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2章 覚悟の高3編
閉じ込められちゃった
しおりを挟む密室で啓吾と2人きり。チャンスといわんばかりに啓吾が迫ってくる。
「ダメだよ、啓吾····。ね? 人が来たらどうするの?」
「まだ来ねぇよ。来ないから閉じ込められてんじゃん?」
そう、僕たちは今、別棟にある資料室に閉じ込められているのだ。
あれは、遡ること20分前····。
啓吾とトイレに行った帰りの事。社会科のおじいちゃん先生が教材を山ほど抱えて運んでいたから、僕たちが代わりに持って行くと名乗り出た。それで、2人でこの古い資料室に教材をしまいに来たのだ。
そして、無事に教材を棚に戻したまでは良かった。部屋を出ようと思ったら、扉がビクともしないじゃないか。元々立て付けが悪かったのだが、おそらく、僕がよろけてぶつかったのがトドメだったのだろう。
窓は無く、通気口しかない。そこそこ貴重な資料をしまってあるから、この部屋だけ防火室になっている。壁が厚く、叫んだとて外には届かない。
「啓吾、スマホは?」
「電池切れてたから、莉久に充電頼んできた。結人のは?」
「教室。て言うか朔に預けてるんだ。トイレに行ってる間に、何かのアプリ入れとくからって」
「あ~····言ってたヤツか。だぁ~~~っ! 今かぁ····」
「え、何?」
「たぶんさ、朔が入れてんのGPSだわ。昨日言ってたんだよ。心配だからやっぱ入れようかって」
僕に何の断りもなく入れる辺り、朔らしいと思う。けど、本当にタイミングが悪かった。
「どうしよっか。放課後っつぅのがまた、なぁ····」
「皆、絶対また血眼で僕たちのこと探してるよ? どうにかして出ないと」
「けどなぁ····。このドア、無理やり開けんの難しいと思うよ?」
「だよね。うーん····」
「じゃぁまぁしょうがねぇからさ、ちょっとだけ····シよっか」
そして、今に至る。
「ちょっ、ダメだってぇ。ここ、濡れたらマズイものばっかりだよ」
「大丈夫、噴かさねぇから。これ巻いたら出しても飛ばねぇだろ」
そう言って、啓吾はインナーを脱いで僕の腰に巻いた。エプロンみたいだ。
いつもポケットに入れてるミニローションを取り出し、否応なく僕のお尻を解し始める。本気でするつもりなんだ。閉じ込められているのに、緊張感の欠片もないんだから。
「啓吾、出る方法探さなくちゃ····」
「ん。ヤッてから考えよ。ほらぁ、結人ももう欲しそうじゃん」
「やんっ♡ グリグリ押しつけないでぇ」
「押し付けんのイヤ? え~どうする? やっぱやめとく?」
「なっ····、今それ聞くの····狡いよぉ」
「へへっ。俺のちんちん欲しい?」
「う、うん····」
「なら強請ってみ」
卑怯だ。僕がもう我慢できないのをわかっていて、こんな意地悪をするのだから。
「啓吾のおちんちん、欲しいです。僕のアナ····アナルに、硬くておっきいのくだしゃい」
「よ~くできました♡」
耳元で囁き、亀頭をぷちゅんと挿れた。圧迫感が凄くて、勝手に押し出そうとする。それに逆らって、ぐんぐん入ってくるのが気持ち良い。
流石の啓吾も、ここで長々とする気はないらしい。だからなのか、一突きめから激しい。
僕はもう、周囲にある貴重な資料や教材なんて、どうでもいいくらいには快楽に溺れている。いつもの様に、啓吾の好きに使われたいと思っていた。
後ろを突くのと同時に、インナーごと僕のおちんちんを扱く。締りが良くなるのか、早くもラストスパートに入った。
後ろから項を噛まれ、僕は深くイッてしまった。直後に啓吾もイク。
「結人、飲んでっ」
ずぽんっと勢いよく抜き、扱きながら僕の口に射精する。幾らか顔にかかり、それを指で掬って舐めて見せた。
「うはっ♡ えっろぉ····。もっかいシたくなんだろ」
「んぅ? もっとシたい····」
僕は、啓吾を見上げて言った。ふわっと手で目隠しをされ、甘くてやらしいキスをされた。
「ここで煽んのナシな。そろそろ莉久たちに見つかるだろうからさ」
なんて言って、ここでのえっちは終わった。おちんちんは、また元気になっていたはずなのに。きっと、辛いだろうに。
着衣を整えていると、本当にりっくんたちが見つけて開けてくれた。脳天気な啓吾に皆怒っていたけれど、普段とは違うシチュエーションでシた快感に、僕はまだぽわぽわしていた。
八千代の家に向かう道中で、閉じ込められている間の事を話した。カラオケでの一件があったから、血相を変えて探し回ってくれていたらしい。
なのに、僕たちときたら呑気にえっちシていたものだから、皆は相当怒っている。僕と啓吾ではぐれる事のないようにと、りっくんが何度も言っていた。
そして、りっくんのお小言が終わる頃、朔が得意気に言い放った。
「結人のスマホにGPS仕込んどいたから、これからはもう安心だな。結人、絶対にスマホは肌身離さず持ってろよ」
さっき、啓吾が言っていたやつか。
「えーっと、朔さん? そういうのは言ってからするか、いっそバレないようにするものじゃないの?」
「ん? あー····そうか。でも、知ってた方が万全だろ?」
「へ? まぁ····ね。でもさ、勝手にそんなの仕込んで、僕が怒るとか思わなかったの?」
「怒ったのか?」
「別に怒ってはないけどね····」
「なら問題ねぇな。よし、なんかおやつ食いに行くぞ」
「わーい♡ 僕ね、お腹すいてたんだぁ」
まんまと『わーい』だなんて喜んでいる場合じゃない。おやつで手玉に取られるなんて、完全に小さい子扱いじゃないか。
これまでの事を顧みると、それくらいの事をされても不思議ではない。けれど、こんな調子で僕は大丈夫なのだろうか。過保護に拍車がかかっている気がする。
八千代の家に行く前に、ショッピングモールに寄ってクレープを買った。しかし、おやつがこうも甘いものばかりだと、また母さんが心配するだろう。
そこで、啓吾が野菜を使ったお菓子を作ってくれる事になった。と言っても、作るのは八千代なのだが。明日からは、手作りのおやつが振る舞われるらしい。
翌日、八千代がキャロットケーキを持ってきてくれた。予想外に甘くて、人参感はさほど無い。普通のスポンジケーキみたいで美味しい。
明日は、かぼちゃプリンだと言っていた。今度、僕も一緒に作りたいな。
僕の甘やかしに際限がなくなっている今日この頃。父さんからの注意なんて、頭の片隅に追いやられていることだろう。
3年生になった僕たちは、そろそろ進路について真面目に考える時期がやってきた。本格的に進路相談が始まるのだ。
「皆、進路どうするの?」
「ゆいぴの第一志望って蹊進大学だよね」
「うん。りっくんも同じ··って····あぁ、だよね」
りっくんは僕が進路を決めた時から同じだ。その話をしたのは、確か1年生の終わりくらいだった。なるほど。ついてこようとしていたんだね。
「なんで蹊進なの? 結人だったらもうちょい上いけんじゃねぇの?」
「あのね、蹊進で心理学か保育の方専攻したいなって思ってたんだ。近場で両方充実してるのが蹊進だけだったの」
「お前、心理学興味あんの? つぅか保育ってなんだよ。んな話聞いた事ねぇんだけど。ガキの世話してぇの?」
「心理学は母さんの影響かな。あのね、僕小さい子好きなんだ。昔からよく懐かれるし。まぁ、夢って程のものでもないし、好きを仕事にできたらいいなぁって思ってた程度なんだよね」
「おい、エリート目指すんじゃなかったのか? つぅか、俺の会社で働くんじゃなかったのか?」
朔が焦ったように捲し立てる。
「今はそのつもりだけどね、資格とか持ってて損はないでしょ。ねぇ、保育園とか幼稚園で働くのも心配?」
「父兄から目ぇつけられそうだな。危険っつぅ程じゃねぇと思うけど」
「結人が先生かぁ。どっちが子供かわかんなそうじゃね?」
啓吾が失礼なことを言う。誰が園児レベルだ。
「啓吾、ホント失礼極まりないよね。で、皆はどうするの? 八千代と朔は進学でしょ。りっくんは専門学校も考えてるとか言ってなかった?」
「俺はゆいぴと同じとこ一択だよ」
「あのね、将来の事を僕に合わせて決めちゃダメだよ」
「俺も蹊進行くわ」
八千代がまた唐突に言い出した。今、りっくんに注意してたの聞こえてなかったのかな。
「俺も」
「朔まで!? ねぇ、ホントにそういうの良くないよ。自分の将来の事だよ。もっと真剣に考えないと」
「なぁ、俺でも蹊進いけると思う?」
「死ぬ気で頑張ってギリギリじゃない? ギリ赤点免れてるようじゃ無理だよ」
りっくんは手厳しい評価を下す。が、全員同意見だ。
「て言うか、啓吾も進学すんの? 就職でいいとか言ってたよね」
「俺だけ結人と居る時間激減すんのやだよ」
「でもさ、お金はどうすんの? 今貯めてる分で足りんの?」
「んぁ……。そうだ。それだ。今からじゃ無理かな。なんか方法ないの?」
この話は一旦持ち帰ることにした。進学先を決めるのも重要だが、これは啓吾の事が最優先だ。啓吾のお母さんにはもう頼めない。八千代と朔ならポンと出してしまいそうだが、絶対に啓吾が嫌がる。
さて、進路以前の問題が浮上した。どうしたものだろうか。
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