白豚令嬢、娼婦になる。

京月

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第1章 フィリス編

豚令嬢:騎士学園

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 私は運動が嫌いだ。

 太っているから動くと辛い。

 それに私が運動していると周りは無駄な努力と蔑んでくる。これも嫌いな理由。


 だけど一番嫌なのは私の隣で一緒に走っているこの女だ。

 金髪で蒼目、成績優秀で誰にでも優しい才色兼備、騎士学園に在学する数少ない女性の中の一輪の花、彼女の名前はユリ。

 何故彼女が私の隣で走っているか、それはその方が目立つからだ。いい意味で。


「フィナスさんが走ってくれるおかげで私が5割増しで殿方の目に移ります。騎士の中には武功で出世する人もいますから玉の輿には最適です。私の将来のためにもどうか私を目立たせてください、豚令嬢さん」


 わざと私のペースに合わせて走るユリは醜悪な笑みを浮かべながらそう言った。

 私はこの女が嫌いだ。もう一度言う、私はこの女が嫌いだ。

 騎士学園は寮生活で日々の苦しい訓練のため日頃から食事は多く食べる様に言われているのだが、玉の輿を狙うユリにとって体型の崩れは大敵らしく私に料理を押し付けてくる。

 多少の金銭と引き換えに。

 このお小遣いで私は本を買うことが出来た、しかしその代償としていくら訓練をしても痩せなかった。


◇◇◇◇


 騎士学園を卒業した。

 ユリは学生時代に出会った若手のホープと学生結婚を果たし、見事に玉の輿に乗ったらしい。

 そんな私にも結婚の話が来た。

 相手は…今まで4人の女性と結婚しその全員が謎の死を遂げている曰く付きの50代男性だった。

 流石に無理。

 私も今までにないほど父親に抗議をした。


「お前に選択権なんて無いんだ。大人しく結婚してせめて私達に迷惑をかけない生き方をしろ」


 私は最悪の婚約者に嫁ぐことになった。


◇◇◇◇


「グヒヒヒヒ!!あの野郎、自分の娘を差し出すからあの商談を結んでやったのに…なんだこの豚は!?ふざけるな!!」


 あんたの方が十分豚よ…と言いたくなる程、私の結婚相手は醜く太ったハゲだった。

 しかも拷問が趣味。

 これで私の人生は終わった。

 そう思っていた私だが、嫁ぎ先が盗賊に襲われた。

 屋敷は燃え、金品は根こそぎ奪われ、そして屋敷に仕えていた女は皆誘拐された。

 私も含めて。

 ……私の人生はこんなのばかりだ。

 神様は私に優しくない。

 盗賊に誘拐された女の未来はあの最悪の婚約者に嫁ぐより暗く絶望だ。

 いっそこのまま舌を…。


「お嬢様、ここから脱出しましょう」


 声を掛けてきたのは一緒につかまったメイドのリゼッタだった。

 どうやら彼女には名案があるらしい。

 私はリゼッタにかけることにした。
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