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侍女の正体
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それからのことはあまり記憶がない。
マーカスに裏切られたこと、ルルイのあの悪魔のような顔、それだけが鮮明に記憶に残り気が付いたら外で朝が開けていた。
私は勇気を出して自宅の扉を開ける。
「おかえりなさいませリンナ様、ご友人とのお泊り会は楽しめましたか?」
出迎えたのはマーカスをたぶらかしたルルイだった。
ルルイはまるで何事もなかったかのようにいつも通りの顔で私に挨拶をする。
なんでそんなことが出来るのよ!私はこんなにも動揺しているのに!!
「え、ええ。楽しめたわ…。そっちは大丈夫だった?マーカスは何か言っていた?」
動揺が悟られないよう返事をした後、マーカスについて聞く。
ルルイはくすりと笑った後笑顔でこう言い放った。
「はい、リンナ様がいらっしゃらないことでとても寂しがっていらっしゃいましたよ。リンナ様はマーカス様に大変愛されていらっしゃいますね」
この女…ふざけてるのか?なんでそんな嘘を平然と吐ける?そもそもお前がマーカスをたぶらかしたんだろ!
初めて湧いただろう本気の殺意を必死で抑えその場をやり過ごすリンナ。
ここで全てを終わらせることは出来た。
クビと一言いえばいいだけ。
だけど何故かそうしてはいけない気がして思いとどまった。
私は憤る気持ちをどうすればいいのかわからずすぐに馬車を手配し友人であるローゼのところへ向かった。
◇◇◇◇(ローゼ視点)
扉を叩く音がした。
体調が回復したばかりなのでその音が頭に響く、てか本当にうるさいな!誰だよ!文句言ってやる!
扉を開けると目に涙を浮かべた友人のリンナが立っていた。
状況が理解できず声をかけようとした瞬間リンナが胸に飛び込んできた。
「どうしたんだよリンナ、もしかしてお泊り会出来なかったのそんなに根に持ってるのか?」
「違う!そうじゃなくて…マーカスに浮気された…」
「!!…とにかく上がって、紅茶出すから」
「うん…」
紅茶を飲んで少し落ち着いたリンナからその日あったことを全て聞いた。
話を聞いた後私はあることが気になる。
「大変だったねリンナ、それで聞きたいんだけどそのルルイって侍女は最近雇ったんだよね?」
「ええ、仕事を探してたみたいで試しに家事をやらせてみたら完璧だったから」
「ルルイは黒髪で地味なメガネをかけている?」
「ええ、髪も黒いし眼鏡をかけているわ。ローゼはルルイに会ったことがあるの?」
「やっぱり…会ったことは無いわ、でも噂を聞いた事がある」
「噂?」
先日、私はある噂を耳にした、なんでも雇われた家の男性をたぶらかして奪う侍女がいるらしいのだ。
黒髪で眼鏡をかけた平凡なその侍女は仕事が完璧なためすぐに雇われるが雇ってしまったら最後身近な男性を骨抜きにされ挙句の果てにはそのまま何処かに消えてしまうらしい。
「それって…!?」
「ああ、まず間違いなくルルイって女だな。その噂の侍女は男をたぶらかした後忽然と姿を消す、そして残った男女は関係が崩壊して不幸になるって話だ。だぶん実話だろう。いいかリンナ、あの女の正体は悪意を持ったビッチだ」
「……」
「問題はこれからどうするかだが…もうマーカスとルルイは親密な仲、先ずはリンナがどうしたいかだけどってい聞いてるのかリンナ…」
返事がなく俯いているリンナ。
ローゼが顔を覗くと驚いって咄嗟に一歩下がってしまう。
「ああ~、ここまでリンナを怒らせちまったのかルルイ。ご愁傷様」
顔を上げたリンナの目はどこまでも続く虚無のような黒さをまとっていた。
そうか…最初からそのつもりだったんだルルイは…なら遠慮はいらないわね。
マーカスに裏切られたこと、ルルイのあの悪魔のような顔、それだけが鮮明に記憶に残り気が付いたら外で朝が開けていた。
私は勇気を出して自宅の扉を開ける。
「おかえりなさいませリンナ様、ご友人とのお泊り会は楽しめましたか?」
出迎えたのはマーカスをたぶらかしたルルイだった。
ルルイはまるで何事もなかったかのようにいつも通りの顔で私に挨拶をする。
なんでそんなことが出来るのよ!私はこんなにも動揺しているのに!!
「え、ええ。楽しめたわ…。そっちは大丈夫だった?マーカスは何か言っていた?」
動揺が悟られないよう返事をした後、マーカスについて聞く。
ルルイはくすりと笑った後笑顔でこう言い放った。
「はい、リンナ様がいらっしゃらないことでとても寂しがっていらっしゃいましたよ。リンナ様はマーカス様に大変愛されていらっしゃいますね」
この女…ふざけてるのか?なんでそんな嘘を平然と吐ける?そもそもお前がマーカスをたぶらかしたんだろ!
初めて湧いただろう本気の殺意を必死で抑えその場をやり過ごすリンナ。
ここで全てを終わらせることは出来た。
クビと一言いえばいいだけ。
だけど何故かそうしてはいけない気がして思いとどまった。
私は憤る気持ちをどうすればいいのかわからずすぐに馬車を手配し友人であるローゼのところへ向かった。
◇◇◇◇(ローゼ視点)
扉を叩く音がした。
体調が回復したばかりなのでその音が頭に響く、てか本当にうるさいな!誰だよ!文句言ってやる!
扉を開けると目に涙を浮かべた友人のリンナが立っていた。
状況が理解できず声をかけようとした瞬間リンナが胸に飛び込んできた。
「どうしたんだよリンナ、もしかしてお泊り会出来なかったのそんなに根に持ってるのか?」
「違う!そうじゃなくて…マーカスに浮気された…」
「!!…とにかく上がって、紅茶出すから」
「うん…」
紅茶を飲んで少し落ち着いたリンナからその日あったことを全て聞いた。
話を聞いた後私はあることが気になる。
「大変だったねリンナ、それで聞きたいんだけどそのルルイって侍女は最近雇ったんだよね?」
「ええ、仕事を探してたみたいで試しに家事をやらせてみたら完璧だったから」
「ルルイは黒髪で地味なメガネをかけている?」
「ええ、髪も黒いし眼鏡をかけているわ。ローゼはルルイに会ったことがあるの?」
「やっぱり…会ったことは無いわ、でも噂を聞いた事がある」
「噂?」
先日、私はある噂を耳にした、なんでも雇われた家の男性をたぶらかして奪う侍女がいるらしいのだ。
黒髪で眼鏡をかけた平凡なその侍女は仕事が完璧なためすぐに雇われるが雇ってしまったら最後身近な男性を骨抜きにされ挙句の果てにはそのまま何処かに消えてしまうらしい。
「それって…!?」
「ああ、まず間違いなくルルイって女だな。その噂の侍女は男をたぶらかした後忽然と姿を消す、そして残った男女は関係が崩壊して不幸になるって話だ。だぶん実話だろう。いいかリンナ、あの女の正体は悪意を持ったビッチだ」
「……」
「問題はこれからどうするかだが…もうマーカスとルルイは親密な仲、先ずはリンナがどうしたいかだけどってい聞いてるのかリンナ…」
返事がなく俯いているリンナ。
ローゼが顔を覗くと驚いって咄嗟に一歩下がってしまう。
「ああ~、ここまでリンナを怒らせちまったのかルルイ。ご愁傷様」
顔を上げたリンナの目はどこまでも続く虚無のような黒さをまとっていた。
そうか…最初からそのつもりだったんだルルイは…なら遠慮はいらないわね。
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