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 とある国の話。

 1人の王子様が平民の娘と恋に落ちました。

 王子様は彼女と生涯を共にしたいと王様に訴えましたが、王様は反対しました。


「平民の娘などお前に相応しくない!お前はたぶらかされているのだ。その娘を罪人として死刑にしろ!!」


 抵抗虚しく、娘は死刑となり、王子様は絶望しました。


「彼女がいない世界に私だけ生きていても仕方がない」


 王子様は自ら命を絶ってしまったのです。

 
 国民は嘆き、王様は涙しました。

 王様は己の過ちを認め、愛をこの世で最も尊い物として、新しいルールを作りました。


『愛は何にも縛られること無く、愛を縛るものも無く、愛を至上の物とする』


 そしてその国は最も愛に満ちた国として栄えたのでした。


『愛の国』 著者〇△


◇◇


「くだらないです」

 
 手に取った本を本棚へとしまう。
 銀色の髪をたなびかせ、かけている眼鏡を外し、図書室をでる。
 ドレスを着れば誰もが振り向くだろう容姿を持ちながら、何故か使用人と同じ作業服で王城を堂々と歩く女性。
 

 彼女の名前はエーレナ・マリアーネト、この国の王子ミルドラース・アイロの婚約者である。


 エーレナは図書室で本を読んだ後、その足で婚約者のいる部屋を訪ねた。


「エーレナです。入ります」
「ま、待て!ノックをしろ!」
「コン。これでいいですね。入ります」


 ミルドラース王子は積み上げられた本には手を付けず、メイドに用意させた菓子を楽しんでいる最中だった。
 急いで片づけた節はあるが、間に合わなかったのだろう。


「ミルドラース様、勉強は終わったのですか?」
「い、いや。まだだが…。」
「終わってもいないのにお茶を楽しんでいたと?」
「何事も休憩は必要だろ!」
「ダメです。ミルドラース様はこの国の王子であり、私の婚約者です。怠けている暇などありません」


 エーレナは貴族であるが位で言えば王子とは決して釣り合う存在ではない。
 しかし王様自らが息子の婚約者にとエーレナに話を付けたという。
 エーレナはとある条件を付けて、婚約の話を承諾した。
 

『私の手で史上最高の王様へと育て上げます。逃げることは許しません。部外者は口出しも許可しません。契約書にサインを』


 この条件を飲むことでエーレナはミルドラースの婚約者になったのだ。

 
 勉強をサボったことがエーレナにばれたミルドラースはその後、12時間に及ぶ特別授業を強制された。
 精も根も尽き果てたミルドラースはついに我慢の限界を迎える。


(ふざけるな!!僕は王子だぞ!次期国王だぞ!?なのに何でこんな扱いを受けないといけないんだ!!どうしたらこの地獄から逃げ出せる)


 ミルドラースはエーレナから逃げるため図書室にある本を片っ端から読み漁った。
 そこで一冊の本を見つけたのだ。


(これは…!!)
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