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2章 覚悟の高3編

嵩原さんは悪い王子

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 ダメだ、考えが纏まらない。この状況で笑っているなんて、嵩原さんの正気を疑ってしまう。
 それに、思いのほか力が強くて振り解けない。女の子に力負けするなんて、あまりにも情けなくて泣けてくる。
 ほんの束の間、僕が意気消沈していると、嵩原さんがズボンのファスナーを指で摘まんだ。これは絶対にマズい。初めましてでやる気満々じゃないか!

「たたた嵩原さん!? 何してるの!?」

「武居くんってどっち? って聞くまでもないか。受けだよね?」

 僕の声は聞こえていないようだ。そして、1人で話を進めてしまう嵩原さん。

「君のセキュリティ、秒で来るらしいからさっさと行動しなきゃね。ねぇ、こっちはハジメテ?」

 僕のおちんちんを取り出し、手に乗せて軽く握る。

「ひぁっ····」

「わぁ··。可愛い声。やっぱり武居くんならいけそうだな」

 僕の肩を持ち、クルッと半回転させると戸棚に叩きつけられた。

「ひゃぁっ」

 恐怖のあまり声が上擦る。それこそ、女子みたいな声を上げてしまった。
 身体が強ばって動けない。嵩原さんは、しゃがんで僕のおちんちんを再び手で包む。そして、パクッと食べてしまった。

「ひゃぁぁぁ!!? 嵩原さん! ダメッ、やだっ、待って!! んぅっ、待ってぇ····」

 へっぴり腰になり、嵩原さんの頭を手で押し返すがビクともしない。嵩原さん、強すぎだよ····。

「ん、おっきくなってきたねぇ····んふっ、可愛い」

 それは、僕の反応がだろうか。それとも、サイズの話だろうか。なんて聞く余裕はない。けれど、なんとかイクのは耐えた。

「武居くん、女の子に興味ないの? 抱かれる側でいいの?」

「んっ··やぁっ····」

 おちんちんを扱きながら話をされても困る。答えられないじゃないか。
 この後も暫く質問責めにあったが、イクのを我慢するのに精一杯でひとつも答えられなかった。

「そろそろかなぁ····」

「んぃっ、イ、イかないよ····?」

「あはっ、違うよ。そろそろセキュリティが来る頃かなぁって。それに、イカさないようにシてるからね。あぁ、イかせてほしい?」

「ほ、ほしく··ないっ··もん」

 僕がそう言うと、嵩原さんはまた僕のを咥えた。それと同時に、倉庫の扉が叩かれる。猪瀬くんと啓吾だ。
 けど、ダメだ。強く吸われると我慢できない。

「んあぁっ····嵩原さんたかはりゃしゃんっ、離してぇ!」

「ん、出してらひへ

「んあぁっ····」

 嵩原さんに吸い取られて、僕はその場にヘタりこんでしまった。嵩原さんは、『ご馳走様』と言って自ら倉庫を出ていく。何がしたかったんだよぅ····。
 嵩原さんと入れ違いに、啓吾と猪瀬くんが入ってくる。

「今の嵩原さんだよな? なんかされたの?」

 啓吾が僕に駆け寄り、振り向きながら聞く。

「しゃぶっ、しゅ····しゅいとられたぁ····」

「へ····? えぇ!?」

 事情を話し、僕は啓吾に泣きつく。怖かったのと情けなかったのとで、僕は暫く立ち直れなかった。
 告白をされたわけでもない。ただ、食われただけだ。それから数日、嵩原さんからは何のアクションもない。あれは、夢だったのだろうか。



「ゆいぴ、またボーッとしてる」

「相当ショックだったんだろう。俺たちが行った時も、情けないって····んふっ、可愛く泣いてたしな」

「おい朔、笑ってやんなや。しっかし····ンでだろうな、全然妬けねぇの」

「んなの決まってんじゃん。結人が別ベクトルでヘコんでるからだろ」

 この緊急事態に、何を皆して笑ってくれているんだ。僕はとても傷ついているんだぞ。そもそも、襲われたんだぞ。
 女の子に好きなようにされ、何をかは分からないが可愛いと言われ、彼氏に女の子が怖かったと泣きついたんだ。尊厳だとか、そういう次元じゃない。

「あぁ、ヤッてても上の空だしな。それだけは困るな」

「それでもいつも通りヘロヘロにはなってるけどね。暫くそっとしといてあげたほうがいいんじゃない? 向こうも何も言ってこないし」

 優しさのつもりかは知らないが、それ以前に教室でなんて話をしているのだろう。りっくんのバカ····。

「ねぇ、ボクの所為で落ち込んでるの?」

「「うわぁっ」」

 りっくんと啓吾の背後から、突如として嵩原さんが現れた。僕は直視できず、ササッと朔の後ろに隠れた。

「あからさまに怯えないでよ。もういきなり食べたりしないからさ」

「テメェ、よくのこのこと敵陣に乗り込めんな。取り巻きはどうしんだよ」

「あぁ····あの子たちなら、今頃空き部屋で寝てるんじゃないかな」

「まだそういう事ヤッてたんかよ。で、男嫌いのテメェがなんで結人狙ってんだよ」

 八千代がズバリ切り込む。

「あれ、言ってなかったっけ? ごめんごめん。んー··武居くんはさ、どの女の子よりも愛らしいじゃないか。君らもそう思ってるんだろ?」

「そこだけは共感してやる。けど、結人は絶対にやらねぇ。それに、二度と触らせねぇ。結人がどれだけ傷ついてると思ってるんだ」

 朔が僕の腰を抱き寄せながら言う。皆して笑っていたけど、一応は怒っていたんだね。

「別に、武居くんと付き合いたいとかは思ってないんだよね。お友達でいいんだ。ただ、僕の気持ちが昂った時だけ食べさせてくれれば。彼氏くん達には、コソッと内緒でバレないようにするから安心しなよ」

 おっと、とんでもない事を言い出したぞ。皆もポカンとしている。そりゃそうだ。これまでにない、斬新なお友達付き合いを求められているのだから。
 あまりにもビックリしすぎて言葉が出ない。けれど、呆気に取られたまま啓吾が話し始めた。

「えーっと? 結人のこと好きなんだよな?」

「うん、好きだよ」

「宣戦布告は?」

「面白そうだったからしてみただけ。別に、付き合うとかはいいよ。浮気だなんだって、騒がれるのも面倒だし」

 思っていたより最低なタイプなのか。僕は、どうしてこうも女の子を弄ぶような人にばかりモテるんだ。

「あのさ、結人に抱かれたいとか思ってたんじゃねぇの?」

「あっはは! 1ミリも思ってないよ。ボクは可愛がる方が好きだからね。まぁ、それで武居くんのもっと可愛い所が見れるなら、シてみてもいいけど」

 嵩原さんは妖艶な笑みを浮かべる。啓吾が言っていた、エロい微笑みだ。確かに、これは男女問わずオチてしまいそうなのは分かる。
 待って、それどころじゃない。爆弾発言をいくつも投下しているじゃないか。処理しきれていないのだが。
 しかし、嵩原さんは言うだけ言って満足したのか、ひらひらと後ろ手に手を振って行ってしまった。可愛がった女の子達を迎えに行くんだそうだ。

「アイツ、思ってた以上にやべぇな。卒業まで気ぃ抜けぇじゃねぇかよ····」

 八千代がゲンナリして言う。僕は仔犬のように震えて、朔にしがみついたまま返す。

「僕、絶対皆から離れない」

「めっちゃ怯えてんじゃん。可愛いな~」

「啓吾のばぁか····ばぁかばぁぁか」

「めっちゃバカ言われる。かわよ~」

 啓吾の腰にパンチを入れて、教室に帰るよう言ってやった。めちゃくちゃ笑いながら戻っていくから、僕の苛立ちは全くおさまらないままだった。


 放課後、新居について藤さんから話があると呼ばれて行った。そこには、何故か嵩原さんが居た。

「あれ? 高校生がこんな所に何か用事?」

「お前こそ、なんで居んだよ」

 八千代が威圧感を放って聞く。嵩原さんは動じず、ここでも爆弾発言を落とした。

「だってここ、父の事務所だから」

「「「「「は?」」」」」

 僕たちは目を点にして言葉を失った。
 聞くと、嵩原さんのご両親は離婚していて、“嵩原”というのは母親の姓らしい。今日はこの後、藤さんお父さんと食事に行くから迎えに来たんだそうだ。
 世間って狭いな。そう思わざるを得ない偶然だ。

 僕たちは新居の話を終え、そそくさと帰ろうとする。が、嵩原さんが啓吾を捕まえてしまい帰れない。

「そんなに急いで帰らなくてもいいでしょ。ちょっと、お話しようよ」

 啓吾の襟首を掴み、ニコッと微笑む嵩原さん。僕は少し、嵩原さん恐怖症を発症しているかもしれない。だって、腰から身震いがして止まらないんだもの。

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