妹の婚約者の娼婦になった私

京月

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 成人の儀を終えた貴族の男性に身請けされた娼婦は屋敷の中でもかなりの待遇を受ける。
 流石に婚約者や親族程ではないが邪険にされることはない。
 仕事内容は夜に男性に秘め事の指導。どうすれば女性が喜びかつ自分も満足できるかお実戦で教える。
 それ以外の時間は自由だ。
 許可さえもらえれば外出だって可能である。

 私は早速オリンに外出の許可を求めた。
 説得が成功するようエルザンテに住んでいた時は怖くて外も歩けなく不憫な生活を送ったと付け加えて話したらあっさりと許可を出してくれた。
 やはりオリンの扱いはそう難しくない。


 外出許可をもらった私が街に出て最初に向かったのは酒屋だった。


「おじさん、エールを一杯頂戴」
「おやフードを被って分からなかったけど女の子かい。こんな昼間から飲むなんて景気がいいね。ほら、エールだ」
「ありがとう」


 私は出されたエールを飲みながら代金を渡す。
 紙などの記録媒体は高価なためこういった店ではその場払いが当たり前。
 こういったお店が出すお酒は夜は安いけど昼は高い。
 昼から飲むことが出来る人たちはそれなりにお金や権力がある人達だ。

 
 私がここに来た目的、それは情報収集。
 欲しい情報はレレイのじゃない、父様についてだ。
 レレイについてはイサが調べてくれるのでまかせて大丈夫だろう。
それより今の私は父様のことが気がかりになっている。
 店主に頼んで情報は集めてもらっていたけど何故か父様の情報だけ全く入ってこなかったのだ。
 これは何か裏がある。
 私は酒屋の店内を薄目で見渡し一人の女性に目を付けた。


 着ている服は普通だけど時々でる細かい仕草は貴族のそれ。
 お忍びで気晴らしってところね。あの人にしましょう。
 私はお酒をもう一杯注文してその女性が座る席へと移動した。


「初めまして」
「何かしら?生憎フードを被った怪しい女性とは飲む趣味が無いのだけど」
「フードを被らなきゃ自由にお酒が飲めない生まれなのよ。あなたも似たようなものでしょ?これ私からの奢り。どうぞ」
「……お互い大変ね。このお酒はありがたくいただくわ。んっ、んっ。はぁ~、気軽に飲めるお酒程美味し物は無いわね。それで?私に何の用?」


 やはり賄賂は効果が高い。
 貴族令嬢は貸しを作りたがらないから、その場で即清算が常。
 これでこの人は私の質問に1つだけ答えてくれる。
 

「ある殿方について聞きたいの。名前はドートル・カルゼスト。知っている?」
「ああ、知っているわよ。あの話は有名だから」
「あの話?」
「娘さん、お姉さんの方が野盗に殺された話よ。知らない?」


 それは多分私のことだ。
 やっぱり私は殺されたことになっているんだ、早く父様に会って真実を伝えないと。
 女性は話を続ける。


「可哀そうよね。まぁでも一緒に野盗に襲われた妹さんと奥様は一命をとりとめたみたいだけど」


 え?母様が生きている!?
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