18 / 33
ー本編(2)ー
14話が通じないんですが!
しおりを挟む
帰宅後、私は身なりを整え城へと向かった。
と、まぁ、ここまでは何時も通り。
だが、問題は…。
「貴様、今日も卑しくエリオットに会いに行くとは!下心が丸出しな下品な男だ、それでも侯爵家の人間か?呆れるな!」
いや、本当に………殺っちゃっていいかなぁ。
一旦帰宅した私は、案の定と言うか、待ち構えていたルドニーク殿下に捕まった。
それから、我家の用意した城への馬車に無理やり近侍と共に乗り込んで来ると、そのまま付いてきたのだ。
「その……シルビア様。ウチのバ……いぇ、王太子殿下がご迷惑をお掛け致します」
馬車の中、向かいのルドニーク殿下の横で、護衛を兼ねた近侍の男が渋い顔をしていた。
<あー。今、この人「バカ」って言いかけたな…>
そして、近侍は懐から何やら取り出すと、ささっと口に流し込んだ。
…………多分胃薬だ。
まぁ、仕えてる主人が「コレ」じゃあ、分からないでもないけどね。
思わず向けてしまった同情の視線に、近侍は自身の胃を押さえながら、「痛み入ります」と、無言の表情で返してきた。
だがその時。
横でそのやり取りを見ていたルドニーク殿下は、全くもってお門違いなセリフを吐いてきたのだった。
「貴様!私の近侍にまで色目を使うとは何事だ!そのような輩を義理弟にしなくてはならぬとは……。恥を知れ!」
ん?
は?
今…何て言ったかな?
幻聴?
殿下の横では、一瞬にして近侍の表情が蒼白になっている。
「………失礼ですが、殿下。義理弟とはどう言う事でしょうか?」
私は、スーッと自分の視線が冷めていくのを感じながら、殿下へと口を開いた。
その視線に、向かいの近侍がビクリと肩を震わす。
だが、当の殿下はというと、「お前は何を言っているんだ?」という表情で私を見ていた。
「私の弟と、貴様の姉が婚姻を結んだら、貴様は私の義理弟だろうが!馬鹿なのか?理解力もないとは嘆かわしい」
………理解力が無いのは「お前」だ。
今日、父上に要相談だな。
姉上が、あんな奴の嫁になどなる訳がない!
何で、こんなのが王太子なワケ?
と言うか……。
<ふふっ……相手をする「価値」もない「クズ」だな>
それから程なく。
私…いや、私達が乗った馬車は、城へと到着し、何時もの様にエリオット様の専属侍女である「マイカ」に迎えられた。
因みに、到着直後のウチの御者の枯れた様な表情に、バカ王太子の近侍が頭を下げまくっていたのにはウケた。
間違いであれ、自分の主人に意見できる者は少ない…か。
特に自国の王太子なら尚更。
まぁ、同情は「もう」する気ないけどね。
アレを放置していたのは自分達だし?
「では、シルビア様」
そんな中、マイカは私以外をマル無視し、城内へと向かってくれた。
うん、彼女も中々…。
そういうこは好きだなぁ…あ、恋愛感情じゃなくね?
流石はエリオット様の「乳姉妹」だけはある。
「少し…遅くなったけど、エリオット様は大丈夫かな?」
「はい。多分「こうなる」だろうからと…、陛下と宰相閣下より申し使っておりましたので」
何やら、陛下達にはお見通しだった様だ。
まぁ、国同士のなんやかんやがあるから、バカ王太子の留学に関して、陛下と父上が知らない訳がないな。
それより…。
何時までこいつらは付いてくるんだ……。
「貴様とエリオットを二人きりなど出来ん!女装好きの変態で、しかも女ばかりか、男にまで色目を使う者にエリオットをやる訳にはいかんしな!」
あー、ダメだ。
今すぐ殺したい。
と、その時。
玄関ホールの奥。
吹き抜けの階段から陛下が父を従えて降りて来るのが見えた。
ものすごく、面白そうな表情の陛下と、今にも人を殺しそうな表情の父に、その場にいた者達は一斉に動きを止めた。
そして、陛下はというと、ゆっくりとした足取りで、此方へと近づいてきた。
「ルドニーク殿…。我が城での醜い暴言は控えてくれぬか?いくら同盟国とは言え、礼儀は心得られよ」
顔は笑顔だか、目は全く笑っていない。
「もっ…申し訳ございません」
恐怖にか、一瞬にして顔色を失った殿下とその近侍は、すぐさま腰を折り、陛下に頭を下げた。
まぁ、あれだな。
エルドラントは同盟国だか、国の規模で考えたら小国だ。
大国であるトーラスの王族に勝てる筈がない。
寧ろ、機嫌でも損ねようものなら、同盟を切られても文句は言えないのだ。
「まぁ、よい。今後は控えられよ……っと、それよりシルビア。話がある故、少々時間をもらうぞ?エリオットなら心配するな。既に伝えてある」
話し…ね。
さて「どちら」の話だろうねぇ。
「はい。畏まりました」
含みを込めた笑顔で返した私に、陛下はとても満足そうに頷いた。
と、まぁ、ここまでは何時も通り。
だが、問題は…。
「貴様、今日も卑しくエリオットに会いに行くとは!下心が丸出しな下品な男だ、それでも侯爵家の人間か?呆れるな!」
いや、本当に………殺っちゃっていいかなぁ。
一旦帰宅した私は、案の定と言うか、待ち構えていたルドニーク殿下に捕まった。
それから、我家の用意した城への馬車に無理やり近侍と共に乗り込んで来ると、そのまま付いてきたのだ。
「その……シルビア様。ウチのバ……いぇ、王太子殿下がご迷惑をお掛け致します」
馬車の中、向かいのルドニーク殿下の横で、護衛を兼ねた近侍の男が渋い顔をしていた。
<あー。今、この人「バカ」って言いかけたな…>
そして、近侍は懐から何やら取り出すと、ささっと口に流し込んだ。
…………多分胃薬だ。
まぁ、仕えてる主人が「コレ」じゃあ、分からないでもないけどね。
思わず向けてしまった同情の視線に、近侍は自身の胃を押さえながら、「痛み入ります」と、無言の表情で返してきた。
だがその時。
横でそのやり取りを見ていたルドニーク殿下は、全くもってお門違いなセリフを吐いてきたのだった。
「貴様!私の近侍にまで色目を使うとは何事だ!そのような輩を義理弟にしなくてはならぬとは……。恥を知れ!」
ん?
は?
今…何て言ったかな?
幻聴?
殿下の横では、一瞬にして近侍の表情が蒼白になっている。
「………失礼ですが、殿下。義理弟とはどう言う事でしょうか?」
私は、スーッと自分の視線が冷めていくのを感じながら、殿下へと口を開いた。
その視線に、向かいの近侍がビクリと肩を震わす。
だが、当の殿下はというと、「お前は何を言っているんだ?」という表情で私を見ていた。
「私の弟と、貴様の姉が婚姻を結んだら、貴様は私の義理弟だろうが!馬鹿なのか?理解力もないとは嘆かわしい」
………理解力が無いのは「お前」だ。
今日、父上に要相談だな。
姉上が、あんな奴の嫁になどなる訳がない!
何で、こんなのが王太子なワケ?
と言うか……。
<ふふっ……相手をする「価値」もない「クズ」だな>
それから程なく。
私…いや、私達が乗った馬車は、城へと到着し、何時もの様にエリオット様の専属侍女である「マイカ」に迎えられた。
因みに、到着直後のウチの御者の枯れた様な表情に、バカ王太子の近侍が頭を下げまくっていたのにはウケた。
間違いであれ、自分の主人に意見できる者は少ない…か。
特に自国の王太子なら尚更。
まぁ、同情は「もう」する気ないけどね。
アレを放置していたのは自分達だし?
「では、シルビア様」
そんな中、マイカは私以外をマル無視し、城内へと向かってくれた。
うん、彼女も中々…。
そういうこは好きだなぁ…あ、恋愛感情じゃなくね?
流石はエリオット様の「乳姉妹」だけはある。
「少し…遅くなったけど、エリオット様は大丈夫かな?」
「はい。多分「こうなる」だろうからと…、陛下と宰相閣下より申し使っておりましたので」
何やら、陛下達にはお見通しだった様だ。
まぁ、国同士のなんやかんやがあるから、バカ王太子の留学に関して、陛下と父上が知らない訳がないな。
それより…。
何時までこいつらは付いてくるんだ……。
「貴様とエリオットを二人きりなど出来ん!女装好きの変態で、しかも女ばかりか、男にまで色目を使う者にエリオットをやる訳にはいかんしな!」
あー、ダメだ。
今すぐ殺したい。
と、その時。
玄関ホールの奥。
吹き抜けの階段から陛下が父を従えて降りて来るのが見えた。
ものすごく、面白そうな表情の陛下と、今にも人を殺しそうな表情の父に、その場にいた者達は一斉に動きを止めた。
そして、陛下はというと、ゆっくりとした足取りで、此方へと近づいてきた。
「ルドニーク殿…。我が城での醜い暴言は控えてくれぬか?いくら同盟国とは言え、礼儀は心得られよ」
顔は笑顔だか、目は全く笑っていない。
「もっ…申し訳ございません」
恐怖にか、一瞬にして顔色を失った殿下とその近侍は、すぐさま腰を折り、陛下に頭を下げた。
まぁ、あれだな。
エルドラントは同盟国だか、国の規模で考えたら小国だ。
大国であるトーラスの王族に勝てる筈がない。
寧ろ、機嫌でも損ねようものなら、同盟を切られても文句は言えないのだ。
「まぁ、よい。今後は控えられよ……っと、それよりシルビア。話がある故、少々時間をもらうぞ?エリオットなら心配するな。既に伝えてある」
話し…ね。
さて「どちら」の話だろうねぇ。
「はい。畏まりました」
含みを込めた笑顔で返した私に、陛下はとても満足そうに頷いた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる