13 / 41
第1想定 13
しおりを挟む
USPの銃口から銃弾が飛び出した。認めたくなかったが、床を叩く薬莢の虚しい響きがその事実を突きつけてくる。
発射された銃弾はアサルトスーツを突き破って胸部に進入。貫通したかどうかなんて分からない。いや、どちらにせよ重要区画をやられている。致命傷であることにはかわりはない。
もう長くは持たないだろう。
俺の目の前には血の海が広がっている。
「宗太郎……、宗太郎……」
姉ちゃんが悲しい声で俺の名前を呼ぶ。
「なんでなんだ、なんでなんだよ」
呆然と、それで現実を受け入れられないという様子で「なんでなんで」と繰り返しているのは俺だ。
どうしてこんなことになってしまったんだ。
姉ちゃんを守りたかった。みんなを守って基地に帰りたかった。
「姪乃浜っ! 宗太郎がっ!」
姉ちゃんは泣き叫んでいる。
「ダメだな、俺……」
でも、これでいいか。
みんなを守ることはできなかった。
だけど姉ちゃんだけは守ることができた。
拳銃自殺を防ぐことができた。
姉ちゃんが自分自身の胸に向けてトリガーを引く前に、USPを奪うことができた。姉ちゃんはちゃんと生きている。体のどこにも穴は開いていない。
姉ちゃんの声が遠くなってきた。
俺は姉ちゃんの弟だ。姉ちゃんのようにうまくはできなかったけど、姉ちゃんが俺からUSPを奪ったように、俺も姉ちゃんからUSPを奪うことができた。
ただ奪ったのはいいけれど、トリガーに姉ちゃんの指が引っかかっていて、うっかり俺が自分の方に銃口を向けてしまって……ということだ。
こんなことなら防弾チョッキを着てくれば良かった。
「宗太郎が死んじゃう! ボクのせいでっ!」
姉ちゃんはなにも悪くない。無理にもぎ取ろうとした俺が悪いんだ。
だから、さ。姉ちゃん。
そんな悲しい顔をしないでくれよ。涙を浮かべた瞳で俺を見ないでくれよ。
泣き叫ぶ姉ちゃんの声が遠くなっていった。
発射された銃弾はアサルトスーツを突き破って胸部に進入。貫通したかどうかなんて分からない。いや、どちらにせよ重要区画をやられている。致命傷であることにはかわりはない。
もう長くは持たないだろう。
俺の目の前には血の海が広がっている。
「宗太郎……、宗太郎……」
姉ちゃんが悲しい声で俺の名前を呼ぶ。
「なんでなんだ、なんでなんだよ」
呆然と、それで現実を受け入れられないという様子で「なんでなんで」と繰り返しているのは俺だ。
どうしてこんなことになってしまったんだ。
姉ちゃんを守りたかった。みんなを守って基地に帰りたかった。
「姪乃浜っ! 宗太郎がっ!」
姉ちゃんは泣き叫んでいる。
「ダメだな、俺……」
でも、これでいいか。
みんなを守ることはできなかった。
だけど姉ちゃんだけは守ることができた。
拳銃自殺を防ぐことができた。
姉ちゃんが自分自身の胸に向けてトリガーを引く前に、USPを奪うことができた。姉ちゃんはちゃんと生きている。体のどこにも穴は開いていない。
姉ちゃんの声が遠くなってきた。
俺は姉ちゃんの弟だ。姉ちゃんのようにうまくはできなかったけど、姉ちゃんが俺からUSPを奪ったように、俺も姉ちゃんからUSPを奪うことができた。
ただ奪ったのはいいけれど、トリガーに姉ちゃんの指が引っかかっていて、うっかり俺が自分の方に銃口を向けてしまって……ということだ。
こんなことなら防弾チョッキを着てくれば良かった。
「宗太郎が死んじゃう! ボクのせいでっ!」
姉ちゃんはなにも悪くない。無理にもぎ取ろうとした俺が悪いんだ。
だから、さ。姉ちゃん。
そんな悲しい顔をしないでくれよ。涙を浮かべた瞳で俺を見ないでくれよ。
泣き叫ぶ姉ちゃんの声が遠くなっていった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる