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3章 希う大学生編
無理ゲーでしょ
しおりを挟む事のきっかけは、縛られた僕に全員が興奮し、滅茶苦茶に犯しまくったアレだった。縛られた僕を見て、興奮しすぎたと反省したようなのだ。特に朔が。
途中、縄を引いて首を絞めた啓吾も、毎度の事ながら加虐性が暴走したと後悔していた。暫く首に残った痕へ、毎日唇を這わせて謝ってくれたのだ。
気持ち良かったから、何も気にしなくていいと思うんだけどな。
僕がどれだけ滅茶苦茶にシてもいいと言ったところで、皆は気になるらしい。今更すぎる気もするが、話を聞いて何となく思った事がある。いつもと違う事をシたいんじゃないかな、と。
首の痕が薄れた頃、啓吾がある提案を持ち出した。それを聞き、僕はまた頭上に疑問符を浮かべまくる。
「ポリエチレン····セックス? えっと、ポリ袋とか被ってするの? 危なくない?」
「ブフォッ」
優雅にコーヒーを啜り、啓吾の話をふむふむと聞いていた朔が吹き出した。
「ぶはっ····。ちげーよ。ポリネシアンセックスな」
啓吾が笑いを堪えながら説明してくれる。とにかく、ゆっくりとお互いを感じるセックスするんだそうだ。要領は次の通りである。
1日目は裸になり、お互いの身体をじっくり堪能しながらコミュニケーションをとる。身体のイイ所を褒め合ったり、より深く知るだけに留める。
初日は性的な接触は禁止。観察とコミュニケーションを楽しんだら、そのまま抱き合って眠るんだろうだ。
僕は、誰と抱き合って寝るのだろう。また争奪戦が勃発するのかな。
2日目も1日目と同じ様に、全裸でコミュニケーションを楽しむ。けど、軽いキスやスキンシップはしていいそうだ。
特に、全身へのキスを用いた愛撫が推奨されてるんだとか。だけど、おちんちんやアナル、性感帯への愛撫はまだ禁止。全身が性感帯の僕に、誰も触るなって事なのかな。
触れ合いを堪能したら、また抱き合って眠るんだって。と言われても、触れ合うところから難しいんだけどな。
3日目は1日目のルーティンからスタート。舌を絡めるようなキスや性感帯への愛撫が許される。けど、軽めになんだって。本格的な激しい愛撫や、性器への刺激はまだ禁止だそうだ。
2日目の時点で思ってたけど、結構キツそうだよね。普段からスキンシップが激しいんだもの。
ここから本番への気持ちが昂ってくるらしいけど、絶対1日目から爆発寸前だよ。それを抑えて落ち着いたら、また抱き合って寝るって言うけど····落ち着くなんてムリじゃないかな。
4日目、また1日目のルーティンから。ここで、漸く大きな飛躍だ。おちんちんやアナルへの軽い愛撫と、性感帯への本格的な刺激ができるようになる。
イッちゃうのはまだダメで、どんなに歯痒くとも絶対寸止めなんだって。慣れてると言えば慣れているけれど、辛さもよく知っている。十中八九、八千代が担当しそうだ。これが1番嫌かもしれない。
これを堪能した後は、徐々に刺激を弱めていき、最後はまた抱き合って····以下略でいいや。
待ちに待った5日目。えっちが解禁される。多分、僕はこの日に犯し殺されちゃうんだよね。流石の僕でも分かるよ。
やはり1日目のように互いに全裸で向き合い、軽いキスや愛撫から始めるていく。これはいつも通りだろうけど、雄みと昂りが尋常じゃなさそうだ。
だけどここでは、どれだけ感情を抑えられるかがポイントらしい。えっちはゆっくりじっくりと。急な刺激をせず、激しくもしないで時間をかけてお互いを堪能する。って、激しくしかもないえっちだなんて皆にできるわけがないよね。
徐々に刺激を強めて1時間以上は愛撫を続け、お互いの気持ちが最高潮に達したらいよいよ挿入へ。多分、朔と啓吾は秒で最高潮なんだろうけど。1時間と1秒で挿れちゃいそうだ。
これは、りっくんと八千代が好きな焦らしプレイってやつだよね。愛撫だけで何時間って弄ばれたことがあるから、これは大丈夫そうだ。
肝心なのは、挿入から30分は動かず抱き合って、挿入ってる感覚を味わうんだって。そうして、気持ちを高めるらしい。
動き始めてからも腰使いは激しくせず、ゆっくり動きながら快感を堪能していく。で、じっくりやってイッたら、後はお互いが満足するまで性行為を堪能する。
これって、全員と同じ事をするのかな。難しくない?
えっちが終わった後も挿れたままにして、そのまま後戯をして抱き合ったまま寝る。後戯ってなんだろう。
不安要素が盛り沢山で、到底成功する気なんてしないんだけど、皆は何故だかノリ気でワクワクしている。
「要は、日にちをかけたスローセックスだな」
朔が、僕の頬に手を添えうっとりと見つめながら言う。
朔の口から飛び出す、セックスというパワーワードに未だ慣れない。僕は耳まで熱くなって、目を合わせていられずパッと俯く。
(ほっぺ触るだけでも充分えっちなんだけど、これは性的な接触じゃないのかな····)
「ねぇ、1日目は僕が感じちゃダメって事?」
「あぁ~··うーん··、初っ端から難しいね」
「結人、俺らがどこをどう触っても感じちゃうもんな」
「よく躾られてるな」
「さっくぅん、イイ顔で言ってるけどコレ大問題だかんね? 初日から詰んでんだよ?」
「あぁ、そうか。困ったな」
「とりあえずさ、できるトコまでやってみたらいーんじゃね? それぞれで分担するとかさ、イイ感じに結人回しながらやればいけそうじゃん?」
「だね。実践あるのみだよ」
こうして、夏季休暇直前でこれを実行する事になった。下準備として、えっちな触れ方をしないように頑張るという皆。無駄な気がするんだけどなぁ····。
最近は、激しいえっちを控えている。それも、ポリネシアンセックスへ向けての準備だと言い、連日甘いだけのえっちに蕩けていた。
しかし、いきなり100から0へ落とすのはキツい。きっと、それが本音だろう。僕だってそうだ。
甘さの中に、今は痛いのも苦しいのもない。満たされないわけじゃないけれど、どこか物足りなさを感じていた。
皆は思い切り発散できない所為で、フラストレーションが溜まっているようだ。だって、皆歯を食いしばって、必死に柔らかく触れている気がするんだもの。
来週には挑戦が始まるというのに、聞いた手順を踏んで大丈夫なのだろうか。こんな調子だと、初日から爆発しないか心配だ。
そして、ソワソワしっぱなしの僕は、可愛いが過ぎるとりっくんから八つ当たりを受けた。あまりに理不尽だ。
「ねぇ、やっぱり無理してやらなくていいんじゃない? 僕、いつも通りの皆がいいよ」
「ん゙····そりゃ分かってんだけどさ、ここまで来たらやってみたい欲が勝つんだよな。結人も味わってみたくない? 最終日の超気持ちいいやつ」
「まぁ··それは気になるけどさ····」
僕はいつだって、心まで満たされているんだけどな。皆も、満たされていないわけじゃないのは分かっている。本当に、ただの好奇心なんだってことも。
けど、挑戦を始めた直後から皆の本能が暴走するのを確信しているから、少し怖くもある。僕は、このバカげた挑戦を実行していいものか、当日まで悩むんだろうな。まったく、くだらない悩みだ。
「なーに難しい顔してんの」
啓吾が頬をつついてくる。人が真剣に悩んでいるというのに、緊張感の欠片もない。
「皆さ、僕のこと滅茶苦茶にできないの、ストレスになってない?」
皆は口を揃え、ストレスになどなっていないと言う。むしろ、後悔の念に駆られているらしい。
日に日にエスカレートしていく欲求のぶつけ方や、心配になるほど順調な開発具合に、触れ方を抑えることで改めて気づき青ざめたのだとか。
本当におバカばっかりなんだから。今更すぎてかける言葉もない。何回目だよって話だ。
「もっと大事にしたいのにね。ゆいぴが可愛すぎてさ、それも受け入れてくれちゃうからさ、どう頑張っても抑えらんないんだよ」
「それな。結人見てっとさぁ、俺ん中の良くない感情が引っ張り出されんだよね。なんかさ、すげぇ傷つけて可愛がってブッ壊したくなんの」
「それが出た時にコイツが悦んでんのが分かっから、余計潰したくなんだよな。マジで危ねぇわ」
「そうだな。結人にはもう少し色々と慣れてもらいてぇな」
皆、団結して言いたい放題だ。慣れないのは申し訳ないけど、慣れる気がしないんだもん。しょうがないじゃないか。
僕が唇を尖らせていると、啓吾が閃いたかのように声をあげた。
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