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王都
32 旅立ち
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タルラの下に帰還命令が届いた翌日、旅装を調えた一行は城の門に集まっていた。
それぞれの愛馬に跨(またが)るタルラとナムルにトーレス他二人のイベール子爵に仕える護衛の騎士。 馬車の御者台にはいつも通りツゥエルが座り、その横ではタットン、幌つきの荷台にはチェミーと朔、そしてなぜかミラベルと御付のメイドも一人居座っている。
タルラが王都に帰ると聞き、さんざん駄々をこねてこの席を勝ち取ったのだ。
イベール子爵は反対したのだが、タッグを組んだ母娘には適わず、涙を呑んで見送る事になった。
「ミラベル、辛くなったらいつでも帰ってきて良いんだぞ。 女の子のお前が痛い思いをしてまで魔法騎士(マジック・ナイト)になる必要は無いんだからな」
「お父様。 私はイベール家の娘です、途中で決めたことを諦める気は有りません! 必ず魔法騎士(マジック・ナイト)になって、タルラお姉さまの隣に立って見せます!」
娘と離れるのを諦めきらないイベール子爵は、見送りの席ですらそんな事を言っているが、夢と希望とタルラへの憧れが胸いっぱいに詰め込まれた、今のミラベルには禁句と言っても良い言葉だったのか、即答で跳ね返されてしまう。
「そうですわ、あなた。 この子が決めたことなのですから、ここは笑顔で見送ろうでは有りませんか。 道中も魔法騎士(マジック・ナイト)のタルラとトーレスさんが一緒なら何の心配も無いでしょうし、何よりサクちゃんが一緒なのですから、今行かせないでどうするのですか」
口元に手をあて「ふふふ」と笑いながら、マイアが父と娘の会話に入り込んでくる。
そこでなぜマイアが自分の名前が出すのか分からないが、イベール子爵の睨む様な目線を受けて、朔は軽く会釈を返してみるが、「ふんっ!」と、子爵は不機嫌に視線を反らしてしまう。
(俺、何か嫌われる事したのかな?)
これまで、大様(おおよう)に相手をしてくれていた人だけに、ここへ来て明らかに変わってしまった態度に朔は不安を覚えてしまう。 しかも、今までなら勘違いや文化の違いで相手に失礼な事をしでかした時は、周りに居る人が教えてくれたのに、子爵の不機嫌な態度の理由を誰も教えてくれないのが不思議でならないのだ。
「大丈夫ですよ。 サク様」
そんな不安が顔に出てしまったのだろう。 横に座るミラベルの向こうから御付のメイドのムルビィが小声で話しかけてくる。 この城に来た初日に朔の小さな朔を見て「かわいい」と言っていたメイドだ。 変化は他にもあり、子爵の機嫌が悪くなった辺りから、このメイドも含めて、これまで「サクちゃん」と呼んでいた城に居る者がみんな「サク様」と呼ぶようになったのだ。 こちらも理由を聞いても誰も教えてくれない。
「エイデマ様は、可愛い娘が自分から離れていくのが寂しいだけです。 その内機嫌も御治りになられるでしょう。 サク様が気にすることではありません」
「そうね。 サクちゃんが悪いわけでもないのに、なんで嫌な思いをする必要があるのかしら。 周りが勝手に騒いで、本人が置いてけぼりって、そもそも私は納得してないわよ」
そして最近不機嫌なのは子爵だけではなく、チェミーもどことなく機嫌が悪いのだ。 別に子爵のように朔にだけ風当たりが強いと言うことでは無い。 むしろいつも朔の傍に居て、余計な物を寄せ付けないように見張っている感じに思える。
「だいたい、サクちゃん自身がこの先どうするのかも決めてないのに、勝手なことを言いすぎよ。 冒険者にだってなるのかも知れないのに」
「でも、私はサク様なら、大歓迎ですよ」
いつの間にか回されたチェミーの腕に抱き寄せられながら、朔とミラベルの頭上で二人の会話がやり取りされる。 自分の事なのに他人事に聞こえるのは、肝心な所が分からないから仕方が無い。 ただ、知らないところでよからぬ何かが進められている気してならないが、今それを聞くと子爵とチェミーが火を吹きそうで怖くて聞けない。
「二人とも、大事な時なんですから、変につついてこじらせたら大変でしょ? それにもうじき出発です。 ムルビィもミラベルの事頼みましたよ」
頭上の言い合いに熱が篭り掛けた絶妙のタイミングで、マイアが二人を止める。 前方ではタルラとイベール子爵がなにやら挨拶を交していた。
「では、出発!」
別れの挨拶だったのだろう、タルラは一礼すると良く通る声で、総勢11人に膨れ上がった一行に号令をかけ、朔が乗った馬車はゆっくりと動き出した。
***********
馬車の旅と言うのも、なかな風情があって良いもだ。 ガタゴトと揺らされる荷台の幌の隙間から見える緩やかに後方へと流れる風景は、進むに連れて刻々と変化をしていく。
今日は峠にある砦まで進み、そこで一泊する予定らしい。 野宿も視野に入れて急いで進めば七日程で王都まで到着できるのだが、子供連れであることも考えて、宿を取りながら十日位かけて進む段取りになっているそうだ。
「チェミー?」
「どうしたのサクちゃん?」
景色を眺めていても飽きることは無いのだが、せっかく空いた時間が出来たのだ、ここで色々疑問に思っていたことを聞いてみようと、朔は声をかけてみる。
「タルラは まほうきし ナムルは きし。 なにがちがうの?」
「魔法騎士(マジック・ナイト)は、馬を走らせながらでも魔術が使える特別の人達よ。 剣や槍なんかの戦闘技術と魔術の才能、両方が無いと入団すら許されないの。 サルバー王国軍総勢100万って言われてる中で、たった三千騎しか居ないエリート騎士なのよ。 その分、秘匿魔術やスキルを魔法騎士団(マジック・ナイツ)として保有してるから、正式な理由の無い退団は、認められない場合が多いの。 結婚を理由に退団する事も出来無いくらいに厳しいのよ」
「すごいね~」
この世界の魔法は、《呪文(スペル)》を使って発動させる魔術だと悪魔は言っていた。 そうなれば、走る馬の上で《呪文(スペル)》を唱えなければならない。 朔がこれまで見た中でも感じていたタルラの《呪文(スペル)》が他と比べて短いのは、その辺に理由があるのかもしれない。
「チェミーやツゥエルたちは? ぼうけんしゃ?」
「そう、私たちは冒険者よ」
「へいたいさんと ちがうの?」
「そうね、冒険者は冒険者ギルドに登録している人の事なの。 今回みたいに依頼を受ければ護衛や、荷物運びするし、戦争には傭兵として狩り出される事も有るけど、傭兵との一番の違いは、遺跡の発掘かな? サクちゃんは知らないかもしれないけど、これまで沢山の国や文明が滅んだり消えたりしているのよ。 その中には今よりも、もっと優れた魔法の技術を持っていたりした国も有ったのよ。 それに、人の手から離れてしまった未開地だって沢山残ってるし、そこへ行って昔の遺跡に潜ったりしながら、魔法の道具や、武器、失われた呪文(ロスト・マジック)なんかを見つけてくるのも冒険者の仕事なの」
「おもしろそう!」
ゲームの世界そのままな冒険者の生活に、朔の胸がときめく。
「うん、面白いわよ。 一攫千金だって夢じゃないんだから。 でもね、古い遺跡やその周りには大体魔物が沢山住み着いてて危ないの、場合によっては命を落とすことだって有るし、何も持って帰れずに赤字なんてことも珍しくないわ」
「そうなんだ~。 でも かっこいい」
その辺も折込積み。 悪魔の力を借りれば大体の危機は乗り越えられるだろう。 なにより、悪魔を養っていく上で自由である事は重要だ。
「ふふ~ん、サクちゃんは冒険者に興味があるのかな~? それなら、見習いでうちのパーティーに入ってみる?」
言いながらチェミーは朔を抱きしめ、たわわな胸を顔に押し付けてくる。 朔が男だと分かって、タルラの接し方は少し変わったが、チェミーはこれまでとまったく変化は無かった。 むしろ恥ずかしがる朔の顔を見るために、わざと引っ付いてきているような気がしなくも無い。
しかも、抱きしめながら放たれた言葉は、明らかに朔ではなく、ミラベルとその御付に向けられていた。
「ちょ、サク! なに引っ付いてるのよ!?」
「駄目です。 サク様は学園を受験して、ミラベル様と共に通われる事になっているのです! 冒険者なんかにさせてなる物ですか!」
(いや、俺から引っ付いたわけじゃないんだけど…。 でも、離れられないのは俺のせいかも)
口がきけたら反論も出来ようものだが、残念ながら顔の正面から柔らかい谷間に埋まりこんでいる状態では、息をするのがやっとなのだ。 そして鼻腔から入り込んでくる甘い罠。 どうして女の人は汗を描いても甘い匂いがするのか、不思議でならない。
「そうよ! サク、危険な冒険者になるくらいなら、私が雇ってあげるわよ! 言葉はまだまだだけど、計算も出来るし、頭だって良いんだから、お父様もお母様もきっと雇うことに賛成してくれるわ! だから、離れなさい! このスケベッ!」
「そうですわミラベル様! ここで負けてはなりません。 私もご助力いたします!」
(い、痛い痛い。 な、何だこの状況は?)
放すまいとするチェミーに強く頭を抱えられながら、ミラベルに腕を引っ張られ、メイドのムルビィが背中から抱きついて引き剥がそうとしてくる中で、脊椎が妙な形にねじれるのを感じながら、それぞれ大きさの違う柔らかな感触に身をゆだねる朔であった。
『どうでもいいけど、あんた息しないと死んじゃうわよ?』
一人だけ周りを飛びながら、冷静な事を言ってくる悪魔の呆れたような声が聞こえのはきっと気のせいだろう。
それぞれの愛馬に跨(またが)るタルラとナムルにトーレス他二人のイベール子爵に仕える護衛の騎士。 馬車の御者台にはいつも通りツゥエルが座り、その横ではタットン、幌つきの荷台にはチェミーと朔、そしてなぜかミラベルと御付のメイドも一人居座っている。
タルラが王都に帰ると聞き、さんざん駄々をこねてこの席を勝ち取ったのだ。
イベール子爵は反対したのだが、タッグを組んだ母娘には適わず、涙を呑んで見送る事になった。
「ミラベル、辛くなったらいつでも帰ってきて良いんだぞ。 女の子のお前が痛い思いをしてまで魔法騎士(マジック・ナイト)になる必要は無いんだからな」
「お父様。 私はイベール家の娘です、途中で決めたことを諦める気は有りません! 必ず魔法騎士(マジック・ナイト)になって、タルラお姉さまの隣に立って見せます!」
娘と離れるのを諦めきらないイベール子爵は、見送りの席ですらそんな事を言っているが、夢と希望とタルラへの憧れが胸いっぱいに詰め込まれた、今のミラベルには禁句と言っても良い言葉だったのか、即答で跳ね返されてしまう。
「そうですわ、あなた。 この子が決めたことなのですから、ここは笑顔で見送ろうでは有りませんか。 道中も魔法騎士(マジック・ナイト)のタルラとトーレスさんが一緒なら何の心配も無いでしょうし、何よりサクちゃんが一緒なのですから、今行かせないでどうするのですか」
口元に手をあて「ふふふ」と笑いながら、マイアが父と娘の会話に入り込んでくる。
そこでなぜマイアが自分の名前が出すのか分からないが、イベール子爵の睨む様な目線を受けて、朔は軽く会釈を返してみるが、「ふんっ!」と、子爵は不機嫌に視線を反らしてしまう。
(俺、何か嫌われる事したのかな?)
これまで、大様(おおよう)に相手をしてくれていた人だけに、ここへ来て明らかに変わってしまった態度に朔は不安を覚えてしまう。 しかも、今までなら勘違いや文化の違いで相手に失礼な事をしでかした時は、周りに居る人が教えてくれたのに、子爵の不機嫌な態度の理由を誰も教えてくれないのが不思議でならないのだ。
「大丈夫ですよ。 サク様」
そんな不安が顔に出てしまったのだろう。 横に座るミラベルの向こうから御付のメイドのムルビィが小声で話しかけてくる。 この城に来た初日に朔の小さな朔を見て「かわいい」と言っていたメイドだ。 変化は他にもあり、子爵の機嫌が悪くなった辺りから、このメイドも含めて、これまで「サクちゃん」と呼んでいた城に居る者がみんな「サク様」と呼ぶようになったのだ。 こちらも理由を聞いても誰も教えてくれない。
「エイデマ様は、可愛い娘が自分から離れていくのが寂しいだけです。 その内機嫌も御治りになられるでしょう。 サク様が気にすることではありません」
「そうね。 サクちゃんが悪いわけでもないのに、なんで嫌な思いをする必要があるのかしら。 周りが勝手に騒いで、本人が置いてけぼりって、そもそも私は納得してないわよ」
そして最近不機嫌なのは子爵だけではなく、チェミーもどことなく機嫌が悪いのだ。 別に子爵のように朔にだけ風当たりが強いと言うことでは無い。 むしろいつも朔の傍に居て、余計な物を寄せ付けないように見張っている感じに思える。
「だいたい、サクちゃん自身がこの先どうするのかも決めてないのに、勝手なことを言いすぎよ。 冒険者にだってなるのかも知れないのに」
「でも、私はサク様なら、大歓迎ですよ」
いつの間にか回されたチェミーの腕に抱き寄せられながら、朔とミラベルの頭上で二人の会話がやり取りされる。 自分の事なのに他人事に聞こえるのは、肝心な所が分からないから仕方が無い。 ただ、知らないところでよからぬ何かが進められている気してならないが、今それを聞くと子爵とチェミーが火を吹きそうで怖くて聞けない。
「二人とも、大事な時なんですから、変につついてこじらせたら大変でしょ? それにもうじき出発です。 ムルビィもミラベルの事頼みましたよ」
頭上の言い合いに熱が篭り掛けた絶妙のタイミングで、マイアが二人を止める。 前方ではタルラとイベール子爵がなにやら挨拶を交していた。
「では、出発!」
別れの挨拶だったのだろう、タルラは一礼すると良く通る声で、総勢11人に膨れ上がった一行に号令をかけ、朔が乗った馬車はゆっくりと動き出した。
***********
馬車の旅と言うのも、なかな風情があって良いもだ。 ガタゴトと揺らされる荷台の幌の隙間から見える緩やかに後方へと流れる風景は、進むに連れて刻々と変化をしていく。
今日は峠にある砦まで進み、そこで一泊する予定らしい。 野宿も視野に入れて急いで進めば七日程で王都まで到着できるのだが、子供連れであることも考えて、宿を取りながら十日位かけて進む段取りになっているそうだ。
「チェミー?」
「どうしたのサクちゃん?」
景色を眺めていても飽きることは無いのだが、せっかく空いた時間が出来たのだ、ここで色々疑問に思っていたことを聞いてみようと、朔は声をかけてみる。
「タルラは まほうきし ナムルは きし。 なにがちがうの?」
「魔法騎士(マジック・ナイト)は、馬を走らせながらでも魔術が使える特別の人達よ。 剣や槍なんかの戦闘技術と魔術の才能、両方が無いと入団すら許されないの。 サルバー王国軍総勢100万って言われてる中で、たった三千騎しか居ないエリート騎士なのよ。 その分、秘匿魔術やスキルを魔法騎士団(マジック・ナイツ)として保有してるから、正式な理由の無い退団は、認められない場合が多いの。 結婚を理由に退団する事も出来無いくらいに厳しいのよ」
「すごいね~」
この世界の魔法は、《呪文(スペル)》を使って発動させる魔術だと悪魔は言っていた。 そうなれば、走る馬の上で《呪文(スペル)》を唱えなければならない。 朔がこれまで見た中でも感じていたタルラの《呪文(スペル)》が他と比べて短いのは、その辺に理由があるのかもしれない。
「チェミーやツゥエルたちは? ぼうけんしゃ?」
「そう、私たちは冒険者よ」
「へいたいさんと ちがうの?」
「そうね、冒険者は冒険者ギルドに登録している人の事なの。 今回みたいに依頼を受ければ護衛や、荷物運びするし、戦争には傭兵として狩り出される事も有るけど、傭兵との一番の違いは、遺跡の発掘かな? サクちゃんは知らないかもしれないけど、これまで沢山の国や文明が滅んだり消えたりしているのよ。 その中には今よりも、もっと優れた魔法の技術を持っていたりした国も有ったのよ。 それに、人の手から離れてしまった未開地だって沢山残ってるし、そこへ行って昔の遺跡に潜ったりしながら、魔法の道具や、武器、失われた呪文(ロスト・マジック)なんかを見つけてくるのも冒険者の仕事なの」
「おもしろそう!」
ゲームの世界そのままな冒険者の生活に、朔の胸がときめく。
「うん、面白いわよ。 一攫千金だって夢じゃないんだから。 でもね、古い遺跡やその周りには大体魔物が沢山住み着いてて危ないの、場合によっては命を落とすことだって有るし、何も持って帰れずに赤字なんてことも珍しくないわ」
「そうなんだ~。 でも かっこいい」
その辺も折込積み。 悪魔の力を借りれば大体の危機は乗り越えられるだろう。 なにより、悪魔を養っていく上で自由である事は重要だ。
「ふふ~ん、サクちゃんは冒険者に興味があるのかな~? それなら、見習いでうちのパーティーに入ってみる?」
言いながらチェミーは朔を抱きしめ、たわわな胸を顔に押し付けてくる。 朔が男だと分かって、タルラの接し方は少し変わったが、チェミーはこれまでとまったく変化は無かった。 むしろ恥ずかしがる朔の顔を見るために、わざと引っ付いてきているような気がしなくも無い。
しかも、抱きしめながら放たれた言葉は、明らかに朔ではなく、ミラベルとその御付に向けられていた。
「ちょ、サク! なに引っ付いてるのよ!?」
「駄目です。 サク様は学園を受験して、ミラベル様と共に通われる事になっているのです! 冒険者なんかにさせてなる物ですか!」
(いや、俺から引っ付いたわけじゃないんだけど…。 でも、離れられないのは俺のせいかも)
口がきけたら反論も出来ようものだが、残念ながら顔の正面から柔らかい谷間に埋まりこんでいる状態では、息をするのがやっとなのだ。 そして鼻腔から入り込んでくる甘い罠。 どうして女の人は汗を描いても甘い匂いがするのか、不思議でならない。
「そうよ! サク、危険な冒険者になるくらいなら、私が雇ってあげるわよ! 言葉はまだまだだけど、計算も出来るし、頭だって良いんだから、お父様もお母様もきっと雇うことに賛成してくれるわ! だから、離れなさい! このスケベッ!」
「そうですわミラベル様! ここで負けてはなりません。 私もご助力いたします!」
(い、痛い痛い。 な、何だこの状況は?)
放すまいとするチェミーに強く頭を抱えられながら、ミラベルに腕を引っ張られ、メイドのムルビィが背中から抱きついて引き剥がそうとしてくる中で、脊椎が妙な形にねじれるのを感じながら、それぞれ大きさの違う柔らかな感触に身をゆだねる朔であった。
『どうでもいいけど、あんた息しないと死んじゃうわよ?』
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