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第4章

思惑の根拠

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「…でね、実は今度結婚することになったんだ。Aにも是非来て欲しいんだけど、招待したら来てくれる?」

「ええ!ついに!おめでとう!もちろん、結婚式ぜひ参加させて欲しい!」

「よかったぁ。それでね、家も買う予定で、ぜひ遊びにきてね。」

「もぉー順風満帆じゃん。うらやましい!遊びに行かせて!」

「結婚しても、子供できても、ずっと友達でいようね。」

「当たり前じゃん。ずっと友達だよ。」


周りの友達はどんどん幸せを掴んでいく。世間一般で言う普通の幸せを。私にとっての幸せとは何なのであろうか。
家族もいる、友達もいる、そこそこ給料のいいお仕事もある、仕事の仲間もいい人ばかり。この境遇が幸せなことは間違いない。


「今度ね、仕事で海外行くんだ。今やってる案件で英語出来る人私くらいしかいなくて。Aちゃんはどう?最近は忙しい?」

「最近はちょっと残業してましたけど、落ち着いてきてますよ。海外、すごいですね。」

「すごくはないよ。でも、私海外好きだから、仕事の休みの日とかは観光も行きたいなって思ってるんだ。だから、不安もあるけど、楽しみだよ。」

「かっこいいです!気をつけて、楽しんできてください!」

「ありがと!お土産買ってくるね!」


仕事にやりがいはあるけど、私が本当にやりたいことはこれなのかな。ただ、淡々とこなして毎日が過ぎていく。


ーLINEにて

「A、ごめんね。ご飯の予定の日、明日だったけど子供の具合が悪くて…。またの機会でもいいかな?」

「そうなの?大変だね。お子さん早く良くなるといいね。うん、また今度会おうね。」

「本当にごめんね。また連絡します!」


明日、やることないな。どうしようかな。


ー再びLINEにて

「A、お父さんと離婚することにしました。もうAも大人だし、自立してるし問題ないよね。でも、何があっても私がAのお母さんであることとお父さんがAのお父さんであることは変わらないし、ずっと味方なのは変わらないからね。」

「そっか…。今まで二人で育ててくれてありがとうございました。二人もやっと自由になれたんだし、自分の好きなことやって幸せに暮らしてね。」

「うん。そうする。年に何回かはご飯行こうね。」

「うん。ときどき連絡はしてね。」


二人が出て行くことになり、実家も取り壊されることになった。寂しいな。もう帰る場所はないんだ。


どうしてなんだろう。幸せな人生なはずなのに、すごく孤独に感じるのは…家族も友達も仕事の仲間もいるのに。
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