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第十話

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「アラン、患者さんだ」


「分かりました、お入りください」


「失礼します」


 入ってきたのは白い髪に赤い瞳をした美人だった。


「初めまして、名前を聞いてもよろしいですか?」


「ゼーラと言います。C級冒険者です」


「僕はアランと言います」


「ええ、存じております。とても素晴らしい方だとか」


 ほくそ笑むゼーラさん

 その目はまるで獲物を狙う肉食動物のようだ。


「そ、そうですか」


「アラン先生の噂はかなり広まってるのですよ、それこそこの国だけにとどまらず隣の獣人の国にまで」


「そんなにですか!?因みにどんな噂が…?」


「そうですね…凄腕の回復魔導士がギルドの診療所にいるっていう噂です」


「恐縮です」


「アラン先生に見合った噂だと思いますよ」


「ありがとうございます、それで今日は治療という事でよろしいのですか?」


「はい、実はここを怪我してしまいまして」


 ゼーラさんはそういうと髪をかき上げ自分の首筋を見せてくる。そこにはかなりの腫れが存在していた


「これは腫れ蛇に噛まれたんですか?」


「さすがアラン先生、おっしゃる通り腫れ蛇に噛まれてしまって腫れが引かないのです」


「なるほど、でも腫れ蛇はここら辺にはいませんよね。もしかしてゼーラさんは冒険者ギルドの別の支部から来たんですか?」


「先生は探偵ですか?その通り私はいつもは別の支部で冒険者として働いています。ちょっとした用事があってこっちに来たのですが途中でこの通り噛まれてしまって」


「そうだったんですか、それは災難でしたね。このくらいの腫れならすぐに治せますので安心して下さい」


「ありがとうございます。では早速お願いします」


「はい、『ヒール』」


「あっ!!ああああああ!!」


 ゼーラさんは反射的に首をすくめるように反応する。


「ゼーラさん、大丈夫ですか?」


「ええ…はぁ…はぁ…大丈夫です…ちなみにアラン先生」


「私…首筋か…性感帯なんです…ふふ」


 それを聞いた途端身もだえするゼーラさんに意識が集中してしまう


「あっ…あっ…あっ…はぁ…ああん」


「ゼ、ゼーラさん…もう少し声を抑えられませんか?」


「ふふ、そうしたいのですが、どうしても感じてしまって…!」


 これではダメだ、早めに治療を済ませなければ。


 僕は回復魔法の魔力を増やす。


「ああっ…先生…そんな急に…ダメ…ああああああああ!!」


「ゼーラさん、治療は終わりましたよ」


「もう先生…激しすぎ…ですよ」

 
 ゼーラさんが息を上げてる姿がとても魅力的に見える。


「じゃあ先生、私なりのお礼をしたいので今日ここに来て下さい」


 渡されのは宿屋の名前が書いてある紙だった。


「先生、待ってますよ」


 そう言い残すとゼーラさんは診療所を後にした。

 意志を強く持てばこの誘いを断れただろう。そう意志が強ければ…


 コンコン


「先生、待ってましたよ。ふふ、さあどうぞ中に」


 この日二人が部屋から出ることはなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「聞いたか隣の支部の回復魔導士の話」


「聞いた聞いた!なんでもものすごく気持ちが良いそうじゃないか」


「たまらないね、今度行きたいくらいだよ」


「そういえばゼーラの奴を最近見ないね」


「あんた知らないのかい?ゼーラは今隣の支部に向かってるよ」


「本当かい?」


「ああ、この前腫れ蛇に噛まれたから治療をしに行くって言ってそのまま」


「腫れ蛇くらいここの診療所でも治せるだろ!」


「そんなに行きたかったてことだね」


「あいつ、かなりの肉食系だしな」
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