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侍女の過去
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私、ローゼとリンナは学生時代からの付き合いだ。
お互い貴族ばかりが通う学園でともに青春を過ごした。
ある日のこと、とある男子生徒がリンナに告白した。
リンナ自身良く知らない相手だったので丁寧に断ったらしいのだがフラれた男は腹いせにリンナの悪評を学園に広めた。
リンナは感情が豊かな子だ。
普通の女の子の様に泣いたり笑ったりどうしようもなくて友人に助けを求めに来たりする。
だがそれを通り越してリンナを怒らせてしまうと彼女は感情が抜け落ちたような目をし始める。
男がリンナの悪評を広めて数週間、そいつは学園を去った。
本気で怒ったリンナは…最恐だ。
◇◇◇◇(リンナ視点)
私は今午後のお茶を楽しんでいる。
このお茶を入れたのは持ちろん侍女のルルイ。
彼女の仕事は完璧でお茶は本当においしい。
「ルルイ、もしよかったら一緒にお菓子を食べない?ローゼからいいお菓子をもらったの」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えていただきます」
テーブルを挟んで向かい合いながらお菓子を口に運ぶリンナとルルイ。
静かな時間が流れる。
「ルルイは今までどんな恋愛をしてきたの?」
火ぶたを切ったのはリンナだった。
「恋愛ですか…お恥ずかしながらこの年まで恋愛をしたことが無くて、殿方とも付き合ったことがないのです」
「それは意外ね。人の男はすぐに奪うのに」
「……気づいていらっしゃったのですね」
「ええ、あの日は雨の日だったわ」
「あれはマーカス様から言い寄られて」
「言い訳はいいわ、というか嘘はやめなさい。せっかく女子会をしてることだしお互い本音で話し合いましょうよ」
ルルイの芝居がかった涙目はリンナの前では効かなかった。
ルルイも本気で話す気になったのだろう眼鏡を外しおさげにしていた黒髪をほどく。
「あら美人じゃない。わざと平凡に見せてたの?」
「そうですよ。あの姿だとあまり警戒されませんしこの姿になった時のギャップが男性受けするんです」
「へ~よっぽど男好きなのね」
「貴族の女性が嫌いなだけですよ。私、とある貴族の妾の子なんです。平民だった母とその子供の私はよく正妻にいじめられました。それがむかついて実の父親を誘惑して正妻より私を優先させるようにしました。気が付けば立場が逆転、正妻を顎で使う日々を送る様になりました」
遠くを見つめながら話すルルイとそれを聞きながらお茶を飲むリンナ。
静かな言葉の戦いが続く。
「素晴らしいお話ね。感動するわ」
「ええ、その父親ももう捨てましたけど。それからは貴族の家に仕えて男を誘惑し人間関係を崩壊させる日々を送りました。私他人の物がすぐに欲しくなってしまう質でそこに幸せを感じるんですよ。手に入れるとすぐいらなくなるんですけどね」
「悪女ね」
「悪女ですね」
「「フフフ」」
同時にお茶に手を付ける2人。
飲み終わり空になったカップをテーブルに置く。
「それでどうしますか?クビですか?」
「何言ってるの?私はルルイをクビにする気はないわ」
「え?」
ここで初めてルルイが虚を突かれた顔をする。
「言ったでしょ、本音で話しましょうって。だから私の言葉も本気。あなたはクビにしない」
「ど、どうして…」
「そうね…あなたの入れたお茶がおいしいからかしら」
ルルイは気が付いていた。リンナの言葉に嘘がなくても真実もないことに。
リンナがどう考えているかはわからない、わからないからこそ今まで通り過ごすことにルルイは決めた。
「マーカス様、とっちゃいますよ?」
「フフフ」
欲しいなら…あげますよ。
でも最後に笑うのは…私。
お互い貴族ばかりが通う学園でともに青春を過ごした。
ある日のこと、とある男子生徒がリンナに告白した。
リンナ自身良く知らない相手だったので丁寧に断ったらしいのだがフラれた男は腹いせにリンナの悪評を学園に広めた。
リンナは感情が豊かな子だ。
普通の女の子の様に泣いたり笑ったりどうしようもなくて友人に助けを求めに来たりする。
だがそれを通り越してリンナを怒らせてしまうと彼女は感情が抜け落ちたような目をし始める。
男がリンナの悪評を広めて数週間、そいつは学園を去った。
本気で怒ったリンナは…最恐だ。
◇◇◇◇(リンナ視点)
私は今午後のお茶を楽しんでいる。
このお茶を入れたのは持ちろん侍女のルルイ。
彼女の仕事は完璧でお茶は本当においしい。
「ルルイ、もしよかったら一緒にお菓子を食べない?ローゼからいいお菓子をもらったの」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えていただきます」
テーブルを挟んで向かい合いながらお菓子を口に運ぶリンナとルルイ。
静かな時間が流れる。
「ルルイは今までどんな恋愛をしてきたの?」
火ぶたを切ったのはリンナだった。
「恋愛ですか…お恥ずかしながらこの年まで恋愛をしたことが無くて、殿方とも付き合ったことがないのです」
「それは意外ね。人の男はすぐに奪うのに」
「……気づいていらっしゃったのですね」
「ええ、あの日は雨の日だったわ」
「あれはマーカス様から言い寄られて」
「言い訳はいいわ、というか嘘はやめなさい。せっかく女子会をしてることだしお互い本音で話し合いましょうよ」
ルルイの芝居がかった涙目はリンナの前では効かなかった。
ルルイも本気で話す気になったのだろう眼鏡を外しおさげにしていた黒髪をほどく。
「あら美人じゃない。わざと平凡に見せてたの?」
「そうですよ。あの姿だとあまり警戒されませんしこの姿になった時のギャップが男性受けするんです」
「へ~よっぽど男好きなのね」
「貴族の女性が嫌いなだけですよ。私、とある貴族の妾の子なんです。平民だった母とその子供の私はよく正妻にいじめられました。それがむかついて実の父親を誘惑して正妻より私を優先させるようにしました。気が付けば立場が逆転、正妻を顎で使う日々を送る様になりました」
遠くを見つめながら話すルルイとそれを聞きながらお茶を飲むリンナ。
静かな言葉の戦いが続く。
「素晴らしいお話ね。感動するわ」
「ええ、その父親ももう捨てましたけど。それからは貴族の家に仕えて男を誘惑し人間関係を崩壊させる日々を送りました。私他人の物がすぐに欲しくなってしまう質でそこに幸せを感じるんですよ。手に入れるとすぐいらなくなるんですけどね」
「悪女ね」
「悪女ですね」
「「フフフ」」
同時にお茶に手を付ける2人。
飲み終わり空になったカップをテーブルに置く。
「それでどうしますか?クビですか?」
「何言ってるの?私はルルイをクビにする気はないわ」
「え?」
ここで初めてルルイが虚を突かれた顔をする。
「言ったでしょ、本音で話しましょうって。だから私の言葉も本気。あなたはクビにしない」
「ど、どうして…」
「そうね…あなたの入れたお茶がおいしいからかしら」
ルルイは気が付いていた。リンナの言葉に嘘がなくても真実もないことに。
リンナがどう考えているかはわからない、わからないからこそ今まで通り過ごすことにルルイは決めた。
「マーカス様、とっちゃいますよ?」
「フフフ」
欲しいなら…あげますよ。
でも最後に笑うのは…私。
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