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2章 覚悟の高3編

猪瀬くんの迷い

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 朝、啓吾のキスで目が覚める。僕は、いつの間にか啓吾に抱きついて眠っていたようだ。見上げると、優しい眼差しで僕を見つめる啓吾と目が合った。
 そして、背中に置かれる快感で、八千代がキスマークをつけている事に気付く。

「んっ、ぅあ····」

「結人、おはよ」

「啓吾、おはよう。八千代も、おはよ。んっ····八千代、吸うのやめてよぉ」

「ん····はよ。もう風呂入んねぇからいいだろ? つぅか、朝から美味そうなお前が悪ぃ」

「んへへ、何それぇ」

「何擽ったい朝迎えてんの? さっさと起きろよ」

 不機嫌な冬真に、布団を剥いで起こされた。

「お前ら、なんも反省してねぇだろ····。まぁ期待はしてないけどさ。それよか結人、鬼頭と瀬古起こして。俺と駿で声掛けたんだけど、全っ然起きねぇの」

 2人の寝起きの悪さは天下一品なのだ。そう簡単には起こせないだろう。そう、僕以外には。

「りっくーん、起きて?」

 僕は、りっくんを上から覗き込むようにして声を掛けた。すると、後頭部を持って引き寄せられ、おはようのキスをされてしまった。

「んんっ····ンはぁ····。りっくんのばかぁ」

「ん。おはよう、ゆいぴ」

 なんて甘い笑顔で目覚めるんだ。心臓が煩くて、寝起きにしか聞けない低音の掠れた『おはよう』がよく聞こえなかった。
 残念だが、あまり時間もないので続いて朔を起こす。

「朔、おはよう。朝だよ? ねぇ、朔。····もう、起きてぇ」

 手強い朔の瞼にキスをした。それから耳元でもう一度『起きて』と言う。修学旅行の時はこれで起こせたのだが、今日はどうだろうか。

「結人····おはよう」

 何故だか、朔は起きるなり頬を赤く染めた。

「朔、どうしたの?」

「いや、目ぇ開けたらお前の大きいキラキラした目と合ったから····ちょっとキた」

 何を言っているのかよく分からないが、寝起きの朔は僕が思っている以上にアホなのだろう。

「キた··の? よくわかんないけど時間ないよ。早く準備しなくちゃぁっ──!!?」

 突然腕を引っ張られた。朔は僕を布団に引き入れると、大きくなったおちんちんをボロンと取り出す。そして、おちんちんを僕の唇に這わせると、先端を少しだけ口に押し込む。けれど、すぐに抜いていそいそと仕舞った。
 根元までぶち込まれるのかと思って少し焦ったが、お尻のほうはキュンキュンと期待していたようだ。

「わりぃ。止まんなくなりそうだった。場野たちに言っておいてダメだよな。····顔洗ってくる」

 朔は足早に洗面所へと向かった。もしも、冬真と猪瀬くんが居なかったら、朔のおちんちんを食べる事ができていたのだろうか。
 きっと、今回誰よりも朔が我慢してくれている。朔は真面目だから、僕がお願いしてからは律儀に約束を守るのに尽力してくれていた。帰ったら、真っ先に朔に『好きに抱いて』って言ってみようかな。



 今日も昨日に引き続き、ボランティア活動に精を出す。今日は子供会で行われる地域の清掃活動のお手伝いだ。50人近い子供の誘導などをするらしいが、子供が苦手と言っていた八千代と朔は大丈夫だろうか····。
 僕と啓吾、猪瀬くんの3人で、掃除の後に配るお菓子とジュースの準備をする。りっくんと冬真は、スケジュールの確認を役員のお母さん達としていた。
 それだけなのに、どうしてりっくんはお母さん方からちやほやされているのだろう。冬真なんて、もはや口説いているようにしか見えない。
 僕がムスッとしているのを見かねて、啓吾がりっくんを呼びに行った。しかし、ミイラ取りがミイラになるとはこの事で、若いお母さん達から随分と可愛がられているようだ。
 さらに機嫌の悪くなった僕は、啓吾の代わりに手伝いに来た八千代と朔に笑われていた。

「お前、あれでも妬くんかよ」

「だって、お母さんたち若いし綺麗だしさ、なんかすっごい可愛がられてない? そりゃあんなイケメンが3人も居たらワクワクするのわかるけどさ、りっくんと啓吾も満更じゃなさそうって言うか····」

「ははっ、またハムスターみたいになってるぞ。結人が妬くんなら、俺が蹴散らしてこようか?」

「朔····お母さん方を“蹴散らす”って言うのは良くないよ。それに、たぶん朔も捕まるよ?」

「俺はアイツらみたいにフレンドリーにはできねぇから大丈夫だろう。呼び戻してくる」

 そう言って、朔はりっくんと啓吾を呼び戻しに行った。そして、案の定まんまと餌食になってしまった。
 けれど、遠目でタジタジしている朔を見るのは面白い。初めの威勢はどこへやら、だ。

「情けねぇな。····お、大畠だけ戻ってくんぞ」

「ホントだ。どうしたんだろうね」

「場野! チェンジ~!」

 啓吾が手を振りながら走ってきた。チェンジとは、どういう事だろうか。

「棚の上の資料取ってほしいとかで、タッパあるヤツが欲しんだって。なんか脚立がないらしくってさ。朔が今頑張ってるから手伝ったげて」 


 八千代は渋々手伝いに行く。そして、僕と啓吾は再び、猪瀬くんと3人での作業に戻る。啓吾はチャンスと言わんばかりに、猪瀬くんにあの話を振る。

「駿哉さ、冬真のコト拗らせてんだって? 結人に冬真薦めてたって莉久がめっちゃキレてたんだけど」

 相変わらず、啓吾は本題をぶっ込むのが得意だ。猪瀬くんよりも、僕のほうがオドオドしてしまう。

「拗らせ····てるつもりはないんだけどなぁ。男同士だから進展とかないと思ってたし。冬真も俺も、女の子は好きだしさ」

 そう言えば、猪瀬くんも女の子にモテるんだ。サッカー部のキャプテンでイケメンなのだ。そりゃ、モテないほうがおかしい。

「冬真と付き合いたいんじゃないの?」

「それな。考えた事なかったから、俺自身どうしたいのかイマイチわかんないんだよね····。けど、冬真とそういうコトはしてみたいなって思った」

「そういう事····って、何?」
 
「エロい事とか」

 猪瀬くんは、何故か僕をチラリとみる。そして、少しはにかんで続けた。

「実は昨日、俺も起きててさ。武居が抱かれてんの、ずっと聞いてたんだよね。冬真が武居に迫ってたのも聞いてたんだ。つぅか、お前ら激しいのなぁ····」

「お前らが居なかったらあんなもんじゃねぇよ?」

 啓吾がサラッと言う。僕は呆れて絶句した。啓吾も、恥じらいをどこかで失くしてきてしまったのだろう。僕は顔をあげられなくて困っているのに。

「マジかよ。なぁ武居、ケツ大丈夫なの? あのさ、風呂で見たけどコイツらちんこデカくねぇ? アレが勃って入んの? ケツ死なねぇ?」

「あ····えと、えーっと····ね、あのね、お、お尻は····」

「見せてやりたいくらい綺麗だから。俺らが結人を傷つけるわけねぇだろ」

 何を雄弁しているんだか。啓吾は、僕のお尻を揉みながら言った。

「啓吾のばかぁ! なんでそういう事サラッと言っちゃうの!? 恥ずかしいでしょ!」

「えー? もうヤッてんの聞かれたんだし今更じゃねぇ?」

「いやいや。啓吾さ、もうちょい武居の気持ちも考えてやんな? 真っ赤になってんじゃん。可哀想に····」

「これが可愛いんじゃん? イジめたくなるっつぅかさ~」

「ハァ····。昨日も思ってたけど、お前らクソドSだよな」

「そうなの。けどそれよりね、啓吾が何言うかわかんないから気が気じゃないんだよぉ····」

 僕は涙目になり、両手で顔を覆い隠して啓吾の危うさを訴えた。猪瀬くんは、憐れみの目を僕に向け、肩にポンと手を乗せ同情してくれた。

「それは······大変だな。でも、ヤッてる時すげぇ良さそうだったじゃん」

「そ、それはそうなんだけど····。やだ、恥ずかしいから忘れて!?」

 僕は、両手で顔を覆ったまま懇願した。

「なぁ。帰ったら遊ぶって話、俺も行くから。問題ねぇよな?」

 あぁ、やはりそう来たか。予想通りだ。けれど、猪瀬くんは訝しげに問い返す。

「問題はないけどなんで? 鬼頭が同伴するって言ってたから、啓吾は来なくてもいいんじゃないの?」

「いやいや、面白そうじゃん?」

 単純明快な参加動機だ。けれど、これは良くないと思う。こうもはっきり『面白そう』だなんて身も蓋もない。

「啓吾、人の恋路を面白がんないの····。そういうのダメだよ」

「あはは、わりぃわりぃ。けどマジな話さ、冬真とも仲良いし莉久より的確なアドバイスできると思うよ?」

「あー····それは心強い··かも? いや待って。俺さ、冬真とどうなりたいかってのがまだ曖昧なんだけど」

「とりあえずヤる方向で策立てればいいんじゃねぇの?」

「え~······まぁ··その為に話聞くんだもんな····。うん。じゃ、とりあえずソレで」

「なんか2人とも、軽くない····?」

 啓吾と猪瀬くんの軽さに喫驚しつつも、僕も少し面倒になってきたのでソレでいく事にした。
 とにかく、今は目の前の仕事に専念しなくては。それに僕は、八千代が子供の相手をしている所も早く見たいのだ。

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