盗みから始まる異類婚姻譚

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61. 残酷な真実

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 セシリアが遅い朝食を食べている間に、出発の準備もすっかり整っていたので、早速、大国ゼフィランスに向かうコトを告げる。

 とにかく、アゼリア王国の権力が届く範囲から、逃げないとね
 思い入れも何にもない、あの国の為に、もう、あんな苦しい思いしたくないし

 グレンは少しだけ微妙な顔をしたが、何も言わずに頷いて、今までセシリアが使っていた椅子とテーブルを馬車の中にしまい、御者台へと向かう。

 お腹が、ポテポテコロコロした感じになったレオと、グリフォンの雛
 私の周りを走る姿、なんか可愛くて、癒されるわぁ~……

 ほっこりしているセシリアの視線の先で、ルリは、ちょっと首を傾げてから、楽しそうに走り回っていたレオとグリフォンの雛を捕獲する。

 「アタシは、こいつら連れて先に入ってるよ…リアもユナも、さっさとはいっといで」

 ルリはそう言って、捕まえた2人を左右の腕に抱えて、馬車の中に入っていた。

 うふふふ……おチビちゃん達も、馬車に入ったコトだし、私達も入りますか

 「それじゃ、私達も馬車に入ろうか、ユナ」

 「うん」

 ユナと手を繋ぎ、セシリアは楽し気に馬車に乗るのだった。
 全員が馬車に乗り、忘れ物が無いコトを確認し、グレンは馬車を出発させた。

 「あっ…動き始めた……たぶん、この馬車って、それなりに良いモノなんだろうけど、けっこう振動がきついよねぇ………」

 セシリアの言葉に、ルリが首を傾げる。

 「こんなモンじゃないのかい?…アタシが檻に入れられて乗せられたモノはもっとガタガタいってたけど?」

 「う~ん……ユナは記憶が無いから…わからないなぁ……」
 
 などと話している間に、レオとグリフォンの雛は、セシリアが寄りかかるのに使っていたクッションのひとつに、ひっつい2人で眠っていた。

 「あらあら……もう、ねむっちゃったのねぇ~…ふふふふ…可愛いわぁ~…」

 異種族だけど、兄弟みたいに育ってくれるかなぁ~…
 それにしても、はたから観たアレは、いっちゃなんだけど

 かなり、面白かったなぁ……はぁ~……
 この世界って、ラノベあるある的に、ろくな娯楽が無いからねぇ……

 ずぅ~っと、つらく苦しい生活だったけど、今は自由なんだから
 これからの今生は、豊かなスローライフを目指すわよ

 勿論、それには豊かな食生活も欠かせないわ
 大国…それも帝国と付く強国なら、色々な作物の種とかもあるだろうし

 辺境に行く前に、色々と仕入れないとねぇ………
 香辛料に、作物の種、出来れば薬草の種も欲しいわねぇ

 下手すっと、お金よりも、物々交換が主流のところもあるだろうしね
 ……っと、今日こそは、グレンに金貨とかの価値を聞かないと

 たしか、デュバインが崩したお金も入れたって言ってたけど
 何処にいれたのかなぁ?

 次の休憩の時にでも、探して聞かないとね
 ああ、あと、聞こうと思っていたコト思い出したわ

 「あっ…そうだ…ルリ、聞こうと思っていたんだけど、昨日のお肉とか、どうしてんの?」

 「うん?どうしてんの?ってはどういう意味だい?」

 「いや、だって…魔道具の冷凍庫とか無いでしょ?あのままだったら、腐っちゃうでしょ?」

 セシリアの説明に、ルリがなるほどと言う表情で頷く。

 「ああ、そういう意味かい……それなら、ほら…あの一角に積み込んで、アタシが《時止め》の魔法をかけておいたよ」

 その言葉で、ルリが特殊な魔獣であるコトを、改めて知る。
 同時に、させなくて良い魔力の消費をさせたことに罪悪感を感じる。

 なんと言っても、今のルリは、極度な栄養失調に魔力だって不安定た妊娠中なのだから。
 できるなら、出産した後、身体が癒えるまで、無理をさせたくないと思ったいただけに、自分の失態に頭痛を覚えつつ言う。

 「えっとね……その……アイテムボックスあるんだけど」

 セシリアの言葉に、バッと振り返ったルリが言う。

 「本当に?」

 「うん…この腕輪がアイテムボックス…あと、マジックポーチもあるよ」

 私の言葉に、ルリは脱力して言う。

 「そういうのは、早く言って欲しかったわぁ……アイテムボックスやマジックポーチがあるなら、アタシが無理して《時止め》使わなくてよかったんじゃない………」

 クテっとしてみせるルリに、セシリアは腰に着けなおしたばかりのマジックポーチをはずして言う。

 「なんなら、マジックポーチ、ルリが持つ?」

 セシリアの言葉に、ちょっと悩む素振りをみせてから、ルリは首を振って言う。

 「いいや、それだったら、そのマジックポーチはユナに持たせな……アタシは狩りをするから、持っているのにむかないよ」

 「ああ…そっか……それじゃ、このマジックポーチはユナが持っててね」

 昨日の魔獣も、ルリが獲ったって言ってたっけ
 解体されていたから、どんな魔獣だったか知らないけど

 たぶん、聞かない方が良いよね……
 正体を知って食べられなくなるのはイヤだもん

 「はい……ユナが持つね………ルリお姉ちゃん、マジックポーチに入れるから、もう《時止め》をはずして良いよぉ…魔力を食うんでしょ」

 「ああ、助かるよ……流石に、ずっと《時止め》を維持すると、魔力が減るからねぇ……こんなに、弱った身体じゃなきゃぁ……たいしたコトないんだけどねぇ……はぁ~…」

 ルリが《時止め》を解除したと同時に、ユナが壷などに入ったモノを次々としまう。
 そして、今着ないような衣類など、直ぐ使わないモノを次々とマジックポーチに入れて行く。

 保存食や水の壷なども、すべてマジックポーチの中に消え、馬車の中が広くなったコトで、セシリアはちょっと落ち込む。

 嗚呼…いくらテンパリ状態だからって、気付こうよ私
 最初からこうしたら、もっと馬車の中を広く使えたんだよねぇ

 「ふふふふ…随分と広くなったねぇ……これなら、アタシも本体の姿なっても良いねぇ…昨日、リアが毛皮を被っても寒そうに寝てたからね……本体で添い寝してやれるよ」

 ルリの言葉に、セシリアは内心でちょっとウホッとする。

 うわぁ~…モフモフのルリの添い寝……凄く楽しみぃ~……うふふふ

 猫型魔獣のルリに、もふりついて寝る夢想にちょっとうっとりするセシリアに、ルリが尋ねる。

 「そう言えば、あの『隠蔽結界』とかいうヤツ解いたのかい?」

 ルリの言葉に、セシリアは馬車の天井の上を視る。

 あははは………張ったまま忘れていたわ………どうしようかなぁ?
 このままでも、大丈夫だとは思うけど…ここは、それとなくルリに聞いてみよう

 「あっ…張ったままだったわ……でも…このままでも支障ないから良いかな?」

 セシリアの言葉に、ルリは頭痛を覚えたようにこめかみに指先をあてていう。

 「あるに決まっているだろう……リアは、弱っているんだよ」

 と、静かな叱責に、肩を竦め、ペロッと舌を出し、てへぺろをしつつ、隠蔽結界を解除するのだった。

 今の私がやっても、可愛くないかもだけど、てへぺろしかないわ
 あ~あ…ルリに怒られちゃった


 







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