上 下
3 / 3

後編

しおりを挟む
 突然、ギブルがミレーナに結婚式の日取りを決めたいと言ってきた。
 
 それは何てことない日、2人で紅茶を嗜んでいる時だった。


「ミレーナ、僕たち正式に結婚しないか?」

「…どうしたのですか急に?」


 そう聞き返すミレーナには全てお見通しだった。


(ギブル様もルーのわがままに耐えきれなくなったのね。
 泉に落としてからルーの評判はガタ落ち。
 人が変わったかのように周りに迷惑ばかりかけて、今じゃ’死神’なんて呼ばれているとか。)


「別に何かがあったわけじゃない。
 ただ、僕たちも次に進むべきかなと思ったんだ。
 だから結婚しよう。」


「そんな…酷いですギブル様!
 特に理由もないのにい結婚したいなんて、女をなんだと思っているんですか?」


 当然のように了承されるだろうと思っていたギブルは唖然とする。

 そして慌てふためきながら、涙を流すミレーナに駆け寄る。


「すまない。
 誤解なんだ。
 僕はずっと君と結婚したかった。
 だから、泣かないでくれ」


(フフフ、慌てふためいてますね。
 泣いたフリをした甲斐がありました。
 でも、もう遅いのです)


 ここでミレーナはギブルとの関係性を一歩進めることにした。
 
 しかし、それはギブルとは真逆の方向に。


「実は私、知ってたんです。
 ギブル様が別の女性と愛し合っていることを。」


「嘘だ。」


「本当です。
 でも私はギブル様が好き。
 だから、その女に会わせてください!
 直接私がその女性に手を引くよう申し上げます。」


「…分かった。」


◇◇


 ギブルを連れ、ルーの元へと出向いたミレーナ。

 ルーはギブルを見るなり、不機嫌な表情になる。


「ギブル、何で私の言うこと聞いてくれないの?
 この前言ったよね?
 海底に沈む沈没船が見たいから引き上げて来てって。
 それをすっぽかして何でミレーナと一緒にいるのよ。」


「ルー、、、ルーさん。
 それは無理だと何度も言ったはずだよ。
 それより君はミレーナと知り合いだったのかい?」


「ええ、そうです。
 私とルーはお友達なんです。
 それでルー、ギブル様が私と結婚したいと言っているんだけど、ルーはそれでいいの?」


 ルーとミレーナが知り合いだったことに驚きを隠せないギブルを他所に、女同士で語り合う2人。

 ルーはまるであざ笑うかのように嘲笑する。


「ダメに決まってるでしょ。
 ギブルは一生私といるの。
 誰にも邪魔させない」


「そう。
 それじゃあ仕方ないですわ。
 そう言うことなのでギブル様、私達は婚約破棄です。
 どうかお幸せになってください。」


「ちょっと待ってくれ!
 一生?そんなの嫌だ!
 何故そんな簡単に引き下がるんだミレーナ。
 僕と結婚出来なくてもいいのかい?」


(どうしてそこまで上から目線で物事を語れるのかしら。
 それが目的で、今私はルーと会ってるの。
 浮気した時から私はギブル様と結婚はしないと決めてたし。
 残念でしたね。)


「落ち着いてくださいギブル様。
 ルーは公爵令嬢です。
 私が歯向かえる相手ではありません。
 そんなことをすれば一族が路頭に迷ってしまいます。
 これは、どうしようも出来ない事なのです。」


 ギブルの絶望した顔を見ながら、ミレーナは内心笑っていた。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。

百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」 いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。 ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。 「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」 父も私を見放し、母は意気消沈。 唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。 第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。 高望みはしない。 でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。 「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」 父は無慈悲で母は絶望。 そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。 「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」 メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。 彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。 初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。 3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。 華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。 でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。 そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。 でも、私の心は…… =================== (他「エブリスタ」様に投稿)

勘違いも凄いと思ってしまったが、王女の婚約を破棄させておいて、やり直せると暗躍するのにも驚かされてしまいました

珠宮さくら
恋愛
プルメリアは、何かと張り合おうとして来る令嬢に謝罪されたのだが、謝られる理由がプルメリアには思い当たらなかったのだが、一緒にいた王女には心当たりがあったようで……。 ※全3話。

婚約者の妹に石段から突き落とされたので婚約破棄

ほったげな
恋愛
婚約者の妹が嫌みな人だった。それに、石段から突き落とされて…?!※シナリオ形式です。

婚約破棄された公爵令嬢は監禁されました

oro
恋愛
「リリー・アークライト。すまないが私には他に愛する人が出来た。だから婚約破棄してくれ。」 本日、学園の会場で行われていたパーティを静止させた私の婚約者、ディオン国第2王子シーザー・コリンの言葉に、私は意識が遠のくのを感じたー。 婚約破棄された公爵令嬢が幼馴染に監禁されて溺愛されるお話です。

とっても短い婚約破棄

桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。 「そもそも婚約ってなんのこと?」 ***タイトル通りとても短いです。 ※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

婚約者から贈られた物を身につけるたびに笑い者にされていた理由が、浮気相手との時間を捻出するためだったようです

珠宮さくら
恋愛
ティルディアは、婚約者の贈り物のドレスを着るたび、婚約者に散々なことを言われて自信をなくしていたが、それが浮気をする時間を作るためだったようで……。 ※全3話。

結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様

新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。

処理中です...