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2章 覚悟の高3編
sweetday・後編
しおりを挟むお次は啓吾だ。ワクワクしながら連れてこられたのはプラネタリウム。啓吾の無邪気な笑顔は昼間でもキラキラして眩しいのだけど、なんて恥ずかしい事が頭を過ぎる。
それにしたって、啓吾がプラネタリウムだなんて意外だ。気になったので星が好きなのかと聞いたら、斜め上の答えが返ってきた。
「俺? 別に興味ないよ。ここだったらさ、ずーっと結人見とけんじゃん? 結人は星とか好きだろ。目ぇキラキラさせながら星観てる結人、超可愛いもんな。そういう結人見てんのが好き。ここマジで一石二鳥過ぎじゃねぇ?」
「えー····。啓吾も星観ようよぉ」
「ははっ、見る見る。結人見る合間に観るよ~」
観る気なんてサラサラないような返事をしながら、啓吾は僕の肩を抱いて歩き始める。あれよあれよと席に着き、静かに幻想の世界へと融けてゆく。
最近のプラネタリウムは凄い。カップルで寛げる、ベッドタイプの席があるのだ。いつものように寄り添いながら寝転んで、僕1人天井を見上げる。
ほっぺをくっつけ、時々唇を触れさせては僕を見る。まったく星に集中できない。僕に構ってばかりで、星を観ようともしない啓吾。凄く満足そうだけど、段々腹が立ってきた。
だから不意をついて、啓吾の方を向いてキスをしてやった。啓吾は一瞬驚いたが、チャンスと言わんばかりに舌をねじ込んできた。完敗だ。むしろ、キスだけで終わってくれてよかった。
因みに、僕と啓吾以外は外でお茶をして待っていると言っていた。3人でベッドに····っていうのも少し見てみたい気もする。絶対に面白い絵面だろう。
上映が終わり、館内がまだ薄暗い中。キスをしながら手に箱を持たせてくれたんだけど····。
ドキドキしながら蓋を開け、中身が見えた瞬間そぅっと閉じて鞄にしまった。ノーコメントだ。
啓吾からのプレゼントは首輪だった。前にチラッと話題に出た事があったが、本当に着けさせる気だったんだ。
皆に話すと、りっくんが笑いながら『今度着けようね』と言った。朔と八千代も、無論着けさせる気らしい。僕の彼氏は皆、紛うことなき変態だ。
けれど僕もまた然り。ちょっとだけ期待しているなんて、恥ずかしいから絶対に言ってあげない。
最後は八千代。まずはプレゼントを選べと言われた。3ヶ月ほど悩み、迷いすぎて決められなかったらしい。即断即決の八千代なのに、珍しい事もあるものだ。
暫くショッピングモールをウロついて、僕の目に止まったのはピアスだった。八千代が着けている、トカゲのピアス似た蛇のピアス。
「お前、まだ穴空けてねぇだろ。つぅかお前が蛇って····イメージねぇわ」
「けど、これカッコイイ····」
「まぁ、デザインはイイな。けど今は別のにしとけ。空けたら買ってやっからよ」
「····はーい」
「あからさまにヘコむなよ。ほら、顔上げろ。何か着けてぇんならこっちは?」
そう言って見せられたのは、シルバーで小ぶりなイヤーカフ。表面がゴリゴリしていてカッコイイ。
「わぁ····うん、それにする! あっ、けど····僕、そんなカッコイイの似合うかな?」
「ンな心配要らねぇよ。このまんまでも問題ねぇけどな、もっと似合うようにしてきてやっから待ってろ」
そう言って、商品を持ってレジに向かうご機嫌な八千代。えらく時間がかかっていると思ったら、何やら加工をしてもらっているようだ。
暫く店の外で待つ。戻ってきた八千代が見せてくれたそれには、外側に慎ましく『mine』と彫ってあった。八千代らしいストレートな表現だ。
そして、八千代がそれを左耳に着けてくれた。それから八千代は、耳元に唇を寄せてこう言った。
「左に着けてろよ。絶対右には着けんな」
「ひぁっ··ひゃいっ」
絶対に左····ってことは、左耳用の物なのだろうか。よく分からないけれど、八千代がそう言うのならそうしよう。
耳に少しの違和感を抱きながら、次はゲーセンへ向かう。収穫祭をするらしい。
皆、僕が欲しい物を面白いくらいに取ってくれる。なんだか、八千代の言う“初めてのデート”を思い出して頬が緩んだ。あの時の僕に、こんな幸せな未来が想像できただろうか。
「おい、次····ん? どした? そのぬいぐるみ、ンなに嬉しかったんかよ」
ニヤけている僕を見て、八千代が頭を撫でる。八千代の方が嬉しそうに見えるのは、僕の気のせいだろうか。
「あのね、初めてここに来た時の事思い出したの。僕たちの初めてのデートなんでしょ」
皆に聞こえるとヤキモチを妬いてしまうと思い、こっそり八千代に耳打ちした。すると、僕の側頭部をガッシリと押さえ、そっと優しいキスをくれた。
僕の彼氏たちは、一様に場所を弁える事を知らないらしい。けれど、疾る鼓動が煩いくらい頭に響く所為で、人の目なんてどうでもよくなってしまう。
「お前、マジで可愛いな。今ここで抱きてぇ」
「ば、ばかぁ····」
「はーい、ゲーセンでイチャつかないでください~」
「ここで抱きたいのは場野だけじゃないんだからね」
「俺は朝からずっと抱きたかったぞ」
「えぇ~····。なんか、ごめんね? 今から八千代の家で····する?」
「しねぇわ。もうすぐ送ってくしな」
「そうだよ。今日はゆいぴのしたい事する日なんだから」
「わりぃ、余計な事言ったな。俺は結人とデートすんのもすげぇ楽しみにしてたぞ。あー····えっとな、抱きたくない時はないって事だ」
「さっくん必死すぎな~。ま、常に抱きたいのは皆一緒だからさ。俺ら健全な男子高校生だしぃ?」
「僕だって健全な男子高校生なんだからね。····い、いつでもシたいなって思ってるんだよ?」
「お前、マジでここで犯すぞ」
「あはは。八千代こわーい」
「てめ··、茶化してんじゃねぇぞ····」
そんな事を言われたって、茶化さないとトイレにでも連れ込まれそうなんだもん。
僕の言葉ひとつで雄の顔を見せる皆に、身の危険感じる事もあるけど、いつだってトキメくし嬉しいのもホントだ。それに、ちょっと面白い。
(やっぱり、皆とのデートは楽しいや。えっちもいいけど、たまにはこうしてお出掛けもいいよね)
皆、僕に触れるのを自重できなくなってきたので、そろそろ帰路につくとしよう。本当は、八千代の家にお泊まりしたかったけど、それだけはダメだと言われたから仕方ない。
約束通り7時には家に着いた。母さんの大好きな、向日葵を基調にした大きな花束を抱えて。
これは、僕と皆から母さんに。生んでくれた事に感謝を込めて贈る。渡したら母さんが泣いちゃって、皆がアタフタしていた。
父さんが母さんを宥め、落ち着いた母さんが皆を夕飯に誘う。皆一度は断ったが、母さん達の押しに負けて一緒に夕飯を食べる事になった。母さん達は、はなからそのつもりだったらしい。
因みに、僕がお泊まりを断られた理由だけど、寝る前のグループ通話で皆の意図を聞いて泣いてしまった。
来年の誕生日、僕はもう家に居ないだろうから、夜くらい家族と過ごせと言われた。けど、会わないという選択肢はなかったらしい。
八千代が迎えに来た時は、今日1日デロデロにされるのを覚悟した。正直予想外だったが、皆に揃って祝ってもらえて本当に嬉しい。おかげで、これまでで1番幸せに満ちた誕生日になった。
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