227 / 387
2章 覚悟の高3編
嵩原さんは悪い王子
しおりを挟むダメだ、考えが纏まらない。この状況で笑っているなんて、嵩原さんの正気を疑ってしまう。
それに、思いのほか力が強くて振り解けない。女の子に力負けするなんて、あまりにも情けなくて泣けてくる。
ほんの束の間、僕が意気消沈していると、嵩原さんがズボンのファスナーを指で摘まんだ。これは絶対にマズい。初めましてでやる気満々じゃないか!
「たたた嵩原さん!? 何してるの!?」
「武居くんってどっち? って聞くまでもないか。受けだよね?」
僕の声は聞こえていないようだ。そして、1人で話を進めてしまう嵩原さん。
「君のセキュリティ、秒で来るらしいからさっさと行動しなきゃね。ねぇ、こっちはハジメテ?」
僕のおちんちんを取り出し、手に乗せて軽く握る。
「ひぁっ····」
「わぁ··。可愛い声。やっぱり武居くんならいけそうだな」
僕の肩を持ち、クルッと半回転させると戸棚に叩きつけられた。
「ひゃぁっ」
恐怖のあまり声が上擦る。それこそ、女子みたいな声を上げてしまった。
身体が強ばって動けない。嵩原さんは、しゃがんで僕のおちんちんを再び手で包む。そして、パクッと食べてしまった。
「ひゃぁぁぁ!!? 嵩原さん! ダメッ、やだっ、待って!! んぅっ、待ってぇ····」
へっぴり腰になり、嵩原さんの頭を手で押し返すがビクともしない。嵩原さん、強すぎだよ····。
「ん、おっきくなってきたねぇ····んふっ、可愛い」
それは、僕の反応がだろうか。それとも、サイズの話だろうか。なんて聞く余裕はない。けれど、なんとかイクのは耐えた。
「武居くん、女の子に興味ないの? 抱かれる側でいいの?」
「んっ··やぁっ····」
おちんちんを扱きながら話をされても困る。答えられないじゃないか。
この後も暫く質問責めにあったが、イクのを我慢するのに精一杯でひとつも答えられなかった。
「そろそろかなぁ····」
「んぃっ、イ、イかないよ····?」
「あはっ、違うよ。そろそろセキュリティが来る頃かなぁって。それに、イカさないようにシてるからね。あぁ、イかせてほしい?」
「ほ、ほしく··ないっ··もん」
僕がそう言うと、嵩原さんはまた僕のを咥えた。それと同時に、倉庫の扉が叩かれる。猪瀬くんと啓吾だ。
けど、ダメだ。強く吸われると我慢できない。
「んあぁっ····嵩原さんっ、離してぇ!」
「ん、出して」
「んあぁっ····」
嵩原さんに吸い取られて、僕はその場にヘタりこんでしまった。嵩原さんは、『ご馳走様』と言って自ら倉庫を出ていく。何がしたかったんだよぅ····。
嵩原さんと入れ違いに、啓吾と猪瀬くんが入ってくる。
「今の嵩原さんだよな? なんかされたの?」
啓吾が僕に駆け寄り、振り向きながら聞く。
「しゃぶっ、しゅ····吸いとられたぁ····」
「へ····? えぇ!?」
事情を話し、僕は啓吾に泣きつく。怖かったのと情けなかったのとで、僕は暫く立ち直れなかった。
告白をされたわけでもない。ただ、食われただけだ。それから数日、嵩原さんからは何のアクションもない。あれは、夢だったのだろうか。
「ゆいぴ、またボーッとしてる」
「相当ショックだったんだろう。俺たちが行った時も、情けないって····んふっ、可愛く泣いてたしな」
「おい朔、笑ってやんなや。しっかし····ンでだろうな、全然妬けねぇの」
「んなの決まってんじゃん。結人が別ベクトルでヘコんでるからだろ」
この緊急事態に、何を皆して笑ってくれているんだ。僕はとても傷ついているんだぞ。そもそも、襲われたんだぞ。
女の子に好きなようにされ、何をかは分からないが可愛いと言われ、彼氏に女の子が怖かったと泣きついたんだ。尊厳だとか、そういう次元じゃない。
「あぁ、ヤッてても上の空だしな。それだけは困るな」
「それでもいつも通りヘロヘロにはなってるけどね。暫くそっとしといてあげたほうがいいんじゃない? 向こうも何も言ってこないし」
優しさのつもりかは知らないが、それ以前に教室でなんて話をしているのだろう。りっくんのバカ····。
「ねぇ、ボクの所為で落ち込んでるの?」
「「うわぁっ」」
りっくんと啓吾の背後から、突如として嵩原さんが現れた。僕は直視できず、ササッと朔の後ろに隠れた。
「あからさまに怯えないでよ。もういきなり食べたりしないからさ」
「テメェ、よくのこのこと敵陣に乗り込めんな。取り巻きはどうしんだよ」
「あぁ····あの子たちなら、今頃空き部屋で寝てるんじゃないかな」
「まだそういう事ヤッてたんかよ。で、男嫌いのテメェがなんで結人狙ってんだよ」
八千代がズバリ切り込む。
「あれ、言ってなかったっけ? ごめんごめん。んー··武居くんはさ、どの女の子よりも愛らしいじゃないか。君らもそう思ってるんだろ?」
「そこだけは共感してやる。けど、結人は絶対にやらねぇ。それに、二度と触らせねぇ。結人がどれだけ傷ついてると思ってるんだ」
朔が僕の腰を抱き寄せながら言う。皆して笑っていたけど、一応は怒っていたんだね。
「別に、武居くんと付き合いたいとかは思ってないんだよね。お友達でいいんだ。ただ、僕の気持ちが昂った時だけ食べさせてくれれば。彼氏くん達には、コソッと内緒でバレないようにするから安心しなよ」
おっと、とんでもない事を言い出したぞ。皆もポカンとしている。そりゃそうだ。これまでにない、斬新なお友達付き合いを求められているのだから。
あまりにもビックリしすぎて言葉が出ない。けれど、呆気に取られたまま啓吾が話し始めた。
「えーっと? 結人のこと好きなんだよな?」
「うん、好きだよ」
「宣戦布告は?」
「面白そうだったからしてみただけ。別に、付き合うとかはいいよ。浮気だなんだって、騒がれるのも面倒だし」
思っていたより最低なタイプなのか。僕は、どうしてこうも女の子を弄ぶような人にばかりモテるんだ。
「あのさ、結人に抱かれたいとか思ってたんじゃねぇの?」
「あっはは! 1ミリも思ってないよ。ボクは可愛がる方が好きだからね。まぁ、それで武居くんのもっと可愛い所が見れるなら、シてみてもいいけど」
嵩原さんは妖艶な笑みを浮かべる。啓吾が言っていた、エロい微笑みだ。確かに、これは男女問わずオチてしまいそうなのは分かる。
待って、それどころじゃない。爆弾発言をいくつも投下しているじゃないか。処理しきれていないのだが。
しかし、嵩原さんは言うだけ言って満足したのか、ひらひらと後ろ手に手を振って行ってしまった。可愛がった女の子達を迎えに行くんだそうだ。
「アイツ、思ってた以上にやべぇな。卒業まで気ぃ抜けぇじゃねぇかよ····」
八千代がゲンナリして言う。僕は仔犬のように震えて、朔にしがみついたまま返す。
「僕、絶対皆から離れない」
「めっちゃ怯えてんじゃん。可愛いな~」
「啓吾のばぁか····ばぁかばぁぁか」
「めっちゃバカ言われる。かわよ~」
啓吾の腰にパンチを入れて、教室に帰るよう言ってやった。めちゃくちゃ笑いながら戻っていくから、僕の苛立ちは全くおさまらないままだった。
放課後、新居について藤さんから話があると呼ばれて行った。そこには、何故か嵩原さんが居た。
「あれ? 高校生がこんな所に何か用事?」
「お前こそ、なんで居んだよ」
八千代が威圧感を放って聞く。嵩原さんは動じず、ここでも爆弾発言を落とした。
「だってここ、父の事務所だから」
「「「「「は?」」」」」
僕たちは目を点にして言葉を失った。
聞くと、嵩原さんのご両親は離婚していて、“嵩原”というのは母親の姓らしい。今日はこの後、藤さんと食事に行くから迎えに来たんだそうだ。
世間って狭いな。そう思わざるを得ない偶然だ。
僕たちは新居の話を終え、そそくさと帰ろうとする。が、嵩原さんが啓吾を捕まえてしまい帰れない。
「そんなに急いで帰らなくてもいいでしょ。ちょっと、お話しようよ」
啓吾の襟首を掴み、ニコッと微笑む嵩原さん。僕は少し、嵩原さん恐怖症を発症しているかもしれない。だって、腰から身震いがして止まらないんだもの。
11
お気に入りに追加
642
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる