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1章 始まりの高2編

厄介な2人

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 お昼休み。啓吾とりっくんは予定通り、2人で1年生の棟へ向かった。準備室で待つ僕は八千代に襲われている。

「場野、無茶はするなよ。結人、昨日打ったとこ大丈夫か? 痛んだりしないか?」

「大丈夫····それより、んっ····待って····窓閉めて?」

「今日ちょっと暑いだろ。窓開けたらいい風入るぞ。あ、寒いか?」

 春を目前に、今日はポカポカ陽気なのだ。と言ってもまだまだ肌寒いのだけど、激しい運動をすると暑い。

「違っ、寒くないよ。風もね、んぁっ····気持ち良いんだけどね、けどね、声が····」

「声は我慢しろよ。ガンガン突くけどな」

「八千代、そこダメ····んっ····ふぅっ······」

 僕は八千代に抱きつき、一生懸命声を抑える。

「んんっ····ひぁっ····前立しぇん、コリコリしたら····んぅ····出ちゃうぅ」

「待て、お前耳元でそれやめろ。お前の喘ぎ声すげぇ腰にクんだよ」

「んぇ? 声、頑張って我慢してぅよ」

「自分が耳弱ぇクセにわかんねぇんかよ····」

 八千代は呆れているようだが、朔が後ろで笑っている。

「俺も前にそれやられてイッたぞ。結人の声、可愛いもんな」

「マジで、何から何まで可愛いんな。そりゃあっちこちから狙われるわ」

「何、言ってんの? そんなわけ、ないでしょ。ふあっ····それに僕、可愛くないもん」

「まだそんな事言ってんのか。諦めたんじゃなかったのか?」

「可愛いって、言われるのは諦めたけど、カッコよくなるの、諦めてないもん。だから、可愛くないもん」

「そう····なのか。よくわかんねぇな」

「ははっ、意味わかんねぇわ。お前はどんだけカッコよくなっても、俺らにかかりゃ可愛いんだよ。今まで、他の奴に手ぇ出されてなかったんが奇跡だわ」

「俺は誘ったけど断られたぞ」

「初めて喋った時のアレか? アレは誘い方がヤバかったからだろ」

「らしいな。ミスったと思ってる。大畠にずっと笑われた」

「まぁ、お前らしいけどな」

「あそこでミスらなかったら、場野に結人を盗られなかったかもしれないな。結人の初めては俺だったかもしれないぞ」

「お前が初めてとか······。マジで結人のケツぶっ壊れてたわ」

(それは····僕も思う)

「あぁ······確かに。初めて同士じゃ難しかったかもしれねぇな····」

 2人とも悠長に喋っているけど、僕が必死に声を殺して耐えていると、わかっているのだろうか。

「八千代、奥ちゅぉい····。なんれ、喋ってぅのに、上手に気持ちくできるの? 僕、も、らめ····」

「お前の好きなとこは全部わかってっからな。スマホ弄りながらでもイかせてやれんぞ」

「片手間にセックスすんのは関心しねぇな。俺は余所見なんかしねぇで、最初から最後まで結人だけ見てるぞ」

 朔が口にするセックスというワードに慣れない。それに加え甘い言葉を放つ。きっとイかせるつもりなのだろう。耳元で甘い声を巧みに使って言う。

「んあぁっ──」

 思わず声をあげてしまい、八千代がキスで口を塞ぐ。

「んんぅ····んっ····」

「はぁ······声我慢な。つーか片手間になんかシねぇから。例えばの話な。俺だって、終始結人しかみてねぇわ」

 八千代まで、僕が喜ぶようなことはワザと耳元で言うんだ。

「ひぅっ····」

「例え話だったのか。わりぃ。····なぁ結人、もし昂平が本当にお前を好きで、万が一迫られたらどうするんだ? 可愛い後輩なんだろ? お前、そういうの無下にできねぇよな」

「んぁ····冷たくしたりは、出来ないけど····、だからって····んんっ····えっちな事は、させないも、んぅっ」

 八千代が執拗に入り口を責めながら、朔は耳を責めてくる。もう、会話なんてしている余裕などない。

「八千代、八千代ぉ····、もぅ、奥、挿れて····入り口、コリコリやら····」

「もう出ねぇもんな。辛いか?」

「ちゅらくない、けろ、もっと苦しくされてイキたい····」

「ん゙っ····結人、ここ学校だぞ。これ以上はダメだ。激しいのは場野ん家で、な」

「お前、昼から授業受ける気ねぇだろ。んな顔で教室に帰さねぇからな」

 僕は今、どんな顔をしていると言うのだろう。自分でわかるはずがないじゃないか。

「じゃ、もうえっちお終い? 僕のナカに、出さないで終わるの?」

 少し意地悪な事を言ってしまっただろうか。

「はっ····、終われるわけねぇだろ。しゃーねぇな。ケツ向けろ。朔、口塞げ」

 八千代は僕のお尻を鷲掴み、朔は僕の頭を持って口におちんちんを捩じ込み、これから1番苦しいのをシてくれるらしい。
 朔は喉の奥で亀頭を扱き、吐く手前でさらに奥まで挿れる。息なんて勿論できない。

「ぇあ゙っ····んゔッ、お゙ごぉっ、がぁっ、ぐぶぇっ····も゙っ、うぶっ····」

「結人、出すぞ。んっ····」

「へあ゙ぁっ····んぅあ゙っ、んぁっ····」

 口の中が朔でいっぱいになる。

「お前、俺より先イッてどうやって口塞ぐんだよ」

「あ····。手で······」

 朔のやらかしてしまったという顔が可愛くて、一瞬油断してしまった。八千代のぐぽぐぽに耐えられず、声をあげてしまった。

「んやあぁっ····」

 朔が慌てて僕の口を手で塞いだ。それでも、八千代の腰は止まらない。

「場野、早くイけ。今のはマズイだろ」

「わーってるよ。そのまま、しっかり口塞いどけよ。イクぞっ····んっ······」

「ふぅん゙ん゙ん゙っ····」

 八千代が奥にたっぷりと出してくれた。お腹が熱くてボーッとしてしまう。
 
「結人、大丈夫か? 頭痛くなってねぇか?」

「大丈夫····。けど、眠い······」

「ふはっ。目ぇ開いてねぇじゃねぇか。このまま俺と一緒に寝るか?」

「寝ない····授業······」

「結人、寝るのか? 5分くらいなら寝れるぞ」

「ん~····寝にゃい····ギュッてしたぃ······」


 朔に手を握ってもらい、心地良い温もりを感じながら落ちてしまった。

「寝たな。こいつ、なんでこんなふわふわしてんだ? 今日酷くねぇか?」

「そうだな。まだそこまで抱き潰してねぇのにな。家で何かあったとか····」

「何か聞いてんのか?」
 
「いや····。でも、朝から元気なかったかもしれねぇな。おやつ、あんまし食ってなかったぞ」

「やっぱ調子悪いんか? チッ····」

「ん····にゃに····八千代? 怒ってぅの?」

「お、起こしたか? わりぃ。怒ってねぇよ。お前が調子悪いん気づけなくてイラッとしただけだ」

 そんな事で舌打ちをするんだ。本当に、どこまで僕中心に生きているのだろう。

「結人、どっか調子悪いんじゃないのか? それか、何か悩みか?」

「んぇ? 大丈夫だよ。なんで?」

「お前がいつも以上にふわっふわしてっからだよ。何かあったんか?」

「えーっと····、本当に何も無いよ。僕、そんなにふわふわしてた?」

「甘え方がな。抱き潰された時みてぇになってた」

「あ、あぁ~······」

 思い当たる節がある。啓吾とりっくんが、2人で1年生の所へ行っている事だ。女の子に絡まれたり、過去に関係のあった子に迫られたりしていないか、そんな事を考えてしまってモヤモヤしていたのだ。
 その所為で、八千代と朔に甘えてしまったのかもしれない。そう思うと、僕って凄く嫌な奴だ。なんて一瞬ヘコんだのだが、それを2人に話すと笑われた。

「ぁんだよ、ただのヤキモチかよ」

「むぅ····そうだよ。あの2人、本当に何人も相手してたみたいでさ、たぶん全学年に元カノがいるんだよ」

「いるだろうな。アイツら1年の頃からヤリチンで有名だったもんな」

「うん。モテるのは知ってたし、まさかこうなると思ってなかったから、モテて羨ましいなぁくらいに思ってたの。今となっては、なんであの頃止めなかったのかって····本当に悔やんでも悔やみきれないよ····」

「んで、自分でも気づかねぇうちにイラついてんだ。お前、相当キテんな。つっても、そろそろ戻ってくんだろ」


 八千代の予想通り、数分もしたら2人が戻った。なんとなく、げっそりしているようだ。

「おかえり。2人とも、どうしたの?」

「や、なんでもないよ。ちょっと疲れただけ。ゆいぴ、こっちおいで」

 僕はりっくんに呼ばれ、膝に乗せられた。そして、首筋に顔を埋めると、僕を吸い込みながら抱き締めた。

「ちょ、りっくんどうしたの?」

「莉久、次俺も。早く代わって····」

「ん····すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ····」

「······りっくん!? 息吐いて! 死んじゃうよ!?」

「はぁ····。癒されるぅ······」

 一体、何があったらこんなにもやつれるのだろう。そして、啓吾の膝に移動すると、啓吾も同じように僕を吸う。

「ねぇ、2人とも何してきたの?」

「······何って? 俺らはなんもしてないよ」

「俺らはっつぅことは、何かされたんだな。どうせ、女絡みだろ」

「朔、そういうとこ鋭いのやめて。俺ら今マジでメンタル死んでるから」

「あれ····? 2人とも、匂い違う。やだ」

「待って。ごめん。今結人に拒否られたらマジで死ぬ。助けて」

「だったら説明してよ。あ、なんか今の、すごい嫉妬深い彼女みたいなセリフだな····。やだなぁ」

「あはは。結人に妬かれんのは嬉しいわ。······実はさ、莉久の元カノにやべぇのがいたんだよ」


 話はこうだ。
 1年生の教室に行って調査をしていたはずが、復縁を迫ってきたりっくんの元カノ同士が揉め始めた。それに便乗した啓吾のかつての遊び相手達が群がってきたのだとか。どんな状況だよ。
 元カノ同士の喧嘩がヒートアップして、りっくんは両腕をもがれかけたらしい。啓吾は、また遊んでほしいと女の子達が攻めてきて密着されたんだとか。本当に、どんな状況だよ。

「それで、女の子達の匂いがするんだ」

「ゆいぴ、鼻良いよね····」

「まぁ、ね。だって、皆の匂い好きなんだもん」

「····っ!! しゃ、シャワー浴びてくるから待ってて!」

 りっくんは僕の期待に応えようとする時、大概アホになる。

「莉久、ここ学校だぞ。んで、たぶん匂いつてんの服だろ。お前、いつもの香水持ち歩いてねぇの?」

「持ってる! ····けど鞄だ······」

「俺、それつけてから教室戻るわ。莉久、行こうぜ」

「誰も貸すなんて言ってないんだけど。啓吾だけゆいぴから嫌がられんのも面白いよね」

「お前、そういう嫌がらせやめろよな。貸してくんなかったら····」

「わかった! 貸すから。それじゃゆいぴ、また後でね~」

 あからさまに何かを隠しているようだ。りっくんが啓吾に弱味を握られている。これを面白がらない八千代ではない。

「莉久、何かあったみたいだな。大畠に逆らえねぇ感じだったぞ」

「みてぇだな。面白そうじゃねぇか」

「八千代、りっくんで遊ばないの。でも、気にはなるね」

 きっと、ろくでもない事なんだろうけど。なんて、僕は軽く考えていた。後に、恐ろしい事件が起こる前兆だったなんて、この時は考えもしなかった。



 放課後、八千代の家でいつも通り過ごしていた。今日は啓吾に洗浄してもらっている。

「なぁ結人、洗浄の練習してるってマジ?」

「んぇ!? なんで知ってるの?」

「莉久から聞いた。自分でしたいの?」

「そりゃまぁ、いつも皆にシてもらうのも申し訳ないし····。それにね、自分でできたら····その····僕がシたいなって時にお強請りしやすいかなって。··········やっぱりしない····」

「なーんで!? お強請りしてよ。あ、やべ。想像したら勃った。ごめん、我慢できねぇわ」

 啓吾は、僕の片脚を持ち上げて挿入した。そして、そのまま僕を抱き上げる。

「んぁっ····啓吾、怖いよぉ」

「大丈夫。絶対落とさねぇから」

「違っ、んやぁ!! 奥っ、逃げらんないからぁ、あぁっ····!!」

「あぁ、逃がさねぇから。しっかり抱きついててな。ほら、くっついてヤんの、すげぇ気持ちくねぇ?」

「気持ちぃ····んあぁぁっ····そこ、コリコリ潰しちゃ、ダメ····出ちゃうよぉ」

「結人、声ヤバい。耳元で絞り出すみたいなんエロすぎんだけど」

 啓吾までそんな事を言うんだ。僕の声なんて、甘くもないし何が良いのだろう。

「なっ····だって耳元で、おっきい声出したら、ん、ふぅっ····耳キーンって、しちゃうでしょ?」

「あはっ、やっさし~。けど、そんな可愛い声出されたらすぐイッちゃいそうなんだけど」

「んんっ····部屋戻っても、またシてくれる?」

「ん゙~っ!!? するよぉ。めっちゃヤる。泣かすっ」

「ひあぁぁっ!! んあぁっ、やっ、待っ····ん゙っ····イ゙ッくぅうぁっ」

「ん····俺も。ギュッて抱き合いながらすんのやべぇね」

「あんっ、待っ、またイクッ、イッちゃうよぉ····やあぁぁっ!!」


 耳に、甘い台詞を流し込まれるとイッてしまう。それでも、容赦なく軽々と揺すぶられる。イイ所を擦られ続け、何度も達してしまった。

「はぁ、んっ、もぅ····いつも泣かされてるよ?」

「結人は気持ちくなったらすぐ泣いちゃうもんな。ホンット可愛いんだけど」

「だって、んんっ····勝手に、溢れてきちゃうんだもん····」

「ゆいぴが可愛いのはわかったからさ、いい加減出ようよ。啓吾、ゆいぴにまだ無理させんなよな。頭痛くなったらどうすんだよ」

 いつの間にか迎えに来ていたりっくんに怒られてしまった。仰る通りで、八千代たちにも長風呂しないようにと言われていたのだ。やってしまった····。

「ごめんごめん。あんまり可愛い事言うからさぁ~」

「ホントばか啓吾。はい、水飲んでね。立て····ないよね。おいで」

 りっくんに優しく抱えられて部屋に戻る。ふわっと抱き上げられると、とても心地良い。

「りっくん、いつもの匂いだ」

 そう言って、りっくんの胸に顔を擦り寄せる。香水の匂いだけど、その中にりっくんの匂いもちゃんと感じる。凄く甘くて、これだけでトロけてしまえるくらい大好きだ。

「ゆいぴ、あのさ、戻ったら調査報告しなきゃだからね。あんま煽んないで」

「え、煽ってないでしょ? なんなの? 僕が息するのも煽ってるって言うの?」

「······そうなるのかな」

「····息しないと死んじゃうよ」

「ゆいぴはちょっとした仕草が可愛すぎるんだよ。話終わったらすぐ挿れたげるからね」

「わ、わーい」

 りっくんの、変態丸出しの滾った目に恐怖を感じた。


 啓吾が戻ってきて、調査報告会が始まる。僕は、りっくんの膝の上でそれを聞く。

「結論から言うと、双子で正解だったよ。なんか複雑っぽいけど」

「兄貴の純平が母親で、昂平が父親に引き取られたんな。んで、母親はすぐに再婚してんだけど、そん頃から純平が外で荒れ出したんだって」

「中学は場野と朔と同じ宮沼みやぬま中で、純平が場野に引っ付いてたの見てた子が何人か居たよ。マジで憶えとけよな、ボケ老人」

 りっくんが喧嘩を売るが、八千代は本当に誰だよって顔をしている。記憶って、そんなにずっぽり抜けるのだろうか。

「んで昂平ね。多分、場野にボコられた後くらいから学校通い出してんの。こっかから超重要だからな。好きな先輩追っかけて来たんだって。女子がめっちゃ落胆してた。好きな先輩って結人だろ。莉久っつぅ事はないと思う」

「わ、わかんないよ? りっくんにも懐いてたんだから。僕より、りっくんについてまわってる方が多かったと思うよ」

「間違いなくゆいぴだよ」

「断言しちゃうの? なんで?」

「だって、ゆいぴが好きな俺らと、同じ目でゆいぴの事見てたんだよ。俺らにはわかるの」

「えぇ~······。でも、やっぱりさ、本人に聞いてみなくちゃわかんないよね」

「それ聞いてさ、好きだって言わてたら結人はどうすんの?」

 朔にも言われた。僕は、昂平くんを無下にできないだろう、と図星な事を。けれど、それは受け入れるという事ではない。

「ごめんなさいって言うよ」

「襲われたらどうすんだよ。まさか、俺ら同伴で告白させる気?」

 啓吾が痛いところを突いてくる。そもそも、告白される前提な事に驚いているのだが。

「まぁ、言うなら2人ん時狙うだろうな。結人に首輪つけてでもさせねぇけど」

 八千代は僕をペットか何かだと思っているのだろうか。首輪だなんて····ちょっといいかもと思った僕のアホさに嫌気がさす。

「純平と昂平は、お互い双子だって知ってるんだろ? 交流はあんのか?」

「それがねぇ、仲良いんだって。場野にボコられた後くらいから。これ、ワンチャン復讐狙ってたりしねぇ?」

「復讐とゆいぴ····。待って、危なくない?」

「え、何が?」

「何がじゃねぇよ。お前を自分らのモンにして俺に復讐っつぅのが手っ取り早いし、昂平は一石二鳥だろ」

「そんな····映画みたいな話ないよ~」

「ゆいぴさ、甘く考えてるみたいだけど“現実は小説より奇なり”って知ってるよね?」

「待って、知らない」

「なんで啓吾が答えんの。つぅか知らねぇのかよ。······はぁ。ゆいぴさ、過去に散々危ない目に遭ってんだよ? そういうのって、起こりうる話なんだよ」

「ねぇ、小説より····って何なの? 朔、教えて」

「実際に起こる出来事は、空想の小説よりも不思議だっていう、イギリスの詩人の言葉だ」

「ほぇ~····あざっす」

 確かに、りっくんの言う通りかもしれない。過去に数度襲われてしまったのは、一重に僕の危機感のなさによるものだ。

「わかった。ちゃんと警戒するね。告白は、呼び出された時点で断る。それで、皆から離れない。どう? 完璧だよね」

 僕は、りっくんを見上げて言った。そうしたら、キスをされた。何故だ。

「んっ····んんっ······」

「ふぅ····。ゆいぴ、不意打ちって知ってる? ゆいぴは連れ込まれやすいし、誘拐までされちゃうんだからね。俺らは全力で守る気でいるけど、ゆいぴもちゃんと守られててね」

「文化祭の時みたいに、勢いで単独行動はするなよ。じゃないと、いい加減GPS埋め込むぞ」

「····はい。朔、怖いよぉ」

「朔はマジでやりそうだもんな。つかよぉ、めんどくせぇな。結人狙ってんの確定だろうし、双子絞めた方が早くねぇか?」

「不良の意見は置いといてもね、俺も直接言った方が手っ取り早いかとは思う」

 あれ? りっくんと八千代、仲悪くなってるのかな。りっくんがずっと余計な一言を添えている。

「あの2人、人の話聞くようには思えないけどなぁ。特に純平くんは」

「昂平が噂つってたけど、どこまで知ってんだろうね。こっちから全部晒すのもアレじゃねぇ?」

「でも、納得させて退かせるには、場野も含めて俺らが居ること言わなきゃダメじゃない?」

「そう、それな。そうなんだけどなぁ····」

「俺がネックか····」

「せ、説明してもらってもいい?」

 どうやら、八千代が僕と関わっているとなると面倒らしい。
 皆は、八千代が居ないメンツだと、昂平くんは舐めてかかってくると予想している。しかし、八千代も居ると知れたら、2人がかりでそれを悪用する可能性があるのだとか。さっき言っていたやつだ。

「噂って、どこまでの話なの? 僕と誰かが付き合ってるとかなの? 皆と付き合ってるってとこまで?」

「それがねぇ、何パターンかあったんだよね」

 まずは、僕と皆の仲が怪しいという、1番ふわっとしたもの。次に、僕と皆のうちの誰かが付き合っているというもの。そして、僕が皆を弄んでいるというもの。
 これを真に受けて調べた人が居て、僕と皆が真剣に付き合ってるという噂も流れているらしい。驚いたのは、それを否定してくれる人がいた事だ。
 委員長と冬真くん、それに香上くん。この3人が、噂を聞く度に『そんなわけない』と上手く誤魔化してくれているらしい。
 冬真くんはきっと、僕が困らないように協力してくれているのだろう。協力したくなくなったなんてっていたけれど、やっぱり優しい良い人だ。

「そんで、どうする? たぶん、昂平は最悪のパターンのやつだと思ってるだろ」

「だろうね。····ちょっと様子見て、それ次第で強行するか考えよっか」

「え~、なに? 莉久も後輩くんには甘いんだ」

「いや、とっくに敵だと思ってるよ。俺は割り切れるけどさ、ゆいぴにとっては可愛い後輩だよ。あんまり無下にしちゃうのも、ねぇ」

「そうだな。結人には辛い決断になるかもしれないな。結人、俺らのやり方が嫌だと思ったら、ちゃんと言ってくれよ」

「うん。ありがと、朔。皆も、気を遣わせてごめんね」

「いや。俺らが躍起になったら、結人の気持ちを置き去りにしがちだからな。気をつけねぇとと思ってたんだ」

 朔は、どれだけ感情が高ぶっていても、僕の気持ちを大切に想ってくれる。えっちの時はぶっ飛んでしまう事もあるが、それはまぁご愛嬌。
 朔だけではない。皆も、僕の気持ちを考えて行動してくれる。けれど、りっくんと八千代は特にだが、どうにも過激だから困る事もある。

 さて、純平くんと昂平くんの動向に注意しなければ。また皆に心配と迷惑を掛けないように。
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