吉原の楼主

京月

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第二話

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 吉原遊廓は数ある遊郭の中でも江戸幕府によって公認された遊廓だ。

 元々は風紀の取り締まり、遊女屋をまとめて管理することによる治安の向上を求める幕府と遊女屋の利害が一致したことから公認されたのが遊廓の始まり。

 以来遊廓は安全に女性と一夜を共にできる所として栄えていった。

 そんな𠮷原遊廓にある一軒の妓楼がある。そこの楼主は人の心が失われているといわれているくらい冷徹な楼主で、同業者の間でも有名だった。

 名を藤三郎といいかなり容姿の整った楼主だ。かなりのやり手で何にもの遊女を有名にしていったとか。だがそれを差し引いても残るのは悪名ばかり。そしてついたあだ名が「人見ぬ藤三郎」だ。言葉通り遊女を人として見ないからついた名前だ。
 
 そこにまた女の子が身売りされてやってきた。可哀そうに、すぐにひどい目に合わせられる。吉原に来てしまっただけでも不運なのにまさかあの藤三郎の所だなんて。この世に仏様はいないのかもな。


「初めまして!ちよといいます!!歳は15歳でちゃんと働けるのでどうぞお願いします」


 首を垂れているのは元気のいい小汚い女の子だった。
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