7 / 7
第7章
思惑と憶測の収束
しおりを挟む
ー次の土曜日
上司、篠崎、浜口でAの家へ
ガチャ
「あれ?大家さんから鍵借りたのに、開いてる…」
扉を開くと…
「お姉さん…?」
「あ…篠崎さん。と…Aの会社の方々ですか?わざわざ来てくださったんですね。ありがとうございます。」
「初めまして。Aさんの上司でした、棚橋と申します。」
「私Aさんと同じチームで、後輩の浜口です。」
「棚橋さん、浜口さん。初めまして。Aの姉です。」
「お姉さんは…よくここに来られるんですか?」
「たまに…。これが気になって…。」
「これは…?」
机の上に一冊のノートがあり、表紙には
『思惑と憶測と答えのない人生』
と書かれていた。
「ここに書かれている内容が…」
「これってもしかして…」
「…私たちのこと…?」
「そんな気がするんです。この3ページ目…葬式の日、篠崎さんに声をかけていただいたあのときの内容そのものなんです。」
「…そんなことって…あるのか…?」
「そして今、私たちがここで出会ったのも…」
「じゃあ、この途中のページに書かれている女性の気持ちが…Aさんの…」
「そうなんだと思います…。」
そのノートにはAの死後、篠崎たちが取った行動そのものを行う会社の仲間の話と、女性の心情の変化と死についての話が書かれていた。
「実は…Aさんの遺体を見つけたあの日、このノートを見たんだ。」
「そうだったんですか…」
「Aさんきっと浜口や篠崎が死について調べてくれること、望んでたんだと思うんだ。Aさんは死を選択したけど、それはみんなが嫌いで、とか会社が辛くて、とかではなくて…ってこと知って欲しかったんだと思う。」
「どうしてそういう理由でないってことがわかるんですか?」
「この最後のページに…」
『幸せになるために私はこの道を選びます。みんなの思う幸せの形とは違うかもしれない。そして、私自身この道が正解だったかどうかわからない。答えはないし、もう答えを考えなくていいんだ。それが私にとっての幸せです。』
「……。」
「…ぐずっ…。私たち…もっとAさんに何かしてあげられたかな…。」
「浜口さんたちがそうやってAのこと考えてくれたことで十分です。本当に…本当にありがとうございます。」
「きっとAさんに呼ばれてたんだな。心のどこかで…こうやって行動するように。」
「…Aさん、ここに来ましたよ。Aさん、また笑ってください…。」
窓から夕日がさして、Aの机上のノートを照らしている。夕日の色は恥ずかしがっているような赤色であった。
上司、篠崎、浜口でAの家へ
ガチャ
「あれ?大家さんから鍵借りたのに、開いてる…」
扉を開くと…
「お姉さん…?」
「あ…篠崎さん。と…Aの会社の方々ですか?わざわざ来てくださったんですね。ありがとうございます。」
「初めまして。Aさんの上司でした、棚橋と申します。」
「私Aさんと同じチームで、後輩の浜口です。」
「棚橋さん、浜口さん。初めまして。Aの姉です。」
「お姉さんは…よくここに来られるんですか?」
「たまに…。これが気になって…。」
「これは…?」
机の上に一冊のノートがあり、表紙には
『思惑と憶測と答えのない人生』
と書かれていた。
「ここに書かれている内容が…」
「これってもしかして…」
「…私たちのこと…?」
「そんな気がするんです。この3ページ目…葬式の日、篠崎さんに声をかけていただいたあのときの内容そのものなんです。」
「…そんなことって…あるのか…?」
「そして今、私たちがここで出会ったのも…」
「じゃあ、この途中のページに書かれている女性の気持ちが…Aさんの…」
「そうなんだと思います…。」
そのノートにはAの死後、篠崎たちが取った行動そのものを行う会社の仲間の話と、女性の心情の変化と死についての話が書かれていた。
「実は…Aさんの遺体を見つけたあの日、このノートを見たんだ。」
「そうだったんですか…」
「Aさんきっと浜口や篠崎が死について調べてくれること、望んでたんだと思うんだ。Aさんは死を選択したけど、それはみんなが嫌いで、とか会社が辛くて、とかではなくて…ってこと知って欲しかったんだと思う。」
「どうしてそういう理由でないってことがわかるんですか?」
「この最後のページに…」
『幸せになるために私はこの道を選びます。みんなの思う幸せの形とは違うかもしれない。そして、私自身この道が正解だったかどうかわからない。答えはないし、もう答えを考えなくていいんだ。それが私にとっての幸せです。』
「……。」
「…ぐずっ…。私たち…もっとAさんに何かしてあげられたかな…。」
「浜口さんたちがそうやってAのこと考えてくれたことで十分です。本当に…本当にありがとうございます。」
「きっとAさんに呼ばれてたんだな。心のどこかで…こうやって行動するように。」
「…Aさん、ここに来ましたよ。Aさん、また笑ってください…。」
窓から夕日がさして、Aの机上のノートを照らしている。夕日の色は恥ずかしがっているような赤色であった。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ヴァニッシュ~錯綜の迷宮~
麻井祐人
ミステリー
ある架空の国家の出来事。
アダムタイラーがあるビルの部屋の中から出られないで困っていた。
部屋には鍵が掛かっていて出られない。
窓の外には車や多くの人が行き交っていたが、
アダムタイラーには気付かない。
窓を割ることもできない。アダムタイラーに何が起こっているのか。
一方、小型爆弾Vanish「ヴァニッシュ」を使って、
大統領暗殺をもくろむテロ集団「Blast」ブラスト
FBI捜査官ジェイク・ハリスはテロリスト集団に味方を装って
潜入捜査しVanish「ヴァニッシュ」のある場所を特定していたが・・・・。
二つの話は交差し意外な展開を引き起こす。
おもな登場人物
アダムタイラー 小売店の店員
仮面の男 なぞの男
ジェイク・ハリス FBI捜査官
トム・ミラー FBI捜査官
ケビン・スミス FBI捜査官 参謀役
ゾラクス・ダークウッド テロリスト集団「Blast」ブラストのリーダー
ルカ・モレッティ マフィアのボス
ジョンソン大統領 ノヴァリア合衆国の大統領
隠蔽(T大法医学教室シリーズ・ミステリー)
桜坂詠恋
ミステリー
若き法医学者、月見里流星の元に、一人の弁護士がやって来た。
自殺とされた少年の死の真実を、再解剖にて調べて欲しいと言う。
しかし、解剖には鑑定処分許可状が必要であるが、警察には再捜査しないと言い渡されていた。
葬儀は翌日──。
遺体が火葬されてしまっては、真実は闇の中だ。
たまたま同席していた月見里の親友、警視庁・特殊事件対策室の刑事、高瀬と共に、3人は事件を調べていく中で、いくつもの事実が判明する。
果たして3人は鑑定処分許可状を手に入れ、少年の死の真実を暴くことが出来るのか。
秘密と自殺と片想い
松藤 四十弐
ミステリー
友達が死んだのは、2004年9月の下旬。首を吊り、自らを殺した。十七歳だった。
あいつは誰にも何も言わず、なぜ自殺をしたのか。俺はそれを知ることにした。
※若きウェルテルの悩み、初恋(ツルネーゲフ)、友情(武者小路実篤)のネタバレを含みます。
パストメール
れくさん
ミステリー
主人公の湯浅あさひは昔のあることに後悔をする日々を送っていた。人を疑わなかったことで起こり続けた不可解な現象、あさひの人生はそれにめちゃくちゃにされていた。ある日人生に絶望していたあさひは自殺を試みるが….
意識転移鏡像 ~ 歪む時間、崩壊する自我 ~
葉羽
ミステリー
「時間」を操り、人間の「意識」を弄ぶ、前代未聞の猟奇事件が発生。古びた洋館を改造した私設研究所で、昏睡状態の患者たちが次々と不審死を遂げる。死因は病死や事故死とされたが、その裏には恐るべき実験が隠されていた。被害者たちは、鏡像体と呼ばれる自身の複製へと意識を転移させられ、時間逆行による老化と若返りを繰り返していたのだ。歪む時間軸、変質する記憶、そして崩壊していく自我。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、この難解な謎に挑む。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、想像を絶する恐怖と真実への迷宮だった。果たして葉羽は、禁断の実験の真相を暴き、被害者たちの魂を救うことができるのか?そして、事件の背後に潜む驚愕のどんでん返しとは?究極の本格推理ミステリーが今、幕を開ける。
蠱惑Ⅱ
壺の蓋政五郎
ミステリー
人は歩いていると邪悪な壁に入ってしまう時がある。その壁は透明なカーテンで仕切られている。勢いのある時は壁を弾き迷うことはない。しかし弱っている時、また嘘を吐いた時、憎しみを表に出した時、その壁に迷い込む。蠱惑の続編で不思議な短編集です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる