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1章 始まりの高2編

case.りっくん-2

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「はい、アイスティーだよ」

 ベンチで座って待っていた僕に、ちょうど飲みたいと思ったいた物を的確に与えてくれる。それは、りっくんに限った事ではない。僕の恋人たちは、一様に僕の思考を読み取ってしまうのだ。

「なんで毎回、みんな僕が欲しい物わかるの? 超能力あるの?」

「あー····っとね、言っていいのかな····。ゆいぴ自覚してないと思うけど、欲しい物ジッと見る癖あるんだよね」

「え!? ホントに!?」

「うん。めっちゃ可愛く見つめんの。ほんの数秒程度だけどね。たぶん皆、朔ですら気づいてるよ」

「そうなの!? えー····気をつけなくちゃ······。うわぁー······なんか、すごい恥ずかしいや······」

 エスパーなわけがなかった。単純に、僕自身が無意識でやらかしていただけだった。

「やだ。見てよ。ゆいぴの欲しい物わかりやすくて、こっちは助かってるんだから」

「やだよぉ。凄いお強請りしてるみたいじゃない」

「だったら、いっその事お強請りしてよ。ね、今何が欲しい? そろそろ、おやつ食べたいんじゃない?」

 りっくんは僕の腰に手を回し、耳元に擦り寄って聞く。

「やぁっ、何? そんなえっちな聞き方しないでよ····」

「普通だよ?」

「普通じゃないよ! ····ちょっと待って。僕以外にもそんな風に話すの?」

「ゆいぴ以外にこんな密着しないよ。これまでの彼女にだって、こんな接し方しなかったよ」

 りっくんは意地悪く、耳元で話し続ける。どんどん顔が紅潮していくのがわかる。

「ひぁ····りっくんも声えっちなんだから、耳元で喋んないでぇ」

 耳から顔まで熱くなってしまった。なんでこう、僕の彼氏たちは声まで良いのだろう。僕って、声フェチだったのかな?
 僕はあまり声変わりしなかったから、そんなに低くならなかった。だから、男らしい声が少し羨ましい。皆のは特に、耳に心地良い低音なんだもん。
 
「ハァ····。ゆいぴ、それ飲んだら行きたいとこあるんだけど」

「んぇ? 飲みながらでいいよ?」

「そう。じゃ、行こうか」

 この時、りっくんの顔を見て気づくべきだった。僕がまた、無意識に煽ってしまっていたことに。
 りっくんに手を引かれ、すぐ近くの爬虫類ハウスに入った。ここはさっき一度見たのだが、もう一度見たいのがあるのかな。

「ねぇ、行きたい所って? もう1回見たいのあるの?」

「うーん。見たいのは動物じゃなくて、ね、ゆいぴのいやらしい顔かな」

「え、何それ──っ」

──ダンッ
  
「んぁっ」

 人気ひとけのない通路で壁ドンされ、激しく深いキスをされた。
 この間、八千代に注意してた口で僕の口を犯してくる。これだから、りっくんの理性を飛ばすなと言われるんだ。

「ぁ····ふぅっ····はぁ······んぅっ」

 あまりにガッツいてくるから、思うように息ができない。脳が酸欠になっていくのがわかる。ふわふわして気持ち良い。

「んっ······んはぁ····。ごめん、もうちょっと····」

 余裕の無いりっくんは、とんでもなくえっちだ。僕の顔を両手で包み、本当に食べてしまうかのように貪ってくる。

「人、来たらどうするのぉ」

「んー? 見せつけてやる」

 珍しくいかつい目をしたりっくんが、舌なめずりをして再び口を犯しにくる。さっきよりも激しく舌を絡め、僕の唾液を啜ってしまいそうなほど吸われる。こんなにされると、腰が抜けてしまうじゃないか。

待ってんぁっへりっくんいっぅん

「ん?」

 反応はしてくれるけど、1秒も待ってはくれない。

だめあぇ腰がほひぁ····」

 伝わったのか、腰をグッと抱き寄せられた。けれど、そういう事じゃない。腰が抜けたら、この後どうするつもりなんだろう。

「んはっ····。ゆいぴ顔やば。えっろ」

 りっくんは口の周りを指で拭った。その仕草といい、僕を見るやらしい目つきといい、僕の理性を飛ばすのに充分事足りた。

「腰、抜けちゃったでしょぉ····も、ばかぁ」

 りっくんは僕を抱き上げると、ハウスの出口付近にある休憩所のベンチに座らせてくれた。

「ホントごめんね。ずっと我慢してたんだけど、ゆいぴのエッチな声聞いたらぶっ飛んじゃった」

 口調は普段通りなのに、顔が全然戻っていない。目が座ったままだ。紅潮した頬から、昂揚具合が窺える。

「ねぇ、ちょっとだけえっちしたい。りっくんのこれ、欲しい····」

 僕は、りっくんの硬くなったものをズボン越しに撫でた。お強請りって、こんな感じで合っているのだろうか。

「上手にお強請りできんじゃん。狡いなぁ····。わかった。じゃ──」

「ん。我慢できない····」

 りっくんの服の裾を摘み、上目遣いを駆使して欲しがってみた。これには、流石のりっくんも呆れた顔をした。少し、露骨すぎただろうか。

「はぁー······こっち来て」

 りっくんは、トイレの個室に僕を連れ込むと、鞄から洗浄セットを取り出した。

「りっくん、いつもこんなの持ち歩いてるの? そんなに僕とえっちしたいの?」

「したいに決まってるでしょ。ゆいぴが死んじゃわないなら、一日中犯してたいよ。ずっと結人のナカに居たい。····だから、あんま煽んないでって言ってるでしょ」

 りっくんは興奮のあまり、息も絶え絶えに言葉を漏らす。単純な僕は、その色気にアテられてしまう。

「りっくんの理性ぶっとんだ時ね、結人って呼ぶのドキドキするから好き」

 りっくんが洗浄セットを手放し、勢い良く僕の顔を包んで扉に押し付けた。ハァ、ハァと、息を漏らしながら、僕の耳に声を流し込む。

「そう。だったら時々呼んであげるね。すっごくエッチに“結人”って」

 耳が溶けてしまうかと思った。ゾクゾクが全身を駆け巡る。

「んやぁっ」

「あれ? もしかして、耳でイッた? っはは。おもしろ。今日は挿れないで、こっちでいっぱいイかせちゃおっかな」

「なっ、やだよぉ」

「挿れなくてもイけるでしょ? 俺の声だけで」

 吐息混じりに耳に流れ込んでくる、脳が痺れるような低く甘ったるい声。腰と腹の底をズクンッとさせる。

「ふぁ····ん、その声やだぁ····ホントにイッちゃう」

 全神経が耳に集中する。首筋から顎をそっと持ち上げ、耳をみながら囁く。
 りっくんは、僕のおちんちんを出して、先を手で軽く包んだ。自分の手に出させるつもりらしい。本気で、耳だけでイかせるつもりなんだ。

「ホントに声だけで、耳でイけそうだね。あはっ、イかせてあげる。あ~····結人のえっちな声聴いてたら、俺までイッちゃいそう。ねぇ、イッていいよ?」

「あぁ、んんっ、えっちすぎるよぉ····」

 喘ぎ声の様ないやらしい声を出すから、本当にえっちしてるみたいだ。ゾワゾワが止まらない。

「あぁ····可愛いなぁ····んっ、ほら結人、イけよ」

 普段は絶対に命令口調でなんて言わないのに、こんなの狡い。耳だけでイカせると言ったのに、時々おちんちんの先っぽを小指で弄る。先走りでヌメっている所為で、にゅるにゅるして気持ち良い。
 そして、1番驚いたのは、言葉に身体が従うよう躾られていた事だ。

「んっ····んあぁっ」

「ははっ。ホントにイッちゃったんだ。ゆいぴの身体、俺らにどんどん変えられちゃってるね。すっごいえっちに····」

 耳に絡みついてくるように、ねっとりとした話し方。まるで、耳に射精されているようだ。不思議と、耳だけでなくお腹の底まで熱い。

「あれ? また軽イキした? 出てないけど····ナカでイッたの? 可愛いなぁ······あー····ダメだ。止まんなくなる。ゆいぴ、1回落ち着こう──って、ちょっ!?」

「りっくんにも気持ちくなってほしぃ····」

 僕は、りっくんのズボンのファスナー手をかける。

「う、嬉しいけどダーメッ」

「なんでぇ? りっくんの、食べちゃダメなの?」

「ン゙ーッ······今日はダメ。俺が連れ込んだのにごめんね。でも、今日はそういうの無しって決めてるから」

「もう、したよね?」

「まだシてない。ゆいぴのナカに入ってないからセーフ」

「むぅー······わかった」
 
「むくれないでよぉ。可愛いだけなんだからぁ」

 いつものりっくんに戻ってしまった。少し残念だ。りっくんの、ナカに欲しかったな。


 ペースを取り戻したりっくんは、この後の予定に従い、本屋さんに連れて行ってくれた。僕が欲しかった本が取り揃っている、大きな本屋さんだ。見ているだけでも楽しい。

「りっくんは、いつもどんな本読むの?」

「んー、俺は小説だったらミステリーが多いかな。漫画は友達に借りて読んだりしてたけど、最近は自己啓発本読んでみたり······いや、ゆいぴの見たい本は?」

「あー······大丈夫」

 なんて言うのは嘘だ。見たい本は山のようにある。しかし、ほとんどが本棚の上部あるから届かない。人が多いから、脚立に乗ってモタモタするのも恥ずかしい。こんな時は、だいたい諦めるのが定石だ。

「そうなの? アレは? こないだ気になるって言ってたヤツじゃない?」

「うっ····べ、別にぃ······」

「ん? あぁ~······」

 りっくんは、何かを察したように、その本を取ってくれた。背伸びもせずに届くなんて、なんて羨ましい身長なんだ! なんて羨ましい手の長さなんだ! 悔しすぎて、文句の一つも言えずに受け取った。

「見たいのあったら言ってね。俺は居ないと思ってゆっくり見てくれていいからね。違うのが良かったら、遠慮しないで言ってね」

「申し訳なさすぎるんだけど······」

 と言いつつもそうしてもらい、りっくんも一緒に読めそうな物を数冊買った。今度貸してあげよう。

 夕飯は、りっくんお勧めのパスタを食べた。ムール貝が乗った、お洒落なやつだ。どうしてこうも、りっくんが絡むと全部がお洒落に見えるのだろう。


 食べ終わると、宣言通り真っ直ぐ帰路についた。家まで送ってもらい『また明日、学校でね』と言うと、キョロキョロと周囲を見回し、優しくバイバイのキスをしてくれた。


 今日は、もっと大人っぽいデートコースかと思って気張っていたけど、全然そんな事はなくて。僕が変に気負わず、目一杯楽しめるコースにしてくれたんだと思う。注意点は2つとも守れなかったけど。
 噂で聞いていた感じだと、りっくんのデートコースは大人っぽいと女子が騒いでいた。動物園なんて、絶対に行かなかっただろう。本当に、僕の事しか考えていないんだから····。
 だけど、また今度こんな機会があったら、大人っぽいデートコースでお願いしてみようと思う。自分の嫉妬深さには、ほとほとウンザリだ。
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