ちっこい僕は不良の場野くんのどストライクらしい

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1章 始まりの高2編

僕はもう······

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 文化祭が終わり、今学期の残す行事は期末考査のみとなった。そこで、中間同様、赤点を防ぐべく勉強会が開催されている。

「俺さ、めっちゃ頑張れる最強の方法思いついたんだけど」

「却下」

 りっくんが冷ややかな目で啓吾を見て言い捨てた。

「まだ言ってないだろ! あのさ──」

「却下だな」

 朔にまで、ぞんざいに扱われている。

「お前ら酷くね!? 聞いたらマジで俺のコト天才だと思うかんな! 聞かねぇと後悔するぞ」

「もぅ······。啓吾、何思いついたの?」

「あ、ゆいぴ聞いちゃダメだよ。どうせロクな事じゃないんだから」

「えー、でも聞くだけ聞いてあげようよ。可哀想でしょ」

「結人、ホンット愛してる。あんね、テストで平均点超えたらさ、ご褒美ちょうだい?」

「はぁ~。そんな事だと思ったけどね。どんなご褒美?」

「ちょっとえっちなヤツでもいい?」

「ぼ、僕にできることなら····」

「オモチャ挿れたいんだけど。バイブじゃないヤツ」

「え、なに? 他にどんなオモチャがあるの?」

「ちょっと啓吾。純粋無垢なゆいぴに、あんまそういうの教えんなよ」

「僕、そんな乙女じゃないもん。いいよ。危なかったり痛くないなら、なんでも挿れていいよ」

「あー、ゆいぴ! ムキになってそういう事言わないの! 啓吾だよ? 何持って来るかわかんないだからね」

「結人に害になるようなもん使わねぇよ! 俺、どんだけ信用ねぇの?」

「信用してない訳じゃないって。啓吾バカだからさ、勢いでやっちゃうトコあるでしょ」

「結局じゃん! 結人が嫌がったらやんねぇから大丈夫だよ。俺は結人が善がり狂うとこ見たいだけだから」

「俺も、結人が善がり狂うとこ見てぇな」

 案外、朔は啓吾の提案に乗りやすい。さっきは却下してたくせに。やるとは決まっていないうちから、既にワクワクしているようだ。

「だろ!? 結人がオッケーしてくれたら俺、めっちゃ頑張れるから」

「そういうモチベーションの上げ方ってどうなの? て言うか、そんなので上がるの?」

「上がりまくりだよ? 乱れ善がる結人想像しただけで····あは、もうやべぇ····」

「何突っ込む気か知らねぇけど、死ぬ気でやれよ。全教科、平均以上だぞ」

 八千代まで啓吾にエールを送る。絶対に面白がってるだけだ。けど、条件は厳しい。
 僕にオモチャを突っ込むのが、そんなに楽しいのだろうか。バイブも気持ち良かったけど、無機物な感じが拭えなかった。突っ込む側の気持ちはわからないから、僕には何とも言えない。正直、オモチャよりも皆のがいい····なんて絶対言えないけど。

 流れでご褒美をあげる事になった。それからと言うもの、啓吾の集中力が跳ね上がった。時々ニヤけたり、股間をモジモジしているのを見ると、身に及ぶ危険を感じざるを得ないが。



 連日、気合いを入れっぱなしで啓吾がお疲れな様子だ。けれど、ご褒美の為に今日も勉強すべく、放課後は八千代の家に入り浸る予定だ。

 靴箱を出て5人で歩いていると、可愛らしい小柄な女の子に声を掛けられた。1年生の女子だ。
 文化祭以降、懲りずに告白されている恋人たちの出番かと思いきや、まさかの僕だった。
 女の子に告白されるなんて人生初だ。こんな日が来ることを、どれほど夢見たことか。だけど、僕の口から出たのは、至極当然の返事だった。

「ごめんね。僕、恋人が居るから、気持ちは受け取れないんだ。でも、僕の事想ってくれてありがとね」

 女の子は、僕の返事を聞いて涙を浮かべた。本当に、僕の事を想ってくれていたのだろう。一礼すると走り去ってしまった。
 待ちに待っていたはずの女の子からの告白。それも、少し前の僕ならどストライクなタイプだった。それをあっさり断るなんて、どうかしてる自覚はしている。けれど、今の僕は少しも揺らぐことはなかった。


「お前さ、覚えてっか? 俺に抱かれる前に、女抱きてぇつってたん」

「えー? 忘れたぁ」
 
「ゆいぴ、そんなこと言ってたの? やだぁ····」

「いや普通だろ。今は突っ込みてぇとか思わねぇの?」

「啓吾、突っ込むって言い方ね····。んー、そうだなぁ····突っ込んだことないからわかんないや。けど、満足してるからかな。最近そんなふうに思ったことないなぁ」

「完全に雌になってんな····」

 八千代が極々小さな声でよからぬ事を言ったようだが、聞こえなかった事にしてあげよう。
 自分の中で、雄の部分が消滅しつつある事なんて、とうに自覚している。なんならもう、雄としては諦めているのかもしれない。けど、皆に教えてもらった自慰のやり方でも、1人じゃイけなかったなんて事までは言えない。
 
「まぁ、えっちは置いといてさ。女の子に告白されても、嬉しいとか思わなくなっちゃったんだけど。僕の事こんなにしてくれちゃってさ。ホント、ちゃんと責任とってよね」

「任せろよ。ジジィになっても離してやんねぇからな」

 八千代は僕の頭をグリグリ撫でながら、にっこにこの笑顔で言った。

「えへへっ。······で、りっくんはどうしたの?」

 りっくんが、朔に隠れて涙ぐんでいる。目にゴミでも入ったのだろうか。

「ゆいぴが、女の子フッて俺ら選んでくれるなんて····俺····ホントもう死ぬかもしれない」

「あはは。死なないでね。僕自身ビックリしてるよ。あんな可愛い子に告白されたのに、人生初の告白だったのに、あっさりフッちゃうなんて····」

「後悔してんのか? やっぱ、女の方がいいか? 抱きてぇんじゃねぇのか?」

「ど、どしたの? 朔、落ち着いて? 僕は朔たちが好きだからね。大丈夫だよ。あのね、ホントに皆が好きだよ。だから、そんな不安そうな顔して肩ガシッてしないでぇ」

「あ、わりぃ。····そうか。無理してねぇか?」

「してないよ。それにほらぁ、僕、もう皆にシてもらわないとイけない····し······はぁっ!!」

 言ってしまった。言えないなんてフラグを立てたから。朔が深刻そうだったから····。やってしまった。

「結人、なんつった? こないだオナり方教えたじゃんね? イけなかったの?」


「············イ、イけ、なかった、です······」

 か細い声で、振り絞るようにしてようやく答えた。が、恥ずかしいやら情けないやらで、熱くなった顔を上げられない。きっと、林檎よりも赤くなっていることだろう。

「おーし、今日やる事決まったな。勉強どころじゃねぇわ」

「だね。ゆいぴの尊厳を取り戻そう。けど、女の子とよろしくする為じゃないからね」

「ああ。それは男として辛すぎる」

 朔までが、僕を憐れむような目で見てくる。1人でイけないのが、そんないけない事なのだろうか。

「俺、ド●キ寄ってから帰るから、先行ってろ。ローションもそろそろ無くなりそうだったしな。ほら、鍵」

 僕に家の鍵を渡すと、八千代はなにやら楽しげに行ってしまった。

「アイツ、制服で買えんの? 俺、こないだローション買う時、制服で行っちゃって買えなかったんだけど。レジでめっちゃ恥ずかしかったわ」

「あっはは。だっせぇ~。まぁ、場野ならいけんじゃないの? 老け顔だし。莉久は童顔だもんなぁ~」

「八千代は老け顔じゃないよぉ。大人っぽいの」

「どうせ、俺は童顔だから私服でも年齢確認されたよ。どーせ、ネットじゃないと買えないよ····」

「もう、そんなの気にしないの! 僕なんて····未だに子供料金で言われること多いんだから」

「結人は可愛い顔してるうえにちっこいからなぁ。けど、160はあんだろ? 子供料金はいくらなんでもだよな」

「そうでしょ!? 僕も不思議に思ってたの」

「いや、お前それは····喋り方とか仕草が子供っぽいからじゃねぇのか?」

 朔がとんでもない事を言い出した。いやいやいや、そんなはずはない。僕だって高校生なんだから、年相応に振舞ってきたつもりだ。

「「確かに~」」

「え!? 確かにって何? 僕、高校生らしくないの?」

「ゆいぴはズバズバ言う時以外、基本的に喋り方が優しいからさ」

「仕草はそうだなぁ····幼女って感じ?」

「嘘でしょ····。僕、そんな風に見えてるの? え、やだ····僕帰る······」

「えーっ!? 待って待って! ごめんって。可愛いって言いたかっただけだから。幼女は言い過ぎた。んーっとねぇ、小5くらい!」

「啓吾、それじゃフォローになってないでしょ。あのね、ゆいぴは根っから優しいからさ、それが言動に出てるんだよ。それとも何? ガサツになりたいの?」

「そういう訳じゃないけど····」

「だったらいいじゃん。ゆいぴの心が綺麗って事だよ。俺は、そんなゆいぴが大好きだよ」

 僕の顔を手で包み、おデコをコツンとくっつけて、甘い言葉で丸め込んでくる。りっくんはいつもこうだ。狡い。

「わかったよぅ。もう早く八千代の家行こ。ところで、勉強どころじゃないって、何するの?」

「それは、場野ん家行ってのお楽しみだな」

 啓吾が、人差し指を口に当て、ニコッと笑って言った。



 八千代の家に着くなり、まずは洗浄だ。今日はりっくんの番。

「ゆいぴ、自分で洗浄したいって場野に言ったんだって?」

「ふぇ····? うん。楽しみ、奪うなって····んっ、言われた」

「そだねぇ。これは俺らがしたいなぁ。ゆいぴ1人に負担かけるの嫌だからさ。けど俺は、自分でもできるようになったら良いと思うよ」

「そうなの?」

「うん。俺らに抱かれたい時とか、自分で準備して待っててくれたら嬉しい」

「なっ、そんな、事······しても引かないの?」

「えー? なんで引くの? 嬉しいだけだよ」

「じゃ、ね、今度やってみる」

「ん、いいね。ちゃんと見ててあげる」

「え? 見とくの?」

「当然でしょ? わかんない事あったら教えてあげるから」

「そっかぁ····。ありがと。りっくん、ホント優しいねぇ」

「でしょ? けど、結人にだけだからね」

「ひあぁぁっ」

 りっくんは時々、こうして突然“結人”と呼ぶ。それも、耳でイかせる為に、耳元で囁くように言うんだ。

「さ、ベッド行こうか」

 今日の引き上げ担当である朔を呼ぶ。既に立てなくなった僕は、迎えに来てくれた朔に抱えられ、ふわふわのバスローブに包まれてベッドに運ばれるのだ。

「結人、イッたばっかか?」

「今ね、耳でイかせちゃった」

「そうか。可愛いな」

 朔は、僕の額や頬にキスをしながらベッドに向かう。その途中、八千代が帰ってきた。

「お、今終わったとこか? 丁度いいわ」

「八千代、おかえりぃ。····何買ってきたの?」

「ん゙っ····おかえりって、いいな。ただいま、結人。んで、買ってきたんはローションとオナホな」

 僕の「おかえり」がそんなに良かったのか、八千代の顔が少し赤らんだ。

「おなほ····オナホ?」

「結人が手でイけなかった時の為だろ」

 朔が、しれっと意味の分からないことを言った。

「え、僕、今から何されるの?」

「されるんじゃねぇよ。自分ですんだよ」

 八千代も訳の分からないことを言う。自分でって、何をするのだろう。
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