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レイン、召喚に挑む。
レインが、召喚を望む理由②
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レインは虐待時に受けた暴力の影響で魔力回路が正常に起動しないようになってしまった。
体内で作られる魔力量自体は豊富なのだが、発動できるのは、低レベルな魔法のみ。
スクロールや魔道具の『使役』には問題なくとも、『記載』(ただ描くのではなく必要の魔力を込めて描くこと)をする作成側になるには、どうにも不十分なレベル。
いくら難易度の高い魔法陣を覚えて書けようと、新しいものを発案しようとも、自分では『記載』ができないのだ。
そこで、オリジナルの魔法を商品化するため『陣』を下書きし、知り合った魔術師たちに記載役をお願いしたのだが…、裏切られてしまった。
なんと相手はスクロールの持ち逃げをしやがったのだ。
特許取得の審査のためにと、何枚も何枚も描かされたのに。『紙』代だって馬鹿にならない!!
中等科1年生らしい柔軟な発想を持つレインには『記載』さえできれば形にしたかった、役に立つ魔法のアィディアがたくさんあったのだ。
【ポストのおつかいゲル】
蛇花火のような動きでモソモソ進む、ゲル状のナニカが、新聞や牛乳を取ってくる魔法
(ただしちょっと粘液が付着する)
【はじけるクラッカーゲル】
クラッカーを引いた音と共に、カラフルなゲル状のナニカが飛び出す魔法
(土に溶ける優しい仕様になっているので、屋外で使用が推奨されている。室内での使用は厳禁)
【お助けゲル拾い】
溝や溝、雪の中などに落とした小銭や家の鍵をゲルが拾ってきてくれる魔法
(こちらも土に溶ける優しい仕様になっているので、屋外で使用が推奨されている。室内での使用は厳禁)
などなど、様々な発明をしたのだ。
同様にまだ薬師資格のない未成年のレインでは、開発したものを登録販売することはできない。これまた知り合った薬師たちに登録の名義借りを依頼したのだが、またしても裏切られてしまった。
登録に必要だと用意させられた完成品の薬剤を全部盗られた。大量に。
材料費だってけっこう掛かったのに。
【削ピカさび落としゲル】や【根こそぎカビ落としのゲル】などの、清掃用の薬品は地元で無料で配った際には『気持ち悪い程、良く落ちる』と好評だったのだ。
今度こそと、何度も挑み、何人もの魔術師と薬師に騙され続けた。
レインは自分の作品を認められたい、一家の助けになりたいと焦り、泥沼にはまった。
次こそはと挑み、何度も騙され続けた。
レインは婆様の弟子として、『まだ危ないから口に入るものや体に付けるもの以外を作りなさい』という教えも守りつつ、自分の持てるすべての知恵を尽くして、スクロールや生活用品を作ったのである。
サンダース一家に伝手を頼めばよかっただけの話だが、何しろ辺境領は王都からは遠いのだ。
(みんなは心配性だから、上手くいくまでは内緒にしておこうと思っていただけなのに……。まさか、こんなことになってしまうなんて…。あぁ……、特許で小金を稼ぎたかったのに。)
辺境領は水害の影響で土地が瘦せ、水はけも悪くなってしまった。レインは小麦と王都で覚えた好物のエナジードリンクを買い占めて送りたかったのだ。
(都会は怖い。本当怖い。)
恥ずかしくて悔しくて情けなくて、騙されたことも、まだ報告していない。
レインのコミュニケーション能力は非常に低く、なおかつカモ属性は非常に高いのだ。
◇◇◇◇
さすがにこのまま引き下がる気はないレインだが…、法律関係には疎い。
正直、どこから手を付けていいかも分からない。
だから、まずは地元が同じで、都会で唯一信じられる存在、クラウドに相談したかったのだ。
しかし彼に会いに行く度、いつもその隣には、サニーがいる。
(あの女、本当…邪魔。)
レインは、上手く言葉が出てこない。…人見知りなのだ。
そして、いくら『レインにとっては』大事な話があろうとも、二人の間には、割り込み辛い空気があるのだ。
サニーは陽気で人当たりが良い。
口下手なレインが二人の前で、いつもモジモジしていたのを見かねたのか、話しかけてきた。
彼女は誰に対しても、親しげで物おじしないが、少々おせっかいな所や相手のためになると思えば、少し言葉がきつくなることがある。
『おっはよう!!レインちゃん、元気ぃ?…って顔色すっごく悪いよっ!!大丈夫?!たしか、体も魔力回路も丈夫じゃないんでしょう?無理しないでね』
『レインちゃん、もし何かあるんなら、あたしにも話ししてよ!!もっと周りを頼ってもいいんだぞ☆一人で抱え込まないでっ!!もっと、ほっこり、ゆっくり、リラックスしましょ☆』
『レインちゃん。あたし、クラウドくんから聞いたの。小さい頃、虐待されて魔力回路まで壊されたんでしょう、すっごい大変だったのね。辛かったのね。お世話になってる辺境伯一家を助けたい気持ち、分かるわ。レインちゃんって、すっごく頑張り屋さんなんだね。けど、体を壊すまでの無茶なんて、よくないよぉ。そんな頑張りじゃ向こうだって喜ばないっ。むしろ迷惑よっ!!』
正論ではある。そして、レインを思っての言葉なのだろう。
サニーにとっては、おそらくクラウドの友達=自分の友達なのだ。
少し踏み込んだ言葉も、相手を思っての暖かい言葉。大抵の者はそう解釈する。
これまでサニーの友達になってきたような強メンタルの相手になら、問題にもならなかったのかもしれない。
けれど、多少のすれ違いがあろうと「お前に何が分かる」からの熱い口論、そして新たな絆を発生させることが出来るのは、精神力が強い者同士でのことだ。
サニーの言葉は、脆弱なレインには、とんでもない打撃だった。
クラウドが勝手に自分の身体のことを教えたこと。
頼れといわれても、頼りたい相手に全く相談できていないのに、それを邪魔している元凶から、無神経な言葉を投げかけられたのだ。
そして、『お世話になってる辺境伯一家の迷惑』という言葉。
それらは、レインを深く切り刻む刃となったのだ。
『頑張れ』というありふれた励ましの言葉が、相手や状況によっては『自分の頑張りが足りてない』と思わせしまい、さらに相手を追い詰めることがあるように、サニーの存在は、レインにとっては確実に彼女を追い詰めるものとなったのだ。
体内で作られる魔力量自体は豊富なのだが、発動できるのは、低レベルな魔法のみ。
スクロールや魔道具の『使役』には問題なくとも、『記載』(ただ描くのではなく必要の魔力を込めて描くこと)をする作成側になるには、どうにも不十分なレベル。
いくら難易度の高い魔法陣を覚えて書けようと、新しいものを発案しようとも、自分では『記載』ができないのだ。
そこで、オリジナルの魔法を商品化するため『陣』を下書きし、知り合った魔術師たちに記載役をお願いしたのだが…、裏切られてしまった。
なんと相手はスクロールの持ち逃げをしやがったのだ。
特許取得の審査のためにと、何枚も何枚も描かされたのに。『紙』代だって馬鹿にならない!!
中等科1年生らしい柔軟な発想を持つレインには『記載』さえできれば形にしたかった、役に立つ魔法のアィディアがたくさんあったのだ。
【ポストのおつかいゲル】
蛇花火のような動きでモソモソ進む、ゲル状のナニカが、新聞や牛乳を取ってくる魔法
(ただしちょっと粘液が付着する)
【はじけるクラッカーゲル】
クラッカーを引いた音と共に、カラフルなゲル状のナニカが飛び出す魔法
(土に溶ける優しい仕様になっているので、屋外で使用が推奨されている。室内での使用は厳禁)
【お助けゲル拾い】
溝や溝、雪の中などに落とした小銭や家の鍵をゲルが拾ってきてくれる魔法
(こちらも土に溶ける優しい仕様になっているので、屋外で使用が推奨されている。室内での使用は厳禁)
などなど、様々な発明をしたのだ。
同様にまだ薬師資格のない未成年のレインでは、開発したものを登録販売することはできない。これまた知り合った薬師たちに登録の名義借りを依頼したのだが、またしても裏切られてしまった。
登録に必要だと用意させられた完成品の薬剤を全部盗られた。大量に。
材料費だってけっこう掛かったのに。
【削ピカさび落としゲル】や【根こそぎカビ落としのゲル】などの、清掃用の薬品は地元で無料で配った際には『気持ち悪い程、良く落ちる』と好評だったのだ。
今度こそと、何度も挑み、何人もの魔術師と薬師に騙され続けた。
レインは自分の作品を認められたい、一家の助けになりたいと焦り、泥沼にはまった。
次こそはと挑み、何度も騙され続けた。
レインは婆様の弟子として、『まだ危ないから口に入るものや体に付けるもの以外を作りなさい』という教えも守りつつ、自分の持てるすべての知恵を尽くして、スクロールや生活用品を作ったのである。
サンダース一家に伝手を頼めばよかっただけの話だが、何しろ辺境領は王都からは遠いのだ。
(みんなは心配性だから、上手くいくまでは内緒にしておこうと思っていただけなのに……。まさか、こんなことになってしまうなんて…。あぁ……、特許で小金を稼ぎたかったのに。)
辺境領は水害の影響で土地が瘦せ、水はけも悪くなってしまった。レインは小麦と王都で覚えた好物のエナジードリンクを買い占めて送りたかったのだ。
(都会は怖い。本当怖い。)
恥ずかしくて悔しくて情けなくて、騙されたことも、まだ報告していない。
レインのコミュニケーション能力は非常に低く、なおかつカモ属性は非常に高いのだ。
◇◇◇◇
さすがにこのまま引き下がる気はないレインだが…、法律関係には疎い。
正直、どこから手を付けていいかも分からない。
だから、まずは地元が同じで、都会で唯一信じられる存在、クラウドに相談したかったのだ。
しかし彼に会いに行く度、いつもその隣には、サニーがいる。
(あの女、本当…邪魔。)
レインは、上手く言葉が出てこない。…人見知りなのだ。
そして、いくら『レインにとっては』大事な話があろうとも、二人の間には、割り込み辛い空気があるのだ。
サニーは陽気で人当たりが良い。
口下手なレインが二人の前で、いつもモジモジしていたのを見かねたのか、話しかけてきた。
彼女は誰に対しても、親しげで物おじしないが、少々おせっかいな所や相手のためになると思えば、少し言葉がきつくなることがある。
『おっはよう!!レインちゃん、元気ぃ?…って顔色すっごく悪いよっ!!大丈夫?!たしか、体も魔力回路も丈夫じゃないんでしょう?無理しないでね』
『レインちゃん、もし何かあるんなら、あたしにも話ししてよ!!もっと周りを頼ってもいいんだぞ☆一人で抱え込まないでっ!!もっと、ほっこり、ゆっくり、リラックスしましょ☆』
『レインちゃん。あたし、クラウドくんから聞いたの。小さい頃、虐待されて魔力回路まで壊されたんでしょう、すっごい大変だったのね。辛かったのね。お世話になってる辺境伯一家を助けたい気持ち、分かるわ。レインちゃんって、すっごく頑張り屋さんなんだね。けど、体を壊すまでの無茶なんて、よくないよぉ。そんな頑張りじゃ向こうだって喜ばないっ。むしろ迷惑よっ!!』
正論ではある。そして、レインを思っての言葉なのだろう。
サニーにとっては、おそらくクラウドの友達=自分の友達なのだ。
少し踏み込んだ言葉も、相手を思っての暖かい言葉。大抵の者はそう解釈する。
これまでサニーの友達になってきたような強メンタルの相手になら、問題にもならなかったのかもしれない。
けれど、多少のすれ違いがあろうと「お前に何が分かる」からの熱い口論、そして新たな絆を発生させることが出来るのは、精神力が強い者同士でのことだ。
サニーの言葉は、脆弱なレインには、とんでもない打撃だった。
クラウドが勝手に自分の身体のことを教えたこと。
頼れといわれても、頼りたい相手に全く相談できていないのに、それを邪魔している元凶から、無神経な言葉を投げかけられたのだ。
そして、『お世話になってる辺境伯一家の迷惑』という言葉。
それらは、レインを深く切り刻む刃となったのだ。
『頑張れ』というありふれた励ましの言葉が、相手や状況によっては『自分の頑張りが足りてない』と思わせしまい、さらに相手を追い詰めることがあるように、サニーの存在は、レインにとっては確実に彼女を追い詰めるものとなったのだ。
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※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
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