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ー外話(その後のお話し)ー
SS 誰かさんの憂鬱 ー前編ー
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優雅に流れる音楽。
大広間では「今日」という日の賛辞が飛び交っている。
後一時間もすれば式典が始まる。
そんな中。
「…………憂鬱」
私こと、シルビア=サフィールは、現在王城のある一室にて一人掛けの椅子に座り、絶賛項垂れ中です。
………因みに、窓辺で一人影をつくりながら。
いやね、何が憂鬱かって?
それは「今日」、私とエリオット様の結婚式だからですよ。
と、語弊があるな…。
説明しよう。
約一年前から準備が始まり、私達はやっとこの日を迎えた。
その間、隣国との事件など、面倒な事が降りかかったりしたが、スケジュール通り式を迎える事ができたのは良かったと思う。
私自身、今日は特別な日と言う認識はあるし、実際には嬉しい。
つまり、結婚式自体には何ら不満は無い。
で、つまり問題は別の所にある。
「…………はぁぁぁっ」
思わず長い溜息が出た。
丁度いい位置にある窓枠に肘を掛け、頬杖をつきながら、遠目で置かれた姿見をチラ見。
うーん。
見慣れなすぎて違和感半端ない。
「………まぁ、「らしく」は見えるけどね」
私は、「憂鬱」の元凶をマジマジと見ながら、またも項垂れるのだった。
そんな中、空気をぶち壊す勢いで、部屋の扉が叩かれた。
この部屋は、今日私の専用支度部屋となっている。
と言う訳で、ここに入る人間は限られているのだが…。
「………どうぞ?」
侍女達が出払っている今、私は気怠そうに応え、扉を開いた。
どうせ、部屋に来る人間も限られている。
だが、そこに居たのは、焦った表情をつくる見知らぬ侍女だった。
「シルビア様、大変申し訳ございません!実は式の前にどうしても会いたいと仰る方が!」
城の侍女らしからぬ取り乱しよう。
だが、それも束の間、何故か侍女は私を見るなりフリーズした。
「………え?」
「何?」
何かよく分からんが、目の前の侍女が固まっている。
「えっ…シルビアさ…ま?」
「分かってて呼びに来たのではないの?」
とりあえず、意味不明な見知らぬ侍女に視線を向けると、侍女はその視線に対し顔を赤めた。
………あれ?
………この侍女。
ふーん。
そっか。
………やれやれ。
「で、私に用って誰?」
「あっ……あの!その!」
赤めた顔が一気に蒼白になる。
まったく、よりによって何で「今日」を選ぶかなぁ…。
いや、今日だからこそか。
今日は、各国の要人が多く集まっている。
人を隠すなら…と言うやつか。
<………にしても、舐められたものだな>
その時。
「これは申し訳ございません。式典前と言うお忙しい中で」
侍女の隣に見知らぬ男性が並び立った。
金の短髪を後ろに撫でつけた、青い瞳の男性。
背はそこそこ高く、歳は……二十代後半辺りかな?
「失礼ですが、どちら様ですか?」
と言うか、「城の警備はどうなってるんだ!」と思う。
今日は次期国王であるエリオット様の結婚式。
にも関わらず、相手である私の控室にホイホイ知りもしない客人を通すなど……。
なんてね……はぁ。
やっぱり「あれ」だよなぁ…。
と、そうこう考えが行き着いた瞬間。
「失礼。実は私、隣国「エリクシル」の外交官をしておりまして、「ハロルド=ターナス」と申します」
「……その、エリクシルの外交官殿が何用でしょうか?」
不適な笑みを向けてくる「自称」エリクシルの外交官ターナス殿。
自称って言うのはアレだよ。私が彼を知らないからね。
「実は、サフィール殿に折り入ってお願いがございまして。失礼ながら侍女殿に面会をお願いしたのです」
にこやかな表情のターナス殿。
それと対照的な、怯えた表情の侍女。
うーん。
大体の検討はついてきたけど。
にしても、「今日」を選ぶあたり、豪胆と言うか無神経と言うか。
………仕方ない。
「お願い…とは?」
その瞬間、ターナス殿は瞬時に右手を上げると、その手に持つ何かを発動させた。
「ふふっ、貴方にしか頼めないお願いですよ?」
大広間では「今日」という日の賛辞が飛び交っている。
後一時間もすれば式典が始まる。
そんな中。
「…………憂鬱」
私こと、シルビア=サフィールは、現在王城のある一室にて一人掛けの椅子に座り、絶賛項垂れ中です。
………因みに、窓辺で一人影をつくりながら。
いやね、何が憂鬱かって?
それは「今日」、私とエリオット様の結婚式だからですよ。
と、語弊があるな…。
説明しよう。
約一年前から準備が始まり、私達はやっとこの日を迎えた。
その間、隣国との事件など、面倒な事が降りかかったりしたが、スケジュール通り式を迎える事ができたのは良かったと思う。
私自身、今日は特別な日と言う認識はあるし、実際には嬉しい。
つまり、結婚式自体には何ら不満は無い。
で、つまり問題は別の所にある。
「…………はぁぁぁっ」
思わず長い溜息が出た。
丁度いい位置にある窓枠に肘を掛け、頬杖をつきながら、遠目で置かれた姿見をチラ見。
うーん。
見慣れなすぎて違和感半端ない。
「………まぁ、「らしく」は見えるけどね」
私は、「憂鬱」の元凶をマジマジと見ながら、またも項垂れるのだった。
そんな中、空気をぶち壊す勢いで、部屋の扉が叩かれた。
この部屋は、今日私の専用支度部屋となっている。
と言う訳で、ここに入る人間は限られているのだが…。
「………どうぞ?」
侍女達が出払っている今、私は気怠そうに応え、扉を開いた。
どうせ、部屋に来る人間も限られている。
だが、そこに居たのは、焦った表情をつくる見知らぬ侍女だった。
「シルビア様、大変申し訳ございません!実は式の前にどうしても会いたいと仰る方が!」
城の侍女らしからぬ取り乱しよう。
だが、それも束の間、何故か侍女は私を見るなりフリーズした。
「………え?」
「何?」
何かよく分からんが、目の前の侍女が固まっている。
「えっ…シルビアさ…ま?」
「分かってて呼びに来たのではないの?」
とりあえず、意味不明な見知らぬ侍女に視線を向けると、侍女はその視線に対し顔を赤めた。
………あれ?
………この侍女。
ふーん。
そっか。
………やれやれ。
「で、私に用って誰?」
「あっ……あの!その!」
赤めた顔が一気に蒼白になる。
まったく、よりによって何で「今日」を選ぶかなぁ…。
いや、今日だからこそか。
今日は、各国の要人が多く集まっている。
人を隠すなら…と言うやつか。
<………にしても、舐められたものだな>
その時。
「これは申し訳ございません。式典前と言うお忙しい中で」
侍女の隣に見知らぬ男性が並び立った。
金の短髪を後ろに撫でつけた、青い瞳の男性。
背はそこそこ高く、歳は……二十代後半辺りかな?
「失礼ですが、どちら様ですか?」
と言うか、「城の警備はどうなってるんだ!」と思う。
今日は次期国王であるエリオット様の結婚式。
にも関わらず、相手である私の控室にホイホイ知りもしない客人を通すなど……。
なんてね……はぁ。
やっぱり「あれ」だよなぁ…。
と、そうこう考えが行き着いた瞬間。
「失礼。実は私、隣国「エリクシル」の外交官をしておりまして、「ハロルド=ターナス」と申します」
「……その、エリクシルの外交官殿が何用でしょうか?」
不適な笑みを向けてくる「自称」エリクシルの外交官ターナス殿。
自称って言うのはアレだよ。私が彼を知らないからね。
「実は、サフィール殿に折り入ってお願いがございまして。失礼ながら侍女殿に面会をお願いしたのです」
にこやかな表情のターナス殿。
それと対照的な、怯えた表情の侍女。
うーん。
大体の検討はついてきたけど。
にしても、「今日」を選ぶあたり、豪胆と言うか無神経と言うか。
………仕方ない。
「お願い…とは?」
その瞬間、ターナス殿は瞬時に右手を上げると、その手に持つ何かを発動させた。
「ふふっ、貴方にしか頼めないお願いですよ?」
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