crisis

よつば 綴

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4.***

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 翌日、芯が登校してきた。僕の言葉が芯に届いたのだと歓喜したけれど、決して顔には出せない。
 登校するなり芯は、僕のテリトリーである生徒指導室に入り浸る。教室へは顔も出さない。

徳重とくしげ君は、友達とかいないの?」

「チッ····いない。つぅか要らない」

 初めは強がりなのかと思ったが、そうではなく。そういうものを、心底煩わしいと思っているようだった。
 僕は他人と繋がる事を強要はせず、僕の傍に居ることを容認していた。だって、それは願ってもない事なのだから。

 けれど、あまりに生意気な口ばかり叩くので、お仕置きをしようと思った。と言っても、ちょっとした意地悪をしたくなっただけだ。
 丁度、昨日不良に殴られた箇所が青紫色に変色している。その傷んでいるような、痛々しい二の腕をつついてやった。

「いってぇ····」

「喧嘩、しちゃダメだよ?」

「放っとけよ。アンタに関係ねぇだろ」

「あるよ····」

「あぁ····、だもんな」

「違うよ。君が好きだからだよ。心配なんだ」

「······は?」

 困惑した芯は何も言葉を置かず、逃げるように部屋を飛び出した。想いを告げるには早すぎたのだろう。
 けれど、僕にはそういう事のが分からなかった。



 それから数日、芯は再び不登校になっていた。寂しくて、心配で、足が勝手にあの場所へ向く。また、喧嘩なんてしていないだろうか。

 街中で見かけた芯は、見知らぬ女生徒と歩いていた。腕を組み、親しげに芯を見上げる女の子。僕は吐き気を催した。
 ふわっと柔らかそうな長い髪に、桜色の唇。長いまつ毛を羽ばたかせ、嬉々として芯を見つめている。
 煮え滾る腹の底で、『は僕のだ』と叫んだ。けれど、社会が、秩序が、法が、立場が、煩わしいその全てが、声に出す事を拒んだ。

「徳重君!」

「あ? うわ····。なに? せーんせ」

 意地の悪い笑みだ。僕の心を見透かしているかのような、ざまぁみろとでも言いたげな表情かおで僕を見る。

「あ、明日は学校に来なさい。出席日数が足りなくなるから····その······」

 僕は、学校に来させる理由を探す。けれど、嫉妬で狂った僕の脳は、到底まともに働かなかった。

「いいよ、明日は行ってあげる。明日だけな」

 僕は、これを好機チャンスだとは思えなかった。
 明日、行動を起こさなければ、芯との関係は教師と生徒で終わる。そう確信した。

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