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2章 覚悟の高3編

ラスボスはどっちだ

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 昂平くんを煽りまくるりっくん。八千代達が来るまでの時間稼ぎなのだろうが、いくらなんでも煽りすぎだ。
 そして、僕と婚約したと言うりっくんを、昂平くんは思い切り殴り倒した。

「りっくん····! 昂平くんやめて!! お願い、もう殴らないで。さっきもいっぱい殴られたの。それ以上やったら····ホントにりっくんが、し、死んじゃ····」

 涙が込み上げた。想像したくもない事を言葉にすると、息が詰まって呼吸が上手くできない。視界がボヤけて、今にも溢れてしまいそうだ。

「結人くん、婚約ってホント?」

「····うん。ホントだよ。だから、僕は他の人のモノには··ならないの。どれだけ僕の事··好きでいてくれても、絶対に靡かない」

「そっか。じゃぁ仕方ないね」

 諦めてくれたのだろうか。ここまでしておいて、妙にあっさりしている。りっくんに落とした昂平くんの目が、何かを企んでいるようで怖い。

「昂平、やっぱりビッチ先輩飼うの? ねぇ、もう暴れていい?」

「あ゙ぁ? 結人を飼うって何だよ」

 啓吾が純平くんを睨む。純平くんは啓吾を見て、ニヤニヤと笑いながら言った。

「邪魔な奴みーんなぶっ殺して、欲しい物手に入れちゃうんだよ。雑魚2人くらい、スグ潰せるからね。んでぇ、ビッチ先輩連れて俺たちはトンズラすんの。完璧じゃない?」

「結人くんが俺の事好きになるまで、ゆっくり飼い慣らせばいいよね。身体に教えたらイケるでしょ。どうせ、アンタらもそうしたんだろ?」

「そんなわけないでしょ。確かに最初は身体からだったよ。けど、そんな理由で皆を好きになったんじゃない。僕は心から皆の事愛してるの!」

「はは、愛とか言ってる。さっぶ~い。ビッチが何言ってんだよって感じ~」

 純平くんが僕を睨む。軽口を叩いたように聞こえたが、その瞳には僕への憎しみが込められているようでゾッとした。
 純平くんは、昂平くんの事が本気で好きなのだろう。もしくは、独占したいのか。どちらにしても、昂平くんが執着している僕を疎ましく思っているんだ。

「純平、おいで」

 純平くんは昂平くんに駆け寄り、首輪を外された。

「雑魚2人とも、好きにしていいよ」

「やった~」

 純平くんが、りっくんに歩み寄る。そして、倒れているりっくんの髪を掴んで頭を持ち上げた。
  
「アンタがりっくん? めっちゃ可愛い顔してんね。タイプだわ~。アンタから掘ってあげるね」

「「「······ん?」」」

(掘るって、りっくんを犯すって事····だよね? 潰すって、そういう事なの!? そりゃ、精神的に再起不能になっちゃうよ····)

「待って待って待って!!? 俺ボコられるんじゃないの!? え、ボコられるほうがマシなんだけど!! ボコれよ!!!」

「あれ、元気じゃん。つーかボコれってなに。キモいんだけど。まぁそんだけ元気あったら、しっかり泣き叫べんね。楽しそ~」

 正気とは思えない目をした純平くん。それを気にすることなく、僕を抱き抱えて倉庫の奥へと向かう昂平くん。

「おい、待てよ昂平! 結人何処に連れてくんだよ!? 待てって!!」

「追いかけてきたら、結人くんに酷い事するからね。チャラ男先輩も、後で純平に可愛がってもらいなよ。上手いらしいからさ。最初は痛くするだろうけど」

 昂平くんは意地悪な笑みを見せ、再び歩き出す。

「ねぇ昂平くん、もうやめてよ。なんでこんな酷い事ばっかりできるの? もう、人を傷つけるのやめようよ····」

「結人くんは優しいから、ああいうのは辛いよね。ごめんね。でも、欲しい物を手に入れるには必要な事なんだよ。アイツらみたいにヌルい事してたら、大事な物なんて守れない。現にほら、結人くんは俺が手に入れたでしょ」

「僕、絶対に昂平くんを好きにならないよ。それでも、僕が欲しいの?」

「欲しいよ」

 昂平くんは歩みを止め、僕をゆっくり降ろした。そして、大きな手で僕の頬を包み込み、強引に舌を絡めるキスをした。

「んっ、ふぅ····」

 後ろで手を縛られているから抵抗できない。

(八千代、朔、早く来て····)

 横目にりっくんの安否を確認すると、啓吾が純平くんの頭に蹴りを入れる瞬間だった。純平くんはそれを受け止め、足を引っ張って啓吾を転ばせた。

「いってぇ····。お前、どんだけイカレてんだよ。お前の相手は兄ちゃんなんだろ。2人で勝手にヨロシクヤッてろよ!」

「ん? あぁ、ビッチ先輩から聞いたの? それとこれとは別なんだよねぇ。昂平、挿れさせてくんないもん」

 純平くんは啓吾に跨り、首を締めながら続けた。

「チャラ男先輩、ウルサイからアンタからヤッてあげるね。解したりしないから、痛かったら泣いて叫んでね」

 ダメだ。純平くん、完全にイカレてる。どう考えたって正気じゃないよ。
 そろそろ八千代と朔が突入してきてもいい頃なのに、何かあったのだろうか。急がないと、本当に啓吾とりっくんが犯されてしまう。
 焦ってまた涙を浮かべた瞬間、倉庫の扉を開く重い音が響く。それは、啓吾のベルトが外された瞬間でもあった。間一髪だ。

 ガリガリガララ····と、歪にヘコんだ鉄パイプを引き摺る音が倉庫内に反響する。八千代の持っているヤツだ。
 それに、血が付着した警棒を持った朔。ここへ辿り着くまでに、何があったのだろうか。

「純平、楽しそうな事してんじゃねぇの。よくそんな可愛くもねぇ男に跨がれんな。気持っち悪ぃ」

「わ~ぁ、場野くんだ。なんでここに居んの? めっちゃ怖いんだけど」

「おっっせぇよっ!! 俺犯されるトコだったんだけど!! コイツさっさと退けてくんない!!?」

「うるせぇバカ大畠。テメェの身はテメェで守れつっただろ」

「見て! 縛られてんの! いいから早く助けろってぇ!」

 啓吾が涙目で絶叫している。僕は、昂平くんに抱き締められながら、物陰から様子を窺う。口を強く塞がれて声を出せない。
 昂平くんの手が少し震えている。予想外に八千代が登場した事で動揺しているのか、はたまた八千代のキレ具合に怯えているのか。
 
「おい、結人は何処だ。GPSの反応だとこの中に居るはずだろ。無事なのか」

 朔が辺りを見回し、焦った様子で僕を探している。

「昂平が奥に連れてった。まだその辺にいると思う」

「おぉ····莉久、起きてたのか。動けるか?」

「無理。もうちょっと待って····」

「相当殴られたみてぇだな。イイ顔になってんじゃねぇか」

「うるせぇよ。さっさと啓吾助けてあげなよ」

「来たらチャラ男先輩のタマ潰すよ」

 純平くんがとんでもない事を言ったのに、八千代は躊躇いもなく足早に歩み寄る。そして、純平くんが啓吾のタマに手をかけようとした間際、純平くんが蹴り飛ばされた。一瞬、八千代が消えたように見えたんだけど、まさかね。
 その隙に、朔がりっくんと啓吾の拘束を解く。カッターなんて持って来てたんだね。さすが朔、用意周到だ。
 倒れた純平くんに、八千代がすかさず歩み寄る。すると、昂平くんが僕を連れて物陰から飛び出した。

「場野! 次、純平に手ぇ出したら、結人くん傷つけるよ。つぅか外に居た連中はどうしたんだよ。2人でヤれる人数じゃないだろ」

「んふぅ、ふあぁ····」

 僕は、昂平くんの指を口に押し込まれていて喋れない。

「全員潰したわ。俺が得物持って負けるわけねぇだろ。それよか昂平、今すぐその指抜けよ。じゃねぇと、マジで殺すぞ」

 八千代の鋭い眼光が昂平くんを射す。八千代が放つ殺気は、昂平くんの手を震えさせるほど激甚だ。静かにキレている八千代が1番危ない。
 しかし、それに動じない純平くんは、落ちていた角材を手に立ち上がった。
 
「あん時は身動き取れなかったからヤられたけどね。今回はちゃんと、人質って形でビッチ先輩に協力してもらってるから。負けないよ~」

 完全にハイになっている様子の純平くんは、フラフラしながら八千代に角材を向けた。

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