白豚令嬢、娼婦になる。

京月

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第1章 フィリス編

豚令嬢:娼婦を知る

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 あれから馬車で数日、私達は森を抜けて近くの農村にお邪魔している。

 ルルさんの目的地は王都でここには食べ物と馬を休めるために寄ったのだ。


「やあルル様、お久しぶりです」
「村長もお久しぶりです。相変わらず元気そうで」
「いえいえ、これもルルさんのおかげですよ」


 ルルさんって何者なのかしら?

 妙に顔が広い、もしかしてとっても偉い人?

 村長はルルさんの後ろに立つ私を見つけると声を掛けてくれた。


「いや~ものすごい別嬪さんだ。ルル様のといるってことはあなたも娼婦様なのですかい?」
「違う。私は娼婦じゃない。ルルさんには王都まで乗せてもらうだけ」
「そうだったのか。あまりに綺麗だったから勘違いしてしまったよ。それにしてもだいぶ服が汚れているね」


 確かに、道中水浴びはしていたけど服は着替えることが出来なかった。
 
 ルルさんが服を貸してくれようとしたけど…胸が。


「もしよかったら私の娘の服を借りるといい。背丈も同じくらいだしちょうどいいだろう」
「ありがとう。恩に着るわ」


 私は村長の家に向かい娘さんの服を貸してもらった。うんピッタリ!

 それにしても村長の家はどこか寂しい感じがする。


「村長はここで一人で住んでいるの?娘さんは?」
「だいぶ前に家を出て働き始めたよ。今はルル様と同じところで娼婦様として働いている。誇らしい自慢の娘だよ」


 は?娘が娼婦をやっているのよ!?それが何で自慢になるの?

 わけが分からない。

 私達は村で食糧を買い付けるとまた馬車を走らせた。

 しかし私の表情は暗い。


「どうしたのフィリスちゃん?怖い顔して」
「怖い顔なんてしてない!ただ…あの村長、自分の娘が娼婦をやっているのに誇らしいって…訳わかんない」


 それを聞いたルルさんの雰囲気が変わる。

 普段は優しさが滲み出る糸目だが今は見開いて私を見つめていた。


「フィリスちゃんの国が娼婦をどう捉えてきたかは知らないわ。でもこのたタナバーグ王国では娼婦は誰もが憧れる素晴らしい職業なのよ」


 娼婦が素晴らしい職業?どういうこと?


「タナバーグ王国では娼館は貴族や王族、選ばれた人しか利用することは出来ない。つまり娼婦は貴族や王族を相手に夢を売る。娼婦は貴族や王族を相手にしても決して無礼のない教養のある人じゃないとなれないの。娼婦と言うだけで市民からは憧れの的なのよ」


 …だから村長は娼婦様って呼んでたんだ。

 貴族や王族相手に裸一貫で夢を見せる女性、確かに言われてみればかっこいい。

 私の国ではどれだけクズな男でもお金があれば娼婦は買えた。騎士学園の学生だって休日は娼館に行くことなんて珍しくなかったし。

 でもこの国は上の人しか娼婦と遊ぶことが出来ない。だから娼婦の価値も必然的に向上したんだ。

 私は初めてこの国における娼婦という存在の大きさを知った。
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