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2章 覚悟の高3編

後悔するんだからさ

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 いかがわしい話は伏せ、これまでの僕たちについて改めて説明する。
 途中から涙目で聞いていた真尋。聞き終えると、黙って僕のスマホに手を伸ばした。


「ちょっ、何するの?」

「····アイツらに結にぃを解放しろって直談判する」

 思考回路がバグっているようだ。ぶっちゃけ、りっくんよりも面倒臭い。

「ねぇ、ホントに諦めてよ····。なんでここまで聞いてまだいけると思うの? 僕ね、もうみんなじゃなきゃダメなんだよ····」

「聞きたくない····」

 か細く小さな声で何かを呟く真尋。スマホをたぷたぷしながら肩を震わせている。

「え、なに? 真尋····?」

「もう聞きたくない! 結にぃは俺のだって言ってんじゃん!」

「えぇー····。なんでそんな急に駄々っ子みたいになってるの? 僕、真尋のじゃないし」

 どうやら、情緒もバグっているようだ。もう手に負えない。
 お手上げだと思った瞬間、僕のスマホからコール音が聞こえた。画面を見ると、啓吾に電話をかけているではないか。

「ちょっと!? ホントに電話するの!? て言うかなんで啓吾なの?」

「あのチャラ男なら色々勝てそうな気がする」

 失礼すぎる。真尋が啓吾に勝っている所なんて、血の繋がりくらいなのに。
 スマホを取り上げようと奮闘するが、手の長さが違いすぎて届かない。そうこうしているうちに、啓吾が電話に出てしまった。

『はいはーい。結人? どした?』

 微かに聞こえる、気の抜けるような啓吾の明るい声。その優しい声に安心する。けれど、癒されている場合ではない。

「真尋、切って!」

 まずいまずいまずい! 啓吾が余計えっちな事を言う前に切らなくては。僕は小声で真尋に指示する。
 しかし、真尋がタップしたのは、通話終了ボタンではなくスピーカーのボタンだった。

『ん? 結人~? 寂しくなった? つぅかなんでビデオ通話じゃねぇの? ····え? あぁ、また寝ぼけてんのかもな』

 どうやら八千代が乱入してきたようだ。遠くに八千代の声が聞こえる。て言うか“また”って?

「真尋! もう切って!!」

 声を抑えて叫ぶ。奪い返そうと試みてもいる。が、高く掲げられたスマホに手が届かない。

『貸せよ。····結人、寝てんのか? ····なぁ、今日もイかせてやろっか』

 八千代だ。寝ている僕をイかせる? 何を言っているのだろうか。

『お前いい加減にしとけよな。起きたらどうすんだよ。結人拗ねちゃうだろ』

『突っ込んでも起きねぇのに、こんなんで起きるわけねぇだろ。つぅか、寝ながら声漏らすん可愛いだろうが』

 まさか、真尋に聞かれてるなんて思っていないだろう。そんな2人だから、これ以上何を言い出すか本当に分からない。
 それに、八千代がこれから何をするのか、僕ですら予想がつかない。どうやら、啓吾よりも八千代のほうがヤバそうだ。

『そりゃ可愛いけどさ。あ、スピーカーにしろよな!』

『わーってるよ』

 僕と真尋は思わず固まり、電話の向こうの動向に注目する。

『····鳴らすぞ。イけよ──(パチンッ)』

「ひゃぅっ····」

 え? 何が起きたのだろう。
 おそらく指パッチンだと思うが、その音を聞いたらお腹の奥がズクンとした。甘イキしてしまったのだ。

「んぇ? ····あっ! 脳イキだっ!!」

 僕は思わず声を上げてしまった。
 まさか、寝ている僕に電話越しでこんな事をしているなんて。それも常習犯のようだ。驚きを通り越して呆れてしまう。

『結人? 起きてんのか? なんか声遠くねぇか?』

「お前ら····結にぃにナニしてくれてんだよ」

『あ? お前真尋か? なんでテメェが居んだよ。結人は?』

 やってくれた。絶対に面倒くさい事になるじゃないか。真尋のバカ····。

「····結にぃなら俺の隣で軽イキしてるよ」

『『あ゙ぁ!?』』

「俺の結にぃに何仕込んでくれてんの? マジでふざけんなよ」

『お前のじゃねぇだろ。俺らンだ。つぅかお前、結人のイキ顔見てんじゃねぇぞ』

「すげぇ可愛いね。でもこれ軽イキじゃん? 今から俺のでちゃんとイかせてあげる。アンタらも聞いとけば? どうせ今からじゃ来れないだろうし、来たって間に合わないよ」

『マジで莉久みてぇ····じゃねぇや。あのさ、場野もう飛び出してそっち向かったよ? バイクで』

「「······え?」」

 行動が早すぎる。もうすぐ日付も変わる、こんな時間にバイクで訪問だなんて。それに、なんて言って家に入るつもりなのだろう。
 ダメだ。考えがまとまらない。

『結人? 真尋になんかされてんの?』

「さ、されてないよ····」

『ホントに?』

「してないよ! 結にぃが嫌がってんのに無理矢理デキるかよ!」

『あっはは。だってさ、場野。だから落ち着けよ』

 どうやらハッタリだったらしい。一安心だが、次の八千代の台詞で僕達は震え上がった。

『ッフゥー····お前ら明日俺ん家来い。朝イチな。真尋ぉ、今晩結人に手ぇ出したらマジでぶっ殺すかんな』

「ねぇ結にぃ、コイツ不良なの? すげぇ怖いんだけど」

「それも聞いてなかったの? 不良ね。あと八千代の実家、ヤクザ屋さんだよ」

 真尋はそっと通話を終了した。そして、何事も無かったかのようにベッドに入る。
 僕も眠いので、考えるのは明日にして寝ることにした。何故か、真尋が僕を抱き枕にしているが、手は出されていないからセーフかな。

(もういいや。眠い····)


 
 翌朝、真尋と一緒に八千代の家へ向かう。いつの間に仲良くなったのかと、雄くんたちが驚いていた。
 真尋が『夕べ電話でちょっとね』と誤魔化していたが、あながち嘘ではない。仲が良くなったというのは事実と相反するが。

 
 八千代の家には、りっくんと朔が先に来ていた。予想はしていたが、敵対心剥き出しの両者。これから一体、何が始まるのだろうか。

「真尋。お前昨日、あれから結人に手ぇ出してねぇだろうな」

「出してないよ。結にぃすぐ寝ちゃったし」

 皆なら、そこで間違いなく眠っている僕を犯したのだろう。皆は『所詮は中学生か』という目で真尋を見る。

「つぅかさ、なんで襲わないで俺に電話してきたの?」

「それは····」

 僕は経緯を話した。ついでに、これまで寝ている僕にイタズラしていた事も叱責した。反省なんて、まるでしていないようだが。
 そして、啓吾になら勝てそうと言った真尋に、啓吾がとんでもない提案を持ちかける。

「へぇ····。俺になら勝てそうなんだ。んじゃ、真尋ができない事してやろっかな」

 そう言って、啓吾は僕の手を引いて立ち上がった。

「んぇ? 啓吾、何するの?」

「中坊には想像もつかないえっちな事して、どっちが上か見せてやんだよ」

「はぁ····? 真尋に見られるのヤだよ。それに、皆が許すわけないでしょ?」

 溜め息混じりに啓吾を諭す。けれど、皆の様子がおかしい。朔でさえ、啓吾を止めようとしないのだ。

「朔? ダ、ダメだよね?」

「····いいんじゃないか?」

 あまりに予想外な返事に、僕は言葉を失った。

 皆の言い分はこうだ。真尋は従兄弟だから、僕たちが結婚した後も付き合いがあるだろう。そうなれば、また僕が狙われるかもしれない。それならば、今のうちに僕が誰のものかを思い知らせておこうという事らしい。
 要は、完膚かんぷなきまでにヘコませて強制的に諦めさせるのだとか。そうして、僕が誰を選ぶのかを見せつけるのだそうだ。
 話し合いで解決を目指す事はできないのだろうか。いや、そんな発想が出るような甘い人達じゃなかったね。

「お前、童貞か?」

 朔がしれっと聞く。

「違うけど」

 真尋もしれっと答える。慣れているとは思ったけど、やはり卒業組か。なんだかすっごく悔しい。
 そして、りっくんの尋問のような質問責めが始まった。

「相手は男? 女?」

「女」

「まさかと思うけど、血の繋がりがあるからいけるとか思ってないよね?」

「強みにはなると思ってるよ。小さい頃からずっと仲良かったし」

「それは俺のほうが有利だね。一緒に居た時間ナメないでよ? で、真尋はノンケなの?」

「結にぃ以外の人間に興味持ったことない。アンタらは?」

「俺らの事はいいんだよ。······まぁ、全員ノンケだよ。男の経験はゆいぴだけ。つぅかホント、俺と一緒だね」

 りっくんはふわっと微笑んだ。一瞬空気が和らぎ、平和な解決への光が見えたように感じた。

「何が?」

「俺もゆいぴ以外を好きになった事ないんだよ」

「んじゃ、俺の気持ちわかんじゃねぇの?」

「すっごいわかる。けど、だったら俺の気持ちもわかるでしょ?」

「··········わかる」


 尋問の最中だが、僕は洗浄に連れ出される。部屋を出る時、りっくんの勝ち誇った顔が見えた気がしたが、気のせいだと思っておこう。
 
 それにしたって、おばあちゃんの葬儀の翌日なのだ。もう少し、僕の気持ちを慮ってくれてもいいと思うのだけれど。
 現状をよく理解して、僕のぐるぐるモヤモヤした心のほうをどうにかしてほしい。が、そんなのは脱衣場へ入るなり、どうでもよくなってしまった。
 啓吾は、しこたまキスをして僕を裸にひん剥くと、洗濯機の上に座らせる。

「んなぁっ!!?」

 ヒヤッとして変な声が出てしまった。

「冷たい? タオルとか敷いたら滑って危ないから、ごめんな。結人、足開いて」

 僕はおずおずと、自ら足を開く。啓吾は指にコンドームを嵌めると、緩み具合を確認するように指を1本挿れた。
 少し解すと、ナカを掻き回しながら僕のおちんちんをしゃぶる。しっかり勃っている僕のおちんちんが、パクッと全部口に入ってしまう。その物悲しさったらないが、口内の温もりと快感がそれを凌駕する。

「んぁ····啓吾? 洗··浄は?」

 僕は、啓吾の頭を押し戻して聞いた。

「さっさとふわふわさせてやろっかなって。昨日の今日だし、シラフでいんのしんどいかなぁって思ってさ。とりま先に、昨日使われてないかのチェックな」

 そう言うと、再びおちんちんに食らいつく。
 なんだかんだいつだって、僕の気持ちを蔑ろにしているつもりはないんだよね。

「やぁっ····使ちゅかわれてないよぉ」

それを今確かめてんだろほぇをいぁはひはぇへんはぉ

「ひゃぁっ、喋んないでぇ! んぅっ····そ、んなに、吸っちゃらめぇ····あぁっ、出ちゃう··啓吾離してぇ!」

 どれだけ力いっぱい頭を押しても、啓吾は腰を抱き締めたまま離してくれなかった。
 未だにしゃぶられるのは慣れない。そのうえ、口に出してしまうなんて本当に申し訳ない。それに、恥ずかしくて顔を見られなくなるのが寂しい。

「ん。使われてないみたいだな。よし、んじゃ綺麗にしにいくよ」

「い、今からぁ?」

 洗濯機から降ろされ、僕はヨロヨロと啓吾に寄りかかる。

「あっはは。もうヘロヘロ? ほーら、可愛がんのこっからだぜ? 頑張れよ~」

 啓吾は僕の腰を抱き、意気揚々と浴室へ連れ込んだ。これから····。怖いな。

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