地獄0丁目

XCX

文字の大きさ
上 下
78 / 91
日常編(時系列バラバラ)

3

しおりを挟む
 待ちに待った夜。
 お母様は寝巻き姿で、私の部屋にやって来た。

「お母様、いらっしゃい。お待ちしてましたわ」
「メ、メイムル!」

 にっこりと笑みを浮かべて迎えた私を見て、お母様は驚いた様子で目を見開いた。
 辺りを見回すと、慌てて私を部屋の中に押し戻した。

「お母様どうしたの?」

 いつもと違う反応に首を傾げて、お母様の頬を撫でると、その顔はみるみるうちに真っ赤になった。

「メイムル、そんな格好しちゃだめって、おれ何回も…!」

 憤慨するお母様の言葉に、自分の体を見下ろす。
 たっぷりと贅沢にレースがあしらわれた黒のベビードールと、お揃いのTバックショーツ。
 いつもより布面積は広いのだけれど…何を怒っているのかしら。

「お母様、この間のよりかは布地は大きくてよ。何か問題でも?」
「問題ありまくりだよ!胸が見えてる!」

 もう一度胸を見下ろす。
 バスト部分は全てレースで編まれていて、隙間から乳首が透けて見えていた。
 お母様の言っているのって、このことかしら?

「でも、自分の部屋の中ですし…」
「誰かが急に来るかもしれないだろ!女の子なんだから、もう少し恥じらいを持って欲しい!」

 ぷりぷり頬を膨らませて怒るお母様の姿に、嬉しさと悲しさで複雑な気持ちになる。
 あまり期待はしていなかったけど、可愛いね、とか似合ってるね、って言ってくださるかと思っていたのに。

「いつもは誰か来たら、きちんと上に何か羽織ってますわ。今夜はお母様がいらっしゃる、ってわかってたから…。ほら、親子ですし」
「おれは母親だけど、れっきとした男なんだよ!それに、親しき中にも礼儀あり、って言うの!」

 お母様、本気で怒ってる。
 でも、お母様がこうやって怒ってくれるのも、私への愛があるからこそ。
 緩みそうになる頬を引き締め、謝罪をして、お母様からのお叱りの言葉を甘受する。

「…わかってくれたらいいよ。おれも言い過ぎたね、ごめん」

 反省のポーズをとる私に、お母様がばつの悪そうな顔をする。
 自分の非を認めることができる、そんな謙虚で素直なところも大好き。

「でも、風邪引くといけないから、上に何か着て?」

 クローゼット開けるよ?、とお母様はクローゼットへと歩を進め、扉を開いた。
 途端にお母様の動きが固まる。
 あらあら、クローゼットは際どい服でいっぱいで、お母様には刺激が強かったかしら。
 お母様の反応を、少し離れた場所から眺める。
 ぎこちない動きだけれど、伸ばした両手で私が着れそうな服を探る。
 後ろからそっと近づくと、旋毛が目に入る。
 ふと花の様な良い香りが漂って来て、私は鼻を近づけた。

「お母様、お風呂に入って来たのね」
「わっ、びっくりした。ね、メイムル、もっときちんとした服増やさない?」
「お風呂はいつもお父様と一緒に入ってらっしゃるの?」

 お母様の言葉を聞き流して、尚も服を探し続ける小柄な身体の脇の下から両腕を通して、抱き締める。
 こういう時は、自分の武器である豊満な胸を煩わしく思う。
 分厚い脂肪のせいで、お母様を近くに感じられない。

「ん?うん、大体いつも一緒に入ってるかな。ツヴェーテの髪を洗って、香油をつけて櫛を通してあげるのが習慣みたいになってるから」

 そう言ってお母様は笑みを零した。
 お母様とお風呂をご一緒できるなんて、お父様が羨ましい。
 手を滑らせて、寝巻きの薄い生地越しに胸元や腹を撫でるけれども、お母様の意識は完全にお父様に向いていた。

「私もお母様と一緒にお風呂に入りたいわ」
「あはは、メイムルは冗談がうまいね」

 お母様は一笑すると、するりと腕の中から抜け出して、私にローブを手渡した。
 もう、お母様ったら、私は冗談ではなくて本気で言ってるのに。
 本気だと受け止めてもらえなくて、軽く失望してしまう。
 わかっていることだけど、やっぱり私のこと娘以上には見てくれないのよね。
 渋々大人しくローブに袖を通すと、お母様は一足先にベッドの上に身体を横たえていた。
 後に続いて、ベッドに乗り上げる。

「お母様、おやすみのキス、してくださる?」

 お母様は微笑むと、私の額に唇を落とした。


 ******


 お母様の寝息が聞こえてきた頃、私は閉じていた瞼を開いた。
 暗闇の中でも、目の前のお母様の寝顔が見える。
 だけれど明るいところでよく見たくて、ナイトランプを光量を絞って灯す。
 私は身体を起こすと、お母様の寝巻きの釦に指をかけて、起こさないように一つずつ外していく。
 至る所にキスマークをつけられた肢体が、微かな光に照らされて露わになる。
 つけられすぎてて、ちょっと気持ち悪いほどね。
 吸い寄せられるように、お母様の身体に唇を落とす。
 これだけあるんだもの、キスマークの一つや二つ増えたってお父様も気づかないわよね。
 柔らかな肌を唇で吸い上げて出来たキスマークに、欲望がもたげる。
 お母様の反応を窺いながら、更にキスマークを腹から上にかけてつけていく。
 あら、乳首の周りに歯形。
 誰が…って自問する必要もないわね。
 血が滲むほど強く噛まれたみたいで、かさぶたが出来ている。
 可哀想なお母様。きっと痛かったでしょうに。

「ん…」

 指で歯形をなぞると、お母様が僅かに身じろぐ。
 反射的に指を引っ込めて、お母様の顔を覗き込む。
 目を覚ますかと思ったけれど、規則正しい寝息が聞こえてくるのを確認して、元の体勢に戻る。
 ごめんなさいね、お母様、痛かったかしら?
 労わるつもりで、乳首と歯形に吸い付いて、舌で舐めしゃぶる。

「ん…ぅ、んん…」

 くぐもった鼻息と僅かな身じろぎだけで、お母様が起きる様子はない。
 お母様の眠りが深いのをいいことに、存分に乳首を舌で堪能した。
 口を離すと、柔らかった乳首は芯を持ってぷくりと膨らんでいた。
 身体を起こして、お母様の首筋や頬、額に唇を落とす。
 可愛いお母様。
 可愛らしい下半身も見せてね。
 腰に手を滑らせて、寝巻きのズボンに指をかけた瞬間だった。

「…っ!?」

 強い衝撃が手に走って、弾かれた。
 身体がぐらりと後ろに傾ぐ。
 なに、いまの。
 何が起こったのかわからず、目を瞬かせて周囲を見渡すも、刺すような手の痛み以外は先程と何も変わらない。
 お母様も、変わらずぐっすりと眠っている。
 不審に思いながらも体勢を立て直して、ズボンに手をかけようとした瞬間、お母様の下半身が淡く発光した。
 そこで漸く違和感に気がついて、掌をかざす。
 途端に、無数の文字で構成された術式が浮かび上がった。
 ちょっと!普通ここまでする!?
 お母様のズボンを脱がそうとしたら、術式が発動するようにしてあるなんて!
 お父様ったら、面倒なことを。
 式にざっと目を走らせる。
 お母様が自分から脱いだり、お父様が脱がそうとする以外は、全てを拒むよう術が発動するのね。
 相当複雑に、何重もの条件付をかけて式を作ってある。
 思わず舌打ちが漏れた。
 売られた喧嘩、買ってあげようじゃないの。
 絶対に式を解除してやるわ!

 結局、徹夜して朝になっても術式は解けなかった。
 お父様がしたり顔をしているのが容易に想像できた。
 ああ、悔しい!
 今度は絶対に、お母様の身体を可愛がってあげるんだから!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ
BL
 一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。  愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。  他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される??? 家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。 R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。 現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。改稿完了している話は時間経過のマークが✿✿✿から***になっております。 2024/11/12 (第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...