言って、今度は朔が僕に跨り激しいキスを見舞う。喉の奥を犯す、本気のキスだ。
 僕は何度も嘔吐えづきながら、それでも朔の首を抱き寄せて“もっと”と強請る。朔は、容赦なく喉の奥を舐めようと舌を捩じ込む。
 届くわけがないのだけれど、僕の小さい口を朔の大きな舌で塞がれると、おちんちんを突っ込まれているような感覚に陥る。それで奥をじゅぽじゅぽ突かれるのを想像して、僕は喉を震わせてイッてしまった。

「おい朔、結人イッてんじゃねぇかよ」

「····コイツが悪い」

 朔は口元を腕で拭って言った。そりゃそうだ。あれだけ煽ったのだから、非は僕にある。朔は乗せられてくれただけだ。

「ごめ··なさ····れも、もぉポリエチレンせっくしゅやだぁぁ····」

 ワケが分からなくなった僕は、小さい子供みたいにゴネる。みっともないと分かっていても、溢れ出した感情はどうにも止まらない。

「ポリネシアンな。はぁ····やっぱ結人にはきちぃか」

 朔と八千代が僕の対応に困っていると、扉の方から啓吾のツッコミが入った。

「いやいや、結人だけじゃないかんね? 場野もさっくんも何ヤッてんのよ」

 どら焼きみたいなパンケーキが乗ったお皿を持って、啓吾が扉の枠に寄りかかっていた。パッと見ると、ウェイターさんみたいでカッコいい。

「まぁ、イッたのゆいぴだけみたいだし良くない?」

 ひょこっと顔を覗かせたりっくんが、エプロンの腰紐を解きながら言った。どうやら、僕の朝ご飯ができあがったらしい。
 けれど、身体は悶々とし気持ちがぐちゃぐちゃな僕は、正直朝食どころではない。
 それなのに、八千代がまた僕を追い詰めるような発言を落とす。

「だよな。こっからイかさねぇようにシたらいいだろ。あと、マジで刺激し過ぎんな。可愛すぎだわ」

「あぁ。俺、襲われちまったな」

 僕をイかせて少し満足そうな朔が、ふっと不敵な笑みを浮かべて言った。

「襲ってないもん! 朔のばかぁ!!」

「どう見ても襲ってただろうが」

「俺もゆいぴに襲われたーい♡」

 りっくんは僕を押し倒し、そのまま僕に跨って煽り始めた。

「だぁら煽んなって」

 八千代がりっくんを蹴り倒す。脇腹、折れてないかな。

「んぐぅ····くそゴリラ··、加減しろよ! ったぁ····マジでムリ、アバラ折れてそう····」

「るせぇ。ンなまともに入ってねぇだろ。いーからさっさと朝飯の準備してこいや」

「はぁ!? 俺らゆいぴにご飯持ってきたんですけど!? 啓吾が持ってんの見えねぇのかよ!」

 りっくんは、脇腹を抱えるように押さえたまま喚く。2人の一連のひと揉めが終わるのを傍観して、静かになると啓吾は僕の隣に座った。
 そして、僕の腰を抱きながら、手に持ったどら焼き風のパンケーキを食べさせてくれる。

「ど? 1回イけてちょっとだけスッキリした?」

「ん····してないひへはい

 僕はパンケーキを頬張り、もぐもぐしながらムスッとして答えた。本当は、少しだけ発散できたような気がしている。
 けれど、このフラストレーション製造機みたいな試みを、やめてしまいたいと思っているのも本当だ。

「なぁ、ポリセやめたい? しんどい?」

「······ちょっとひょっほ

「そっか。ならやめる? 別にさ、結人泣かしてまでやりたいわけじゃねぇし」

 僕を見つめる皆の視線で分かる。皆も同じように思っているらしい。寸止め地獄を見舞ったとは思えないほど、穏やかな雰囲気を見せている。
 皆のこういう所、優しいのか意地悪なのか分かんないや。

 僕は、どら焼きと一緒に、ぐちゃぐちゃだった感情を飲み込んだ。

「正直ね、やめたいなって思う。けど、皆が言ってる最終日のっていうのが凄く気になるんだ。せっかくここまで頑張ったんだし、もうちょっと頑張ってみてもいいかなって······でもツラいね」

 僕がにへらと笑うと、啓吾もつられて笑った。そして、僕の背中に手の温もりを置いて言う。

「言うてまだ2日目終わったとこだけどね。まぁ、んじゃ、こっからは本気で真面目に取り組みましょうか?」

 今までは、本気で真面目にやっていなかったのだろうか。だとしたら、まったく困ったものだ。

「そうだね。俺らももっとちゃんと落ち着いて、本来の趣旨に沿ってやってかなきゃだよ。特にゴリラ2人さ、挑む前のランニングやめたら? 余計昂ってんじゃん」

 八千代と朔は顔を見合わせ、声には出さず『確かに』と視線で共感し合っていた。それを可愛いと思える余裕は出てきたようだ。
 僕は、1人だけイッてしまったことを詫びて許しを得た。それから、リビングに移動して食卓につく。

 テーブルには、美しく角を立てた生クリームに蜂蜜がかかった5枚重ねのふわふわパンケーキが。隣に鎮座している苺は、艶々と輝いて見える。
 僕は、それまで抱えていた不満を全て手放し、ナイフとフォークを持って『いただきます♡』をした。

 
しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...