神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月

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11 恥

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「聖女様、どうか私達と共にゼラス教の本殿がある王都に来ていただきたい」

「え!?王都?行く!絶対行くわよ!楽しみだわ、王都でショッピング!!」


 楽しそうに王都を夢見るシーナ。
 大司教たちは早速王都へ向かう準備を始める。
 ニアはマリンに声をかける。


「ちょっと小屋を借りていい?」

「はい」

「ありがとう。聖女様、こちらへ。その恰好では少し示しがつきません故、着替えていただきます」

「本当?ちょうどこんな泥くさい服着替えたかったのよ」

「行きましょう」


 シーナとニアが家に入っていた後、ナーゼストとマックスは今後の帰路について話し合っている中、眼鏡をかけた女性ラライネだけがマリンをじっと見つめている。


「なんですか?」

「あなたが妙に落ち着いているのが気になって。お姉さんが聖女になったのよ、もう少し驚かない?」

「ビックリはしてます…。まさかシーナが聖女だなんて」

 ラライネの質問に答えるマリン。
 しかし時折視線が空中へと移動する。


「何を見ているの?」

「な、何でもないです!」

「本当に?」


 ラライネはどうしてかマリンに必要以上に詰め寄ってくる。
 それを見かねたのか大男のマックスが声をかけてきた。


「おいラライネ、子供をいじめるんじゃなねぇよ。すまんな。いつもはこんな奴じゃないんだが、今日は何だか様子がおかしいんだ」

「だって、この子はお姉さんが聖女になったのにあまりにも無関心すぎる。それに何処か別の所に目を向けてる」

「そんなの当たり前だろ。姉貴が聖女に選ばれたなんて世界中探してもこの子だけだ。現実味が持ててないんだよ」

「そうだけど。絶対何かある…はず」

「お前な~、いい加減にしろよ!」


 喧嘩しそうになる2人。
 それ見てマリンはあたふたする。


 ど、どうしよう!?
 喧嘩は良くないし止めなくちゃ!


 マリンが仲裁に入ろうとするのと同時に小屋の扉が開かれた。
 出てきたのは白く荘厳な礼服に身を包んでシーナだった。
 

「お似合いです。聖女様」

「ありがとう!私も気に入ったわこれ。じゃあ、早速王都に向かいましょうか」

「聖女様、進言をお許してください」


 シーナが王都に向かおうと宣言した途端、声をかけたのはラライネだった。
 出鼻をくじかれたことでシーナは少し不機嫌になる。


「何?」

「はい。王都へは妹様も連れて行くべきです。聖女様であるシーナ様の血筋、この方も何かゼラス教に貢献してくれるような気がします」


 ラライネの進言は一理ある。
 マックスも含め他の大司教もこの意見には賛成だった。
 しかしシーナは冷え切った声でこう言い切った。


「いやよ。こんな妹と王都で生活するなんて、恥でしかないわ」
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