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24.*****
しおりを挟むこれまで通りに、芯の言動を予想し支配するのは困難を極める。現状、僕自身の心でさえ制御できていないのだ。どう対応するのが正しいのか、今は思考回路が正常に繋がらない。
「えっと····なんで?」
普通に聞いてしまった。駆け引きや誘導も何もない。芯の真意を知りたい一心で、まっすぐ芯を見ていた。
「はは、先生のそんな顔初めて見たかも。なんだろうな····よく分かんねぇけど、抱きたくない」
僕がお古だからだろうか。それとも、奏斗さんへの反抗の一端なのだろうか。
正直、芯との関係が逆転しない事に安堵した。だが、これは終わりを告げられたも同然だ。
芯自身も戸惑っているのだろう。言葉を発する度に躊躇っているように見える。
ようやく、合意で行為に及ぶ事ができるようになったのに。全てが破綻してしまったんだ。僕は、そう思っていた。
けれど、芯の思いがけない一言で希望に指が触れる。
「先生、今から俺の事抱ける? 俺さ、先生に抱かれんの結構好きみたいなんだけど」
それは、いつも通り躾ろという意味だろうか。あまり気乗りはしないが、芯が求めてくれるのならば──。
「だ、抱けるよ。酷くしてもいいなら····」
「ふはっ、必死かよ。つぅか酷いのとかいつもじゃん」
芯の屈託のない笑顔。間抜けな僕を見て気分がいいのだろう。
それよりも僕は、自分の発言に驚いた。身体は抱かれる事を望んでいる。なのに、やはり芯を抱きたい。心と身体が、どんどん乖離していくようで気持ちが悪い。
僕が拒絶ばかりして、奏斗さんに『もう抱かない』と言われた時を思い出す。その時初めて、僕から『抱いてください』と言った。
その瞬間の僕と心境は違えど、完全に身体を許した証だ。自分が雌である事を理解し、雄を求める。それは同時に、愛を求めているのだ。僕は、そう解釈した。
奏斗さんとの記憶は、今思えば最低なものばかりだ。その所為か、別れてから後ろが疼くことは一度もなかった。
別れたと言っても、そもそも“付き合っていた”と言えるのか、分からない関係ではあったけれど。
奏斗さんを前にした瞬間、あの頃の感覚が全身を巡り、一瞬でダメになってゆくのを実感した。恐怖しか感じず、心臓が壊れてしまいそうだった。それでも、奏斗さんを求める身体に絶望した。
だからなのか、僕は芯に甘えてしまう。今日だけ、そう自分に言い聞かせて、縋るように芯を呼ぶ。
「芯、膝においで。僕のこと、優しく抱き締めて」
あぁ、“芯”と呼ぶ事が愛おしい。交わっていない時も、芯を愛しいと想える事が増えた。それが、僕の中で“僕”を根底から塗り替えてゆく。
これが、幸せという感覚なのだろうか。僕は、愛し方を間違えていたのだろうか。
奏斗さんと再会した事で、僕と芯の在り方を今一度考え直せる気がする。悪い事ばかりでないのなら、結果オーライと思っても良いだろうか。
「ん··。別にどうでもいいんだけどさ。俺には酷くすんのに、自分は優しくされたいの? ったくさぁ、我儘すぎんだろ」
「ごめんね」
芯の呆れ顔に、焦燥感が足をバタつかせる。
「別にいいつっただろ。····なぁ先生、俺の事マジで好きなの? ずっとさ、抱く為に甘い事言ってただけなんじゃねぇの?」
「愛してるよ、本気で。僕の言う“愛してる”が、正しいのかは分からない。けど、僕はずっと本気だった。芯を抱く為の嘘なんて、囁いた事はないよ」
「あっそ。どうでもいいけど。あのおっさんに負けてんのだけは····なんか腹立つからさ」
強がりなのか、素直になれないのか、頬を紅潮させてむくれる芯。その本心を知りたい。
僕は芯を裸に剥き、心の乱れを整えるように酷く抱いた。奏斗さんを吹っ切れたら、交じ合う時の愛し方も穏やかになってゆけるのだろうか。
今はまだ理解できない事を薄ぼんやりと考えながら、芯の首とペニスを短い紐で結び、身体が丸まるようにした。反れば陰部が千切れるだろう。
横に向けた芯の、片脚を抱えて奥を抉り潰す。これをすると、いつも仰け反って悦ぶ。けれど、今日は流石に反れずに耐えている。相当苦しいだろう。
僕も、同じだったからよく分かる。
「芯、もう少しだけ奥····潰すね」
「やめっ··それ以上挿ぇたら····反っちゃ··んんっ··待っ──」
「反ったらどうなるの?」
「ちんこ··千切ぇぅ····」
「千切れていいの?」
「やらぁ····」
「だったら、僕がどれだけ奥に挿れても絶対に丸まっててね。芯のおちんちん、要らないけど千切れるのは可哀想だから」
耳元で囁くと、心底怯えた様子で『ひぅっ』と小さな悲鳴を上げる。可愛い芯。僕は、容赦なく根元まで突き挿した。
結腸口を亀頭で執拗にイジめる。ナカの痙攣が止まらなくなると、カリが引っかかるギリギリまで腰を引く。そこから一気に根元までねじ込み、芯がイキ狂うピストンをする。そして、涙と鼻水でくしゃぐしゃに汚くなった芯の口を、手で力一杯塞ぐ。
目を見開いて慌てる顔を、僕に助けを乞う震えた瞳を、心の底から愛しいと想う。····奏斗さんも、僕にこんな気持ちを抱いた事があったのだろうか。
芯は呼吸をするため、顔を振って逃げようとする。それはそれはとても力無く、僕にだけ見せる弱々しい芯だ。
「ねぇ芯、このまま死んでみる?」
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