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レイン、悪魔と契約をする。
レインは、悪魔と怪しい契約をする②
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「えと…クラウドは『ちゃんと食べてるか』とか、『友達出来たか』とか、『無茶するな』みたく、いろいろ聞いてくれます」
「それでは、独居老人の生存確認の声掛け以下だな。地域ボランティアに謝罪するべき案件だよ。まったく『お世話係』を何だと思っているんだっ!!」
彼の言う『お世話』とは、なんなんだろう。
「でも、小さい頃は近くで本読んでくれて……」
「図書館の朗読ボランティアか病院の介護人か。ふむ、僕の好みとはかなり違うが、それならば 『お世話』と言えるな。しかし彼はもう、今は雇用関係を放棄したいんだろう」
(…雇用……。クラウドにとっては友達でなくてお仕事の感覚で『お世話』してたのか。
クダンも言っていたな。頼まれたから『世話』してたんだって…。)
「そうですね…。もう彼は嫌…、みたいです。わたしも…彼からは離れた方がいいと思って、います……」
(もう縛られたくないんだよね…。婚約とかそんな話、聞いたこともなかったけど、そう思わせるような圧力を、辺境で感じてたのかもしれないなぁ。)
彼のことはスッキリ割り切っても、ずっと『お世話』になっていたと思うと、胸が痛む。
「ならちょうどいい!!僕を友人件お世話係にしないか?」
「え…?それ兼任できるものなんですか?」
レインは驚愕した。こんな『お世話』にこだわりのある人が、自分のお世話をしたいだなんて…、どういうこと?!
「もちろんだよ。僕はね、君みたいな子すごくタイプなんだ!!」
「ええっ?」
告げられた言葉に思わず、耳を疑う。
「折れそうなほどガリガリのひょろひょろの腕…。不健康そうな艶のない青白い肌色…。そしてケアを知らないカサカサの栄養不足の髪…。何より夏にも長袖しか着られなさそうで、薬の過剰摂取をしていそうな、メンタルがヘラヘラしてそうな所!!本当たまらないよ!!君は最高だ!!まさに原石。君こそが僕の理想。夢の化身!!ぜひ僕に、君のお世話をさせて貰いたい!!」
眼をキラキラさせながらうっとりと見つめてくるけれど、あまり褒められている気がしない。どうにも彼の表現は理解しがたい。感性が、かなり独特だとレインは思った。
「いつか君みたいな子と出会って、ふっくふくのピッカピカのテッカテカに育て上げることを、僕はずっとずっと夢見てたんだっ!!」
瞳を潤ませながら彼は甘い声で、そう紡ぐ。
「ぜひ、僕に君をプロデュースさせてくれ。君の『お世話』をさせて貰えるならば、責任をもって育て上げると誓う。僕と契約してくれないか?そして友達になろう!!」
口説かれているようではあるが、勘違いである。
悪魔が語るは、勧誘。恋人になってくれではなく、堕落して肥え太らせてやるというふざけた内容の『契約』だ。理解力の乏しいレインでさえ、さすがに怪しいとは感じた。
(なんか契約とか言ってきた…。絶対変。悪魔と契約するのは、ダメなのだ。)
「あの…、友達は、一方的に『お世話』とか……、しないと思います。わたしだけが迷惑をかけて、誰かの『お荷物』になるような関係とかは……、もう嫌…、です。だから、あの…。」
『お断り』の一言が、うまく言えない。レインは、押しが弱いのだ。
「ありがとう、君は気遣いのできる本当に良い子だね。大丈夫だよ。『迷惑』や『お荷物』なんて思うわけがない。これは、ただ僕がそうしたいだけなんだ。君みたいな素敵な子を、甘やかしたい、それだけ。だから安心して、僕にお世話させて。ねぇ、そういう関係もあっていいんじゃないかな?」
「だから、なんでわたしなんかに?絶対おかしいですっ」
ほら、どうにも話がうますぎる。そんな事、あるわけがない。
いくら他所から来た人だからって、こんなの怪しすぎる。やっぱり悪魔は信用ならないのだ。
契約なんてするものか。絶対に。レインはもう、騙されるのは、うんざりなのだ。
「それでは、独居老人の生存確認の声掛け以下だな。地域ボランティアに謝罪するべき案件だよ。まったく『お世話係』を何だと思っているんだっ!!」
彼の言う『お世話』とは、なんなんだろう。
「でも、小さい頃は近くで本読んでくれて……」
「図書館の朗読ボランティアか病院の介護人か。ふむ、僕の好みとはかなり違うが、それならば 『お世話』と言えるな。しかし彼はもう、今は雇用関係を放棄したいんだろう」
(…雇用……。クラウドにとっては友達でなくてお仕事の感覚で『お世話』してたのか。
クダンも言っていたな。頼まれたから『世話』してたんだって…。)
「そうですね…。もう彼は嫌…、みたいです。わたしも…彼からは離れた方がいいと思って、います……」
(もう縛られたくないんだよね…。婚約とかそんな話、聞いたこともなかったけど、そう思わせるような圧力を、辺境で感じてたのかもしれないなぁ。)
彼のことはスッキリ割り切っても、ずっと『お世話』になっていたと思うと、胸が痛む。
「ならちょうどいい!!僕を友人件お世話係にしないか?」
「え…?それ兼任できるものなんですか?」
レインは驚愕した。こんな『お世話』にこだわりのある人が、自分のお世話をしたいだなんて…、どういうこと?!
「もちろんだよ。僕はね、君みたいな子すごくタイプなんだ!!」
「ええっ?」
告げられた言葉に思わず、耳を疑う。
「折れそうなほどガリガリのひょろひょろの腕…。不健康そうな艶のない青白い肌色…。そしてケアを知らないカサカサの栄養不足の髪…。何より夏にも長袖しか着られなさそうで、薬の過剰摂取をしていそうな、メンタルがヘラヘラしてそうな所!!本当たまらないよ!!君は最高だ!!まさに原石。君こそが僕の理想。夢の化身!!ぜひ僕に、君のお世話をさせて貰いたい!!」
眼をキラキラさせながらうっとりと見つめてくるけれど、あまり褒められている気がしない。どうにも彼の表現は理解しがたい。感性が、かなり独特だとレインは思った。
「いつか君みたいな子と出会って、ふっくふくのピッカピカのテッカテカに育て上げることを、僕はずっとずっと夢見てたんだっ!!」
瞳を潤ませながら彼は甘い声で、そう紡ぐ。
「ぜひ、僕に君をプロデュースさせてくれ。君の『お世話』をさせて貰えるならば、責任をもって育て上げると誓う。僕と契約してくれないか?そして友達になろう!!」
口説かれているようではあるが、勘違いである。
悪魔が語るは、勧誘。恋人になってくれではなく、堕落して肥え太らせてやるというふざけた内容の『契約』だ。理解力の乏しいレインでさえ、さすがに怪しいとは感じた。
(なんか契約とか言ってきた…。絶対変。悪魔と契約するのは、ダメなのだ。)
「あの…、友達は、一方的に『お世話』とか……、しないと思います。わたしだけが迷惑をかけて、誰かの『お荷物』になるような関係とかは……、もう嫌…、です。だから、あの…。」
『お断り』の一言が、うまく言えない。レインは、押しが弱いのだ。
「ありがとう、君は気遣いのできる本当に良い子だね。大丈夫だよ。『迷惑』や『お荷物』なんて思うわけがない。これは、ただ僕がそうしたいだけなんだ。君みたいな素敵な子を、甘やかしたい、それだけ。だから安心して、僕にお世話させて。ねぇ、そういう関係もあっていいんじゃないかな?」
「だから、なんでわたしなんかに?絶対おかしいですっ」
ほら、どうにも話がうますぎる。そんな事、あるわけがない。
いくら他所から来た人だからって、こんなの怪しすぎる。やっぱり悪魔は信用ならないのだ。
契約なんてするものか。絶対に。レインはもう、騙されるのは、うんざりなのだ。
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