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土下座は万能ではない
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ディーゼは知らぬ者がいないほど有名な名家の生まれ。
社交界に出れば男が虫のように群がり求婚を申し出る。
向けられるのは浅ましい視線と欲にまみれた好意だけ。
ディーゼは心の底から思っていた。
私…独身でいいかな。
私に求婚してくる男って私じゃなくて家を見て寄って来るから面倒で仕方がないのよね。
いっそ出家するか!
とある貴族の誕生日パーティーに参加していたディーゼは軽食用に並べられた料理を取りながらそんなことを考えていた。
すると不注意で誰かとぶつかってしまう。
「あっ!ごめんなさい考え事してて!」
「こちらこそすみません!!」
それがハルドとの最初の出会いだった。
ぶつかってしまったついでハルドと多少言葉を交わす。
ちょっとした愚痴。
それでも彼は私の話を真剣に聞きその優しさが溢れる笑顔やさりげない気づかいに気が付けば彼のことを意識し始めていた。
「すみません、だいぶ話してしまいました。では私はこれで」
「あ、あの!!…またお話出来ませんか?今度はちゃんとしたレストランとかで」
「ええ、楽しみにしてます!」
それから幾度かの食事やデートを重ね私達は結婚前提で付き合うことになった。
晴れてハルドは私の婚約者になったのだ。
彼と一緒にいる時間は本当に楽しい。
今私は幸せだ。こんなに幸せでいいのかと思うくらい幸せだ。これがずっと続けばいいのに。
そんなことも思っていました。ええ思っていましたよ!!今では恥ずかしさで死にたくなるくらい思ってましたとも!!!
今ディーゼは自宅のリビングで仁王立ちしている。
目の前にはハルドと…実の妹であるロルゼが見事な土下座をかましている。
「すまなかったディーゼ!気の迷いだったんだ!!」
何がすまなかったよ、何が気の迷いよ!!このクソ男!!婚約者の妹に手を出すか普通!?
「ロルゼが俺を誘ってきて…」
「ちょっとハルド!?あの時はそういう雰囲気だったじゃない!私のせいにしないでよ!」
「あれは完全にろっちゃんのせいだろ!!」
「いやはる君よ!!」
挙句の果てに責任転嫁!?大人の自覚がないのか…!あとお互い愛称で呼び合ってるのがむかつく!!
もういいわ、どうにでもなれ!!
「今回のこと、私は許してあげる」
「本当か!?」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「だけどお父さんには報告するから」
二人の表情が凍る。
それもそのはず、私の父親ゴーゼスはこの国有数の権力者にして最恐の男と恐れられるほどの厳格者。
その琴線に触れれば最後どんな手を使ってでも対象を心身とも崩壊するまで追い詰める。
また頭でっかちな所もあるため実の娘でも容赦はしない。
「待ってくれ!それだけは待ってくれ!!」
「そんなことされたら私死んじゃうよお姉ちゃんん!!」
「勝手に死んでろ」
「いやーーーー!!」
すぐさま私は父親に今回のことを報告、それから数日間ハルドとロルゼの姿を見たものはいない。
久しぶりの再会を果たした者はその変わり様に恐怖したのだとか。
社交界に出れば男が虫のように群がり求婚を申し出る。
向けられるのは浅ましい視線と欲にまみれた好意だけ。
ディーゼは心の底から思っていた。
私…独身でいいかな。
私に求婚してくる男って私じゃなくて家を見て寄って来るから面倒で仕方がないのよね。
いっそ出家するか!
とある貴族の誕生日パーティーに参加していたディーゼは軽食用に並べられた料理を取りながらそんなことを考えていた。
すると不注意で誰かとぶつかってしまう。
「あっ!ごめんなさい考え事してて!」
「こちらこそすみません!!」
それがハルドとの最初の出会いだった。
ぶつかってしまったついでハルドと多少言葉を交わす。
ちょっとした愚痴。
それでも彼は私の話を真剣に聞きその優しさが溢れる笑顔やさりげない気づかいに気が付けば彼のことを意識し始めていた。
「すみません、だいぶ話してしまいました。では私はこれで」
「あ、あの!!…またお話出来ませんか?今度はちゃんとしたレストランとかで」
「ええ、楽しみにしてます!」
それから幾度かの食事やデートを重ね私達は結婚前提で付き合うことになった。
晴れてハルドは私の婚約者になったのだ。
彼と一緒にいる時間は本当に楽しい。
今私は幸せだ。こんなに幸せでいいのかと思うくらい幸せだ。これがずっと続けばいいのに。
そんなことも思っていました。ええ思っていましたよ!!今では恥ずかしさで死にたくなるくらい思ってましたとも!!!
今ディーゼは自宅のリビングで仁王立ちしている。
目の前にはハルドと…実の妹であるロルゼが見事な土下座をかましている。
「すまなかったディーゼ!気の迷いだったんだ!!」
何がすまなかったよ、何が気の迷いよ!!このクソ男!!婚約者の妹に手を出すか普通!?
「ロルゼが俺を誘ってきて…」
「ちょっとハルド!?あの時はそういう雰囲気だったじゃない!私のせいにしないでよ!」
「あれは完全にろっちゃんのせいだろ!!」
「いやはる君よ!!」
挙句の果てに責任転嫁!?大人の自覚がないのか…!あとお互い愛称で呼び合ってるのがむかつく!!
もういいわ、どうにでもなれ!!
「今回のこと、私は許してあげる」
「本当か!?」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「だけどお父さんには報告するから」
二人の表情が凍る。
それもそのはず、私の父親ゴーゼスはこの国有数の権力者にして最恐の男と恐れられるほどの厳格者。
その琴線に触れれば最後どんな手を使ってでも対象を心身とも崩壊するまで追い詰める。
また頭でっかちな所もあるため実の娘でも容赦はしない。
「待ってくれ!それだけは待ってくれ!!」
「そんなことされたら私死んじゃうよお姉ちゃんん!!」
「勝手に死んでろ」
「いやーーーー!!」
すぐさま私は父親に今回のことを報告、それから数日間ハルドとロルゼの姿を見たものはいない。
久しぶりの再会を果たした者はその変わり様に恐怖したのだとか。
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