ちっこい僕は不良の場野くんのどストライクらしい

よつば 綴

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3章 希う大学生編

新手の苦難

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 僕の煽りに、意趣返しをしてきた八千代。おかげで、僕のお尻がヒクッとしてお腹の奥がキュンと甘イキしたのは、バレていないだろうか····。

 僕が思わず固まっていると、朔が後ろからそっと肩甲骨に触れた。

「バックで手ぇ引いて奥イジメてると、ここが浮き出るんだ。それがすげぇエロい」

「あー、それ分かるわ。コイツの細さが際立つ瞬間がすげぇエロいんな」

「あぁ。ちぃせぇって言っても機嫌悪くなんなくなったけど、やっぱりまだ気にしてんのか?」

「まぁ、大きいに越したことはないと思ってるよ。けど、皆が居るから、別に僕が大きくなる必要って、もう、ないのかなって··、もぉ、前も言ったでしょぉ····」

 なんだか照れくさくなって、段々と声が小さくなりゴニョゴニョと言葉を誤魔化しながら言った。けれど、僕の声を聞き逃さない2人には、しっかりと聞こえていたらしい。

 朔が僕の肩を引き、コロンと仰向けにさせる。2人が、片方ずつ手を繋ぐから顔を隠せない。

「そう思ってもらえんのは嬉しいな。安心しろ、俺らが一生かけてお前も、お前の大切なものも全部守ってやる」

 大口をたたいているわけではなく、格好つけているのでもなく、純粋にこれから先ずっと実行するつもりで言っているのだろう。朔に限らず、皆がそうなのだから畏れ入る。

「朔··、ありがと。でもね、やっぱり守られてばっかりは情けないから、僕ももっと強くなれるように頑張るよ」

「そういうお前だから、俺らはずっと守ってやりたくなんだよ。で、デケェ俺らは怖くねぇんか?」

「んふっ、今更何言ってんの? 毎日一緒にいたら、背が伸びてるのってわかんないものだよね。いつの間にか大きくなっててさ、ふとした時に気づくの」

「ふはっ··ンだそれ、ガキみてぇ。俺がちっこい時、親戚のババァが会う度に似たようなこと言ってたな。ボケてんだと思ってたわ」

 八千代に口の悪さを注意する。八千代は、ちゃんと最後まで聞いて『説教はもう勘弁な』と言い、僕をまた自分の方へ向かせる。
 そして、好きな所語りが再開した。やはり、僕が感じないよう耐えるという方向性でだ。これは思っているよりも辛い。

 八千代は、鎖骨の外側から内側へすぅーっと指で撫で、そのまま首筋を撫で上げ顎をクイッと持ち上げる。何も言わずに見つめ合い、耐えきれなくなった僕が目を逸らすと、『ちゃんと目ぇ見せろ』と怒られた。
 朔は、いつの間にか座っていて、僕の足を持って愛でている。女子並みに小さい足へ口付けて、スンとにおいを嗅いだ。

「ひゃぁっ! 朔! 嗅いじゃヤダって言ってるでしょ!?」

「そうやって恥ずかしがんのが可愛くて好きなんだよ」

 そこから、僕の全身のにおいを嗅ぎ始める2人。どんどん羞恥心が煽られ、ついに涙が込み上げてきた。

「やべ。おい、泣くなよ」

「結人、次はお前の番な。今日は邪魔しねぇから、俺らの好きなとこ嗅いでいいぞ」

 いつもは、嗅いでいるとすぐに犯されてしまって、なかなか満足いくまで嗅がせてもらえない。それを、今日はゆっくり堪能させてもらえるんだ。

(んへへっ、セックスさまさまだぁ♡)

 胸や首筋、八千代をひっくり返して背中も、匂いの濃い所は熟知している。僕がここぞとばかりに嗅ぐから、流石の2人も少し気恥ずかしくなってきたようだ。
 僕は構わず、腕枕をしてもらった時にコソッと嗅ぐ、腕の付け根の所へ、遠慮なく鼻を埋める。

「ンなとこも嗅ぐんかよ。お前、マジで俺らの匂い好きな」

「て言うか、そんなに俺らにおうのか?」

「良い意味でね。んーっとね、なんだろう····皆それぞれ違う匂いでね、嗅いでると凄く安心できるんだ」

 りっくんと啓吾は良い匂いの香水をつけているが、それよりもやっぱり、2人自身の匂いのほうが好きだ。だから、香水をつけてしまう前、寝る前や朝一番に抱き締めてもらうのが嬉しい。
 姿を見なくても、なんとなく感じる匂いで誰が近くにいるのか分かったりもする。足音で誰か分かるのと同じような感覚だ。
 僕がそう言うと、結構凄い能力なんじゃないかと朔に言われた。朔と八千代は、僕の匂いしか嗅ぎとれないらしい。それはそれで、逆に凄いと思うけどね。

 2人の匂いを堪能し終えると、そろそろ寝ようと言って2人はポジショニングをしだした。
 八千代は僕を後ろから抱き締め、朔が僕の胸に埋もれた。僕は、朔の頭を抱えて眠る。この安心感は何者にも変え難い。

 思っていたよりも、難なく初日を終えられた。1回だけ、甘イキしちゃったけど。もっと、触れられないもどかしさに悶えたり、意地悪をされて苦しくなるものだと思っていたから拍子抜けだ。
 甘くて心が温まる時間を過ごせたのは、おそらくお互いに思わぬ成果だった。それに、これだけずっと一緒に居ても、知らない事がまだまだあるんだと思い知れた。これは僕にとって、とても大きな拾い物だ。
 明日は、キスや軽いスキンシップができる。今日よりももっと、皆の事を知れたらいいな。



 と、翌朝。朝勃ちを腰と膝で感じ、僕は新手の拷問で苦しめられている。
 こんなの狡いや。欲しくなっちゃうじゃないか。

 どうにか抜け出そうと、もぞもぞ身体をよじってみる。けれど、よく窒息しなかったなと思うほど、しっかり抱き締められていて逃げられない。それどころか、硬くて大きいおちんちんが擦れて辛い。

「ぅ゙ー····」

「ふっ····欲しいんか」

 八千代だ。いつの間に起きたのか、耳元で寝起きの低い声を響かせる。

「んぅっ··ばかぁ····」

「これ、乳首におはようのキスもダメか?」

 朔も起きたようだが、まだぽやっとしているらしい。

「良いわけねぇだろ。俺も突っ込むん我慢してんだわ」

「くそ····こんな可愛い胸にキスもできねぇなんて、こんなのクソ喰らえだな。へそもダメか?」

「おーおー、寝ボケてんなぁ。朔さんよぉ、キスは今晩からなんだわ。我慢しろ」

「チッ····」

 寝起きの朔に、この状況はかなり辛いらしい。とってもご機嫌ナナメだ。
 僕は、朔を宥めようと頭を撫でてみる。落ち着いたのか、すぐに眠ってしまった。だけど、おちんちんはおっきしたまま。

「ねぇ八千代、先っちょだけでもダメなの? 八千代のおちんちん、ちょっとでもいいから欲しい····」

「··ッ、アホか、ダメに決まってんだろ。バカじゃねぇの、挿れそうンなっただろうが。可愛く強請ってんじゃねぇ」

 八千代がバカみたいに焦っている。これは面白いけれど、やはり挿れてはもらえないらしい。くそぅ····。

「つぅかお前さ、朝勃ちしねぇの? ほとんど見たことねぇけど」

 しないわけではない。八千代にハジメテを奪われて暫くは、そういう現象も時々あった。元々、あまり経験はないけれど。
 最近は、勃つよりもお尻が寂しいことのほうが多い。なんて言うと、本当にこのまま犯されそうだ。
 ······言ってしまおうか。

「はぁ····誰の所為だと思ってんの? 八千代のばぁか····」

「あ? ンだよ、ケツのほうが疼くんか」

 図星だ。どうして分かったのだろう。
 恥ずかしさが爆発的に込み上げる。僕の首に絡められた八千代の腕を、ギュッと強く握る様に掴んだ。

「なっ、バッ··バァァァァァッカ! そんなわけないでしょ! 僕だって男なんだから朝勃ちくらいするもん。すーっごい勃つんだからね!」

「ブハッ····いていてぇ。つかすっごい朝勃ちってなんだよ。アホ丸出しじゃねぇか」

 八千代が肩を震わせて笑っている。まったく、僕が男として機能してないみたいな言い方して、本当に失礼なんだから。
 けどまぁ確かに、雄としてより雌としての自覚のほうが強い気がしなくもない。それに、今のは完全に僕がバカだったとは思うけどさ。

「ん゙ー··なに騒いでんだ。うるせぇ····」

「だって! 八千代が意地悪言ってくるんだもん!」

「はは、怒ってる結人も可愛いな」

「もーっ! 僕怒ってるんだよ!?」

 今度こそ朔が目を覚ましたので、僕は2人の腕から抜け出した。そして、朝勃ちへの文句を置いてリビングへ向かう。

 りっくんが1斤丸々のハニートーストとコンポタを用意してくれていた。夕べ、精神を擦り減らしたであろう僕への労いらしい。
 それならば、色々と我慢していた皆だって同じじゃないか。なので、僕は皆にコーヒーを入れて労う。

「ねぇゆいぴ、ポリセ初日はどうだった?」

 僕は感想を述べ、続けてクレームにも近い不満を伝える。触れられない辛さはお互い様だとしても、朝勃ちで誘惑するなんて卑怯だと。
 りっくんと啓吾は笑っていたが、笑い事じゃないやい。先っちょだけ欲しいだなんて、まるでビッチみたいな事を口走ってしまったじゃないか。
 と思ったのだけれど、普段からそれらしい事を言っている気がして、少し気持ちがすんとした。

 さて、2日目の今夜は、どんなもどかしさが待っているのだろうか。楽しみと憂鬱が半々くらいで、夜を迎えるのが複雑な気分だ。

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