「要らない」と申しましたが? 〜私を悪役令嬢にしたいならお好きにどうぞ?〜

阿華羽

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35 みんなでご帰宅ですわ。

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 今日の授業は全て終了し、私と弟はお客様達を連れ、我が家の馬車で、自宅に帰ってまいりました。

「お帰りなさいま……せ?」

 出迎えた私の専属侍女であるカトレアが、一瞬驚いた表情をしましたが、直ぐに気持ちを切り替えたのは流石ですわ。
 そして、主である私に目配せをすると、私を放置し、「彼」の目の前へ。

「お久しぶりでございます、王太子殿下。ようこそおいでくださいました」

 深々と腰を折るカトレア。

 まぁ、この国の王太子ですからね。
 使用人であるカトレアからしたら敬う順番は決まってきますわ。
 この家が、いくら彼にとって勝手知ったる従兄弟の家とは言えね。

 ですが、そんなカトレアに、アシェリーは困り顔で苦笑いされましたわ。

「久しぶり………カトレア、いつも言うが、立太子してから……距離がないか?」

 ……ケジメと言うやつかしら?

 カトレアったら、アシェが去年立太子した後、彼を「お嬢様の従兄弟」から、「お嬢様の上司」みたいな感じにシフトチェンジしてしまったんですの。

 元々は、私たち三人兄弟と、従兄弟のアシェリー、領地が隣なベルバラは昔から一緒くたに育ったようなものですわ。
 それにつけ加えて、兄様専属の近侍と侍女、そして弟専属の近侍一人がおります。

 昔はカトレアもここまで距離をとっていなかったのですが、まぁ、仕方ないですわね。

「あれ?アシェリー様、お久しぶりですね」

 あら、そんな中我が家の使用人…と言うか、ヘンリーの近侍であるアレクですわ。

「アレク、久しぶりだな」
「はい、元気そうッスね、安心しました」

 うん、相変わらず。

 このアレクと言う男。年は私と同じなのですが、はっきり申し上げて「チャラい」です。
 ちゃんとした場では猫が百匹くらい降ってくるのですが、普段はこんな感じ。
 これでちゃんと仕事をこなすのですから……本当、私のもう一人の専属侍女であるララミーそっくりですわ。

「アレク…貴方またっ」
「やだなぁ、今更だろ?」

 カトレアから氷の様な視線がアレクに…。
 はぁ…またですの?毎回コレでよく飽きませんわね。

「二人ともぉ、程々にだよ?お嬢様方を玄関ホールで待たせるの?」

 あら、一人追加………ララミーですわ。
 ポヤポヤしながらも、仕事はする子のもう一人ですわね。

「お嬢様方~、お帰りなさいませぇ。この人数ですから客間がよろしいですかぁ?」

 まぁ、喋り方は……大目に見てくださいませ。

「えぇ、お願い。と言うか、既に用意してあるのでしょ?」

 溜息混じりに私がそう言うと、ララミーはイタズラがバレた子供のように笑い、「えへへ」と、小首を傾げました。

「はい、ご用意済みです」
「ありがとう。仕事が早くて助かるわ」

 私の専属侍女が「出来ない」訳がありませんわ。
 まったく。





 客間に入ると、向かい合うかたちで、私達はそれぞれソファーに腰掛けました。

 目の前には、アレクが入れた紅茶が置かれ、添える様にカトレアがクッキーを置いていきます。
 仲が悪いんだか良いんだか…まぁ、良いんでしょうね。

 ……………実は二人、お付き合いしてますから。

 犬猿の仲のはずが、気付いたら付き合ってましたわ。
 何があったかは聞きませんが。

 さて、それより本題ですわ。

「アシェ、では聞かせていただける?」

 そう、今日アシェとベルバラが我が家に来たのは、彼から渡したい物があると言われたから。

「実はな、皆に「コレ」を貰ってもらいたい」

 アシェは、カバンから手のひら大の袋を出すと、中身を机の上に転がしました。

 中から出てきたのは、金色の輪っかが三つ。
 指輪……でしょうか?透明な小さな石が一つ付いていますわ。

「これは?」

 一つ手にとってみると、内側に魔法式がビッシリですわ。
 魔道具ですわね。

 アシェのお顔を見ると、真剣な表情で口を開かれました。

「これは、「あの女」のギフトを遮る魔道具だ」
「あの…魅了系のギフトですか?」

 私の「魅了系」と言う言葉に、弟達の顔色が変わりました。
 魅了系ギフトは種類が限られています。
 そして、厄介なものは神殿の管理下に置かれる事が決まっています。

「あの女のギフトは「魅了せし者」だ」

 は?

 嘘でしょ?

 「魅了せし者」は、能力者が好意を持つ者を操れる。
 そして、ギフトの能力が上がると、好意がなくとも能力を使えるようになる。
 あの様子だと、小娘は自分の能力を把握していないのでしょうが、もし「ソレ」に気付いたら。

「頭が痛くなりそうですわ」
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