【R-18】吉原の遊女

京月

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遊女

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 ここは吉原遊廓

 数多くの遊女が男に媚び、数多くの男がお金で女を買う鳥かご

 江戸に栄えたこの街の悲しくも語られなかった遊女の話


「こいつは上玉だな」

 
 女衒の男が私を見てそう言った。


「いくらになりますか?」

 
 相手の顔をうかがうように聞く父親


「そうだな、50両で買うわ」


「ありがとう御座います」


 私は父親に売られた。うちは兄弟が多く女の私をかかえる余裕はなかったのだ。

 女衒に買われた私は吉原遊廓の遊女として働くことになる


「はじめまして、ゆりと申します」


「お前には金をかけている。しっかり働けよ」


「分かりました…」


 ここの女郎屋の楼主は私を人として見ていない。まるで物を見るような目だった。

 嫌いだ



 禿になり姉女郎の元で仕事や曲芸などを覚える

 姉女郎は嫌なことがあるとすぐ私に八つ当たりする


「なんであのお客さんはあいつを選んで私を選ばないの!?私のほうが綺麗なはずなのに!!」


 姉女郎は私のお腹を気が済むまで蹴る


「うっ…」


「我慢しなさい!私はもっと我慢してるんだから」


 体の痣は見つかりずらいのを知っていて蹴ってくる

 他の人にバレないように

 嫌いだ


 いくつかの歳を越しゆりは禿から親造そして女郎つまり遊女になった

 夜見世になると私は張見世という木の檻のような所に座り外のお客さんに物色される

 他の遊女は指名して貰おうと必死に媚を売る

 私はその遊女の後ろに隠れて指名されないことを願う

 しかし選ばれるのはいつも私だ

 選んでほしいわけじゃないのに、代わって欲しいくらいなのに

 そんな私の気持ちを無視して嫉妬の目を向ける遊女たち

 嫌いだ


「おぉゆり…気持ちいいぞ…」


「あっ…あっ…わらわも…気持ちいい…でありんす」


 遊女の床での声は全て嘘

 男をいい気分にするための演技
 
 
「ゆり、愛しておるぞ」


「…わらわも愛しております」


 演技ともわからず愛をささやいてくる男

 嫌いだ



 ある日私を指名してきた男

 床入りはせず酌だけする男

 何故かいつも私を指名してを酌だけで終わる人

 私から床入りをせがんでしまった人

 
「あなたを…あっ…愛してる」


「拙者も愛しているぞゆり」


 演技ではなく本当の愛をささやいてしまった人

 好きだ


 あの人以外に触られたくない

 私は花魁になることを決意した

 日々のたゆまぬ努力の結果

 私は花魁になった

 

 物としてか見てこなかった楼主が私の機嫌を取るのに必死になる

 好きだ


 いつも理不尽な暴力を振って来た姉女郎は私の一言で格下の女郎屋に落された

 最後に見た姉女郎の絶望しきった顔

 好きだ


 私が花魁になったことで床入りに至るまで莫大なお金がかかるようになり手を出せなくなってしまった愛をささやいた男のいない日常

 好きだ


 私が本当に愛した人だけと体を許せる現状

 大好きだ


 
 莫大なお金にもかかわらず私の元に通ってくる太った男

 仕方なく床入りした男


「すまない、ゆりにはもう会いに来れない」


 権力をつかい私と愛している人を引き離した男

 私を身請けした男

 愛人として体だけを求めてくる男

 嫌いだ


 幼いころ父親に売られ

 人でなしの楼主と

 最悪の姉女郎を嫌い

 愛してもいない男に抱かれ

 本当に愛した男すら

 花魁になってしまったため引き離された

 馬鹿な私


 大嫌いだ
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